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Crossing Intention

Crossing Intention vol02 チュートリアル

作者: エメス

キャラクターの作成が完了すると再び画面が暗転し、渋いおじさんの声が聞こえてきた。


「おい、大丈夫か?しっかりしろ」


画面が明るくなり、周囲の景色を映し出す。

それは、肌は浅黒く少し頬がこけ、白髪混じりの髭を蓄えた初老のおじさんが、

僕の顔を覗き込んでいるようなシーンだった。


天井に煤けた布をドーム状に張った茶色い木の質感を持つ荷台に僕とおじさんは乗っている。

どうやら馬車のようだ。どこかへ移動しているのだろうか。


「ずいぶんうなされていたから驚いたぜ」


おじさんはそう言ってから、眉をひそめて僅かに笑顔を作った。

どうやら僕は馬車の中で寝ていたが、うなされ始めたのでこのおじさんが起こしたらしい。

おじさんは荷台に設置されていた簡素な長椅子に腰を掛け話を続ける。


「あんた、見たところ駆け出しの冒険者といった風貌だな。

 イリーア大陸は初めてかい?」


僕は黙って頷いた。


「駆け出しなら大した金も持っていないんだろう?もうすぐ宿場に到着する。

 どうだい、そこで1つ俺の仕事を請け負ってみないか」


おじさんがニヤリと笑ったところでシーンが終了し、再び画面が暗転した。


PCのメニューバーにお知らせアイコンがポップ表示される。

カナタからの新着メッセージだ。


カナタ:こういう話の流れでチュートリアルが始まるわけなー

イッチ:チュートリアル?


チュートリアルとは、基本的な操作やシステムの流れなどを説明する教材や教育方法のことで、

このゲームでは駆け出しの冒険者が馬車で出会った初老のおじさんから、

仕事を請け負うという形でチュートリアルが進行されるようだ。


再び画面が明るくなり、周囲の景色を映し出す。

舗装されていない土が剥き出しになった道沿いにずらりと建物が立ち並んでいた。

建物は木造であったり、あるいは石造りであったり様々だが、どれも古い築年数であることが伺える。

それはさながらヨーロッパの田舎町を彷彿とさせた。

おそらくここがおじさんの言っていた宿場なのだろう。


おじさんが路肩に立ち、僕は向かい合って立つという構図で開始された。

右クリック押しっぱなしにしながらマウスを動かすと視点が動く、

どうやらここから操作ができるみたいだ。

間を置かずして画面上にキーボードの画像と、キャラクターの操作説明文がアナウンス表示される。

Wキーが前進、Sキーが後退、Dキーが右へ移動、Aキーが左へ移動するようだ。


次におじさんの頭上に矢印のマーカーが表示され、クリックしてくださいとアナウンス表示があった。

おそらくおじさんをクリックすることで会話ができるだろう。


さっそくクリックをしてみると、吹き出しが出てきて会話内容の文が表示された。

どうやら全部の会話にボイスが付いているわけではないらしい。

そりゃそうか、全ての会話に声当てしていたら大変だもんね。


おじさんの仕事依頼は宿場の外れに裁縫屋へ行き、

シルクの生地を購入してきて欲しいという内容だった。

正直そんなこと自分でやればいいのにと思ったが、

人の良いおじさんが、お金のない駆け出しの冒険者に世話を焼ている…という設定なのだろう。

仕方ないので依頼を請け負うことにした。


直近で請け負った依頼はゲーム画面の右側に依頼名で表示され、

さらにこの依頼名をクリックすると、画面右上のミニマップにおおよその目的地が表示される。

なるほど、これは分かりやすいな。


裁縫屋へ赴き、おじさんに渡された銀貨でシルクの生地を購入すると、

交渉スキルというものに経験値が入ったというアナウンス表示があった。

Pキーを押してくださいというメッセージに従うと、

現在取得しているスキル一覧を確認できるウィンドウが表示される。


交渉スキルのフレーバーテキストによると、

どうやらこのスキルの効果はお店でアイテムを購入する際、

スキルレベルの応じて一定の金額を値引きすることが出来るのだとか。

さらにこのスキルはレベルアップをする毎に、

キャラクターステータスの1つであるINTが加算されるそうだ。


イッチ:ねぇカナタ。INTってなに?

カナタ:Intelligenceの略で、キャラクターの賢さ、知力、知識のことだよ


イメージから察するに、このステータスは魔法を使うとき影響がありそうだな。


依頼を終えおじさんの元へ戻り報告すると、報酬に銀貨を50枚貰えた。

どうやらこのゲームの通貨は金貨、銀貨の2種類が存在し、

金貨1枚の価値は銀貨1000枚に相当するのだそうだ。

ほとんどのお店では銀貨で売買をするが、中には金貨しか受け付けない高級店もあるのだとか。

総資産銀貨50枚の今の僕にはあまり関係のない話だが、一応覚えておこう。


おじさんの次なる依頼は、

宿場の外に出てこの周辺に生息するコヨーテの毛皮を持ってきて欲しいというものだった。


イッチ:いよいよ戦闘かぁ

カナタ:コヨーテか。武器の装備を忘れるなよ?

イッチ:え?


画面右下のキャラクターメニューからインベントリの項目を選択して持ち物を確認すると

ショートソードというアイテムがあった。


カナタ:俺、知らずにコヨーテと素手で戦って死にかけたからな

イッチ:www


普段割と偉そうなこと言ってるけど、カナタも結構マヌケだ。


ショートソードをクリックすると金属音のSEが鳴り、キャラクターの左腰に短めの剣が装着された。

つまりこいつ、イリーア大陸に来てからずっと丸腰だったのか…


念のためキャラクターメニューからステータス・装備の項目を選択して、現在の装備を確認する。

胴部分にクロスクローズという名前の服のアイコンが表示されていた。

良かった…当たり前だけどちゃんと服着てた。


宿場の外に出て目的地に到着すると、Zキーを押してくださいとアナウンス表示がされる。

これに従いZキーを押すとキャラキターがショートソードを抜き構えた。

どうやら構えた状態でないとキャラキターは攻撃することが出来ないらしい。

またこの状態では移動速度が遅くなるようだ。


続けて、キーボード画像、マウス画像と、操作説明文がアナウンス表示された。

構えた状態で、左クリックをすると武器で攻撃、右クリックをすると防御、

操作キーであるWSADをそれぞれ連続で2回押すとその方向へ素早くステップが出来る。

基本的にはこれらの操作を駆使して戦うのだろう。

このゲームはRPGと言いながら、割とアクション性が高いんだな。


さて、遠目に見える距離に1匹のコヨーテがいる。初の戦闘だ。

サクっとこのまま倒してしまおう。

僕は武器を構えたまま、ゆっくりコヨーテに近づく。

ある程度近付いた瞬間、コヨーテの部上にビックリマークが表示され突然襲い掛かってきた。



「!!」


咄嗟のことに反応しきれず、先ほど教わった防御もステップもしないまま、

コヨーテの体当たりの直撃を受けた。

僕はノックバックすると同時にHPゲージの半分が吹き飛ぶ。

なにこれ…これがチュートリアルの敵!?


コヨーテはさらに追撃をしようと僕へ向かって走り出した。

その追撃を今度こそ防御で凌ぐ。

半分に減ったHPゲージがさらに半分に減った。

この時点でHPが1/4、防御してもこのダメージとか…


追撃を防御されたコヨーテは一瞬怯んだように見えた。

いや硬直したというべきか。

その隙に僕はショートソードで反撃を試みる。

3連撃与えたところでコヨーテはノックバックし、

ソードマスタリーの経験値が入ったと知らせるアナウンス表示が3回流れた。

アナウンスうるえ!今はそれどころじゃねーよ…


コヨーテのHPゲージを確認すると半分ほど減っている。

おお、ショートソードつええ!


こちらも追撃をするためにステップでコヨーテに近づき斬撃を食らわそうとしたが、

コヨーテはステップで右に逸れ僕の攻撃を回避した。

そのため斬撃は空を切り僕は少しよろける。


やばい、やられる…

そう思った瞬間鈍いSEが響き、コヨーテがけいんと1つ鳴いて吹っ飛んだ。


何が起きたか分からなかったが、ひとまずやられずに済んだことは理解した。

慌ててコヨーテの方へ向き直すがコヨーテは倒れたまま動かない。

HPゲージが真っ黒になっている。どうやらこの戦闘に勝利したようだった。



ようやく落ち着きを取り戻すと、徐々に何が起きたのかを把握していく。

僕のすぐ傍に大柄の女性が鈍器のようなものを構えて立っていた。

どうやらこの人に助けて貰ったのだろう。


先ほどのキャラクター作成のときに見たジャイアントの女性だ。

2メートルはある僕の身長のさらに上を行く体躯だった。

分かってはいたけどこうやって隣り合ってみると本当に大きい。


とりあえず画面左下のチャットログの入力欄を開きお礼を述べる。


イッチ:あの、ありがとうございます。


ジャイアントの女性は爆笑するようなエモートを使ってからこう言った。


カナタ:お前戦闘下手過ぎwww

イッチ:え?カナタ!?


ドワーフかワービーストでキャラクターを作成しているものだと思っていたが、

まさかのジャイアントだった。


カナタの斜め上の展開に、僕は驚きつつ妙に納得していた。

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