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とある今際の異世界で。  作者: 卯月汐
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2話 アプリゲームかよ


 ズドーン! ドカーン! バギャギャ! ゴオオオオオオオ! 


「いや、漫画の世界じゃないよね!? ここさ!」


 横になったのも束の間、鳴りやまぬ騒音が煩くて飛び起きた。

 いやいや現実だよなこれ。

 ちょっと待った。わかった。いったん状況を整理しよう。


 えーと、まずなんだ、あれか。

 パソコンに市松人形が映って男の声が聞こえてきた。

 んでもって『スタートダッシュガチャ』ってのを引かされて『創造』を引いた。あれ、そういやさっきのノーパソ……


「まだあるか」


 先程ふざけ半分で『創造』した、もう一つのノートパソコン。

 試しにもう一度やてみっか。

 おそらく、やり方は右手で対象に触れて左手で創造。漫画で出てきたやつと同じはず。

 んーと、じゃあこのゲーム機のコントローラーを右手で触れて――


「創造!」


 おお。できた。

 何この、異能発動しちゃった感。めっちゃ興奮する。

 もしかして異能バトルな世界に変わっちゃいました?

 もし仮にそんな世界だったとして、『創造』て……便利だけど強くはないよな。


 まあでも、取り合えず『創造』は発動すると。

 でもってお次はテレビのカウントダウン。ノートパソコンに映ったものと同様の市松人形が映り、それから男が言ったんだ。

 確か小説家って言ってたよな。あとは、全世界の――とか。てことはこの状況、世界規模なの!?

 そういうことだよな? 

 おいおい勘弁してくれよ。あの声の主絶対日本人だろ? やめてくれよ~。世界中から責められるじゃんか~。って、突っ込むとこそこかよっつって。

 駄目だ。なんかあまりの異常さに俺までおかしくなってるみたい。


 まあいいや。

 でだ、やっぱり脳裏に深く焼き付いてる言葉があれだ。


「ようこそ、私の異世界へ。かぁ」


 『異世界』ああ、なんていい響きなんだろう。

 中学の頃に初めて異世界系アニメに触れて、ネット小説で異世界ものを読み漁るようになって、自分でも書いてしまうほどの異世界愛。

 あー、興奮するなぁ。異世界かぁ……

 やっぱりいるのかなぁ。エルフとか精霊とか亜人とか! ゴブリンとかドラゴンもいたら最高だよなぁ。

 おっといけない。

 そんなこと言っている場合じゃなかった。


 それでえーっと、どこまで辿ったっけ? あ、そうだそうだ。

 最後に男が言ったんだった。「『メテオ』ぶっぱなしまーす」って。

 それが主な要因でこんな異常事態になってるわけだけど。


「これからどーっすっかな」


 今って自衛隊とか消防って動いてんのかな。

 サイレンとかそれっぽいのが聞こえてるし、外じゃ救助活動とか行われてるみたいだ。

 ならテレビは――つかねぇ。

 ノーパソ――あ、死んでる。

 詰んだ。俺もう生きてけない。あ、待てスマホ! どこいった!?


 倒れた本棚や机をどかしてスマートフォンを探す。


 お、あった。


「よかったこっちは生きて――ないわ」


 スマートフォンの電源は一応ついた。しかし、そこに映し出されていたのは、何故かイラスト化された市松人形だった。

 そして市松人形は口をパクパクさせながら言った。


『こちらのデバイスを、カミヅキソウタ様のギルドデバイスに登録してよろしいですか?』


 うお、喋った!

 なにその機能。てかギルドってなんぞ?

 わけもわからないまま画面をタップする。が、反応がない。そもそも『はい』と『いいえ』の選択すら出てこない。

 よくわからんが、声に出せってこと?


「はい」


『こちらのデバイスを破損した場合、カミヅキソウタ様のレベルはリセットされます。それでもよろしいですか?』


 お、進んだ。

 成程。レベルの概念が存在するのか。スマホ壊しただけでレベルリセットとかリスキーすぎるだろ。

 まあいいや。よくわからんし。


「はい」


『ギルドデバイスの登録を完了いたしました。それでは異世界ライフをお楽しみください』


 そう言って、市松人形が消えた。

 それから、画面はファンタジーっぽい背景のメニュー画面に切り替わった。

 左上に『カミヅキソウタ』と俺の名前が表示され、その隣にLv1と記されている。

 それからその下には『ステータス』『取得スキル』『QRコード』の3つのボタンが表示されていた。

 よく見ると右下に赤く光るボタンがある。なんだろ、アプリゲームとかであるプレゼントボックスみたいなやつ。

 試しにそのボタンを押してみる。


『初回限定スキルガチャ』『運命の職業ガチャ』『一回限定テレフォン』『リタイアチケット』『異世界の心得壱』『異世界の心得弐』『この世界の神様から一言』『まずは何をすればいいの?』


 うわ……なんかいっぱい出てきた。

 どうしよう、てか職業ってあれだろ? 冒険者とか魔法使いとか盗賊とか、そういうやつだろ? 

 それもガチャで決まるのかよ! なんでちょいちょいこの世界アプリゲームみたいなの?

 とりあえず一つずつ見てみるか。

 まずは確認するだけっぽいのから。

 俺は『異世界の心得壱』を開いてみた。


『異世界の心得壱。この世界にヒットポイントは存在しない。身体能力はステータスに付随する。スキルは各々の職業に応じた職業スキルとガチャスキル。また、限られた人に限り固有スキル、精霊スキルが存在する。経験値獲得にはモンスターの討伐報酬と対人報酬との二パターンある。ただし、対人報酬は討伐した相手の総獲得経験値である』


 うん。

 なんだかワクワクしてきたな。固有スキルとか精霊スキルとか、限られた人だけってのが痺れるよな。

 大体俺TUEEEEE系の主人公はこういうの持ってるし。

 まあ、なんとなくは理解した。

 ヒットポイントが無いのはむしろ現実味があって最高だ。ただ、経験値の仕組みに限っては明らかに対人戦闘を推してるよな。序盤は少ないと思うけど、終盤で高レベルになってくると対人狩りと出てきそうだ。

 よし次いこ。

 俺は続けて『冒険者の心得弐』を開いた。


『冒険者の心得弐。この世界に法律はありません。ですが、新たに法律を作ることは可能です。モンスターはある一定の街に侵入することができません。しかし、連れてくることは可能です。この世界のあらゆる自然物にはそれぞれの効果が存在します。また、調合、料理、錬金などにより、効果が変わる可能性があります。この世界にお金の概念はありません。ただし、新しく設定することは可能です』


 こっちは社会機能について多く書かれているようだ。

 つまり、モンスターがいてスキルを使う超人が存在する世界に今の法律は通用しないけど、新しく作る分には構わないってことだろ。お金も同様だ。

 効果に関しては、おそらく普通の人参に回復の効果がついたとか、きっとそんなんだろ。

 あとはまあ、ある一定の街ってとこと連れてくることができるってのがよくわからないくらいか。


 次はそうだな、『この世界の神様から一言』これにしてみよう。

 それを開くと、今度は文字ではなく音声が流れた。あの男の声だ。


『やあ! 俺がこの世界の神様だ。と言ってもただの小説家なんだけどな』


「ただの小説家、ねぇ」


『それでどうだ、楽しんでるか? 俺の異世界、最高だろう? なに、楽しくない? 友達が死んだ? 家族を失った? ノンノンノン。それくらいでへこたれてちゃ、この世界じゃやっていけないな」


 あ、そういや興奮しすぎて家族のこと忘れてた。クズ過ぎるだろ俺。

 友達は碌にいないからいいけど。


『いいか、よく聞け。この世界は変わったんだ。これからは簡単に人が死ぬぞ? いいか、死にたくなかったら強くなれ。この世界ならそれができる。目に見えた強さを示すことができるのさ』


 目に見えた強さ、か。

 確かにこれまでの世界にはどうしたって弱い奴はいたし、弱い奴が悪い世の中だった。そのせいで俺も昔は虐められてたっけ。


『死にたくなきゃ強くなれ。ま、そういうことだな。精々楽しんでくれよ』


 一言にしては長すぎる『この世界の神様から一言』が終わった。

 この男がこの事態の元凶で、この世界の神様。

 どうしたらこんなことが実現できたのかは知らないが、今はこいつを詮索しても意味がない。

 俺が何かをしようとしたって何もできないだろ。次いこ次。

 っとその前に母さんに連絡しねえと。馬鹿だな俺。

 

「……できないんだった」

 

 このスマホ、メニュー画面から一切移動することができなくなっている。

 なら固定電話は――無理だろうな。

 ならこの『一回限定テレフォン』ってのを見てみるか。

 ボタンを押してみる。


『本来、この世界に通話という機能は存在いたしません。ですが、このチケットを使うことで一度だけ通話が可能になります。本当に、ご利用いたしますか?』


「はい」


『かしこまりました。どなたにお繋ぎ致しましょう?』


 名前を言えばいいのだろうか。


「えーと、カミヅキハルナで」


『かしこまりました。カミヅキハルナにお繋ぎ致します』


 電話音が鳴る。

 まさかもう死んでしまった、なんてことないよな。

 頼むから繋がってくれよ……!


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