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十三歩目 恋路

「この剣、明日届けるか」


 そう言いながら剣を持ち上げる。すごい軽い。これほんとに剣?


「お、おい……お前、何もんだ?」

「は? 何言ってんだよボスゴリ」

 

 顔をしかめながら、こちらを凝視するボスゴリを見据え、問いかける。

 ボスゴリはずいずいと前へ進み、俺の肩を両手で強く掴む。


「これは、勇者にしか持てない聖剣なんだぞ!? どうしてお前が持てるんだ?」


 ボスゴリの一言に俺は数秒思考が停止する。


「ちょっと、やばくないか?」


 これがもし、本当に勇者しか持てない聖剣だとしたら、俺が持てる事はイレギュラー。恐らく瞬く間に話は広まり、騒ぎになるだろうな。どうすっかな。


「ねぇ翔吾、どうするの? 届ける? 騒ぎになると大変だろうし、置いていくのがいいかなって思うんだけど……」

「シズク、大丈夫じゃ! 心配するでない! いざとなれば逃げれば良いだけじゃ。だから届けに行く!」


 わはは、と豪快に笑うリルは、まるでイタズラをする少年のような無邪気な表情を見せる。その表情を見ながらボスゴリも、笑顔を浮かべ口を開く。


「まあ万が一、危険があっても心配すんな! 骨は拾ってやるよチビ」

「骨になる前に助けてくれよ……っておいこら! チビって俺の事かよ? どう見ても平均より高いだろ」

「まぁいいじゃねぇかぁ! ゴリラのボスからしたら、まだまだチビだな!」


 こいつ……俺をいじる為にボスゴリラを受け入れやがった。


「もうなんでもいいよ。とりあえず帰ろう。疲れた!」

「結構歩かないとだめだねー」


 疲れ切っている俺とシズクを、呆れるように眺め、ガンテツが口を開く。


「リル、小僧らを道場へ送り届けてくれるか? 全く……不甲斐ない弟子共だ。明日からは、みっちりしごいてやるからな!」

「任せるがよい! ガンテツは本当に甘い男じゃのう」

「お手柔らかに頼むわ……」


 リルは、弟子を気遣うガンテツをからかうように、笑いながら言う。その後に、手を前へ出す。

 時空を歪めていき、神域を広げていく。


「ほれ、これを潜れば道場にいけるぞ!」

「なぁリル、神域ってどういう仕組みなんだ?」


 ずっと気になっていた事を聞く。前は深くは聞かなかったけど、万能すぎて興味がある。


「神域は、ひとつの街として考えてくれればよい。認められたものしか入れぬがな。ちなみにガンテツは入れるものの、神域を自力で開けぬぞ。我が居らねば入れぬな」

「街だとしたら、ギルドに報告した時や今みたいに場所を移動するのはおかしくないか?」


 リルは首を傾げ、考えている素振りを見せるが、諦めたのか、こう言った。


「そこは説明が難しいんじゃが、神域を軸に色々と応用しておる。これは、ごく一部の者しか出来ぬ凄技じゃ!」


 詳しく知りたかった事は、知れなかったけど、リルの努力は認めて感謝しよう。


「リルは凄いって事だな。それはそうとボスゴリ、この後どうするんだ?」

「ハンツも、我が作った地下の居住スペースに住んだらどうだ?」

 リルの話を驚きつつ聞いていたボスゴリが、俺とリルを交互に見ながら言う。


「ありがたい誘いだが、 俺は既に拠点があるから遠慮させてもらうぜぇ。だから心配するなよ、お嬢さん?」


 そう言うボスゴリの視線の先には、頬を少し膨らまし、瞳をうるうるさせるシズクがいた。


「な、なんの事かなあ~」

「大丈夫、隠さなくていいぞシズク。男二人はむさ苦しいもんな。ボスゴリ、無駄にデカいし」

「おいチビ、はっ倒すぞ!」

「いや、そう言う事じゃ無くてね!? 嫌とかじゃないんだよ?」

 

 俺の言葉をシズクは急いで、訂正するように言葉を付け足す。どうして焦ってるんだ?


「おいチビ、鈍感すぎんのはモテねぇぞぉ」

「余計なお世話だボスゴリ」

「じゃあ俺はもう行くぜぇ。ギルドにいると思うから、クエスト行く時は声掛けてくれ」


 去って行くボスゴリを背に、俺とシズクは神域を潜り、道場へ行く。

 


「いやぁ今日は疲れたねぇ~」

「そうだな、明日の為にも! 今はまったりと疲れを癒そう!」


 そう言って、俺とシズクは居住スペースに置いてあるソファーに、腰掛ける。

 正直、俺はすごくドキドキしてる。あのボスゴリのセリフで察した。それにシズクの反応。俺はそこまで鈍感じゃないんだ。


「あのゴリラほんと覚えとけよ……」


 小さく呟いた俺に、隣に座っていたシズクが赤面しつつも、体を寄せ聞いてくる。


「どうかしたの?」

「い、いや! なんでもないよ? それより、お茶でも飲む?」

「う、うん! 飲む!」


 距離の近さに気付いたシズクは少し離れながら返事をする。


「淹れてくるね」

「ありがと~」


 顔赤くなってないかな。なんて思いながらソファーから立ち上がり、お茶を入れに行く。意識しすぎると調子が狂う! 落ち着け! 俺!

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