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人探し~日光編~  作者: 夏目 碧央
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駅での聞き込み

 佐藤律子と佐伯良平は、東武日光駅の前で車を降り、駅構内へ入った。駅員や売店の店員、観光案内所の職員に警察手帳と写真を見せる。

「すみません、警察の者ですが、この少年を見かけませんでしたか?」

二人はそれぞれ二手に分かれ、あちこち聞きまわった。

「佐藤さん、だめですね。これだけ観光客が多くちゃ、顔を覚えている人はいませんよ。」

良平が律子のところへ来て言った。

「そうね。夏休みだし、人出はかなり多いわね。」

二人は、今度は駅の外へ出た。東武日光駅の周りにはかなりの店がある。ここでもまた写真を見せながら聞き込みをした。

「ああ、この子なら見たわよ。すっごい可愛い顔してたものぉ、よく覚えてるわ。しかも背中に矢印の書いてある黒くてダブダブのTシャツを着ていてねえ。そういうのここいらの子は着てないからねえ。目につくわよ。」

ある店のおかみさんがそう答えてくれた。

「あの、いつ頃見ましたか?」

「昨日の、そうねえ。午後4時くらいだったかしらねえ。こちらも忙しい時間が終わる頃だったから。そうそう、雨が降りそうだと思って外を見た時だから、多分4時頃よ。」

「彼は一人でしたか?」

律子が問うと、

「ええ。一人であっちの方をやたらと見ていて。きっと人を待っていたのね。」

おかみさんが答えてくれた。

「その後、その少年はどうしたか、分かりますか?」

「店を閉める時にはいなかったわよ。6時半くらいには。」

「そうですか。大変参考になりました。ありがとうございました。」

律子が頭を下げ、良平も合わせて深くお辞儀をした。


律子と良平は、警視庁の捜索専門の部署に属している警察官である。律子は45歳。良平は25歳。東京で捜索願の出された人物を探しに全国へ出かける。今回は「伊藤夕陽」という17歳の高校生の行方を追っている。母親から、昨日いつの間にか家を出た息子が帰ってこないという通報を受けた。自宅近くの防犯カメラから、駅へ向かった事は分かった。そして、最寄り駅から捜索を開始し、東武鉄道で日光へ向かったらしいという事が分かったのだった。日光駅からの足が必要だと、東京から車に乗ってここまでやってきた。運転したのは良平である。


 「服装からして、あのおかみさんが見た少年が伊藤夕陽である事はおそらく間違いないわね。」

律子と良平は車に乗り込んだ。

「ここに昨日の夕方着いて、人を待っていた。誰を待っていたんでしょうか。あっちを見ていたという事は、電車で来る相手ではないという事ですよね。歩きか、それとも車か。」

良平が手帳のメモを見ながら言った。

「ここら辺に知り合いがいるという情報は入ってないし、徒歩で来る人物を待っていたというのは考えにくいわ。だとすれば車。車で誰と、どこへ向かったのか。」

二人はしばし考えを巡らせた。普通に考えて、同年代の友達は車を運転しては来ないはずである。

「車に乗ってきた人物が宿を取ったとすれば、なかなか見つけられないですね。交友関係を洗った方が早いのではないですか?」

良平が言った。

「確かにそうだけど、ここまで来てそうも言っていられないでしょ。とにかく、観光名所を当たってみましょう。」

そして、良平が運転をし、まっすぐ行ったところにある日光東照宮へ向かった。もし観光に来たのなら、寄っていると考えるのが妥当だ。


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