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とある今際の異世界で。  作者: 卯月汐
3/4

3話 初回限定スキルガチャ!


 俺の両親は北海道に住んでいる。兄弟はいない。

 今年の春に大学進学のため上京したのだ。

 昔から一人暮らしに憧れて、大学も東京にあるものを選んだ。でも始めてから如何に親の存在が偉大だったのかが分かった。今からでも実家に帰りたい。

 もうしばらく会ってないな。お盆には帰るつもりだったけど、それよりも前にこんなことになっちゃったし。

 だから、死んでもらっては困る。

 いや、死んじゃダメ! 母さんも父さんも大好き!

 頼むから出てくれ!

 

 プルルルルルルルルルルルル――


 よかった! 繋がった!


「もしも――」

『ソータ! ソータなの!?』

 

 おお、すごい勢いだ。

 それもそうだよな、心配しないわけがない。


「かあさ――」

『無事なの? 今どこにいるの? ケガしてない?』

「あ、うん。俺は大丈夫。まだ東京にいるよ」


 母さんはとりあえず元気そうだな。


『はぁ、よかったぁ。あなた、ソータ無事だって!』


 電話の奥から父さんの声が聞こえてくる。

 よかった。父さんも無事みたいだ。


「母さんたちは無事? 隕石とかその……モンスターとか」


 なんだかモンスターって真面目に言いづらいな。

 本当にいるとは言っても、俺まだ見たことないし。


「今は大丈夫よ。私たち今体育館に避難してるの。だからしんぱ――」


 え、切れた?


「ちょ、母さん? どうしたの母さん! もしもし? 母さん!」


 まさか向こうで何かあったのか!? 

 大変だ。早く母さんたちのところへ行かないと! って言ってもどうせ電車も飛行機も動いてないだろうし、どうする……


「……なんだよ、それ」


 本気で頭を抱えつつスマホの画面を見ると、そこには『時間切れ』と文字が映し出されていた。

 あー、焦ったー。本気で焦った。

 なんだよ時間切れって、最初に言ってくれよ。

 つまり向こうで何かあったってわけじゃないんだよな。

 なら、母さんたちは安全に避難したってことでいいんだよな?


「はぁ……なら、俺のほうが危険な状況だよなぁ」


 こんなことになったというのに、俺は未だにベッドに腰を下ろしてスマホに向き合ってる。

 まあ、外を見た感じモンスターはいないし、幸い俺の部屋は無事だ。

 マンションで言えば半分なくなってるけど。

 何も知らないで外に出るよりはマシだろって考えなわけで。


「さっさとやることやんねーとだな」


 俺は落ち着いて次の『まずは何をすればいいの?』を開く。


『まずは何をすればいいの? まずはモンスターを倒してレベルを上げよう!』


 ん? それだけか。

 そんなこと言われなくてもそうするだろうに。

 ああでも、俺は異世界脳だからそういう考えに至るけど、普通の人からしたら戦おうなんて思うわけないか。

 俺だって実際にモンスターを目の前にしたら戦えるかどうかわからない。

 

 と、どうやら確認するだけの項目は全て目を通したみたいだ。

 残るのは『初回限定スキルガチャ』と『運命の職業ガチャ』と『リタイアチケット』の三つだ。

 職業ガチャは最後にしたいよな。俺は楽しみは後に取っておく派だ。

 なら、まずはこれからだ。

 リタイアと言っても開いただけで発動することはあるまい。

 『リタイアチケット』の項目に触れる。


『このチケットは一度だけ利用可能です。本当にリタイアしますか?』


 なにそれ。リタイアしたらどうなんのよ。

 そこ重要よ?

 むしろそれがわからないと、リタイアしたくても怖くてできないよ。

 まさか、何事もなくリタイアなんてできないだろうし、最悪死ぬだろ。

 いや、死ぬな。絶対。

 ここは慎重に答えよう。


「NO! いいえ!」


『キャンセルしました』


 このチケットはもう使うことないだろうな。

 

 さあ、ようやく来ましたよ。お楽しみの『初回限定スキルガチャ』と『運命の職業ガチャ』。

 あ~楽しみだな。

 どんなスキルがいいかな。どんな職業がいいかな。

 『創造』もなかなかいいスキルだけど、やっぱりばちこり戦闘向けのスキルがいいよな!

 職業はやっぱり勇者? 勇者やっちゃいます? あーでもなー盗賊とかもかっこよくていいよな~

 おら、わくわくすっぞ!


 よし、まずは『初回限定スキルガチャ』からだ。


 震える指でその項目に触れる。


『初回限定スキルガチャ! 旅立つ前に強力なスキルを手に入れよう!』


「おう!」


『この初回限定スキルガチャは一度だけ回すことができます。ガチャを回しますか?』


「回す回す! 頼む! なんでもいいから強力なのこい!」


 目を閉じて、両手で祈りを捧げる。

 お願いします! 小説家の変な神様っ! どうか、どうか俺に強力なアタリスキルを! どうかっ。

 出た? いいの出た?

 ゆっくりと目を開いて、画面を見て――泣いた。

 そこに書かれていたスキルは……


『アタリ! 盗聴阻害Lv3!』


 おぉーん。

 なんということでしょう。

 いやまあ、きっと使えるときは使えるだろうさ。むしろ活躍する場面もあるかもしれない。

 でもなぁ……そうじゃないんだよなぁ。

 なんでだろ。変な神様なんて思っちゃったからかな。








《スキルディテイル》


【盗聴阻害】希少性・2 汎用性・0


 会話中、一定距離の盗聴を防ぐ。


 レベルボーナス Lv3

 会話人数・2人 盗聴防止距離・8メートル 

 

 ラックボーナス

 なし。

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