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とある今際の異世界で。  作者: 卯月汐
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1話 とある小説家がこの世界を異世界にしたって話


 東京で一人暮らしをしている、とある大学生の夏休み。

 教習所もバイトも課題もない暇すぎる1日。

 俺は徐にノートパソコンを開いき、とあるネット小説の投稿サイトを開いた。


「あー、落ち込むわぁ。またブクマ減ってんよ」


 趣味で投稿している自分の小説のブックマークが減っていることに気づいて落ち込む。めちゃくちゃ落ち込む。

 まあ、本気で書いてるわけじゃないし? ただの趣味だし?

 とか何とか言ってるけど実は本気だったりして。虚しくなる。

 こんな時は数少ない読者様の感想を読むに限るな。


「えーと、15話の3行目誤字ってますよーってマジかよ」


 はぁ……ため息しか出ない。

 時々こうして小説を書いてると、自分が馬鹿みたいに思えてくることがある。

 才能のない自分が才能のある人間と肩を並べようとして、圧倒的な差に委縮して。

 こんな自分が情けない。


「やめだやめだ。ドラ〇エしよ」


 俺はノートパソコンを閉じてベッドに投げ捨てると、ゲーム機に電源を入れてソファに腰を下ろした。

 大体、異世界に行ったこともないのに異世界ものの小説が書けるかっての。

 異世界はアニメとゲームで十分だ。

 

 ……ごめん、嘘ついた。

 本当は異世界ものの小説とか大好物だし、剣と魔法の世界とかむっちゃ憧れる。

 子供の頃から剣とか魔法が大好きで、よくファイアボール出す練習してたっけ。


 でも、もう諦めた。

 いくらファイアボール出す練習したって出るわけがないし、勇者も魔王も亜人も妖精もこの世には存在しないんだ。

 だから、せめて物語の中だけでもと異世界ものの小説を書き始めたけど、碌に読者は増えやしない。

 

「あー才能がほぢーよー」


 ゲームもメニュー画面を開いただけでやる気をなくしてしまう。

 なんだか、何もやる気が起きないな。

 

「寝るか」


 そう呟いてベッドにあるノートパソコンをどかそうと持ち上げた時だ。


 パン! というパソコンからは出るはずのない破裂音が鳴り、俺の手から跳ねるようにして落ちた。

 

「……。……てか俺のパソコン! 大丈夫か? 生きてるよな?」


 スマホとPCは命の次に大事なものなんだ。

 壊れてもらってはひとたまりもないぞ。


 恐る恐るノートパソコンの液晶を確認して――


「ひいんっ!」


 思いがけない映像に変な声を出してしまった。

 それも無理はない。何故ならその画面いっぱいに巨大な市松人形が映し出されていたのだから。


 あーびっくりした。なんだよ、どこか変なサイトでも開いたか?


 そう思い、ブラウザを落とそうとするが、一切反応しない。


 まじかよ……もしかしていっちまったのか。

 最悪だ。終わった……このPC自費で60万はたいたんだぞおい。ふざけ――


『やあ。異世界をこよなく愛する同志諸君。君たちには特別に、スタートダッシュガチャをプレゼントだ!』


 不意に、ノートパソコンから陽気な男の声がそう言った。


「――何をいってますのん?」


 なんだ、スタートダッシュガチャって……なんかのアプリゲームか何かか?

 

 画面をよく見ると、さっきまで移っていた市松人形の画像が消え、『ガチャを回す』と書かれたボタンだけが映し出された。

 何……これをクリックしろってこと?


 試しにボタンを押してみると突然画面が眩く光だし、視界が晴れた時には画面の文字が変わっていた。

 えーと……


「超絶大当たり。スキル『創造 Lv99』?」


 え、なんかすごそうなの当たったけど、これなんのゲームなんだ?

 

 突然、画面が元のデスクトップに戻った。

 デスクトップを見てみるが、どこを探してもさきほどの画面は見つからなかった。

 なんなんだまったく。


 でも、創造って夢があるよな。

 なんかこう、前に読んだ漫画だと右手で触れたものを左手で創造するやつとか。


 例えばこう、右手でノートパソコンに触れて左手に――


「創造! なんつって」


 ガタンッ。


「…………あれぇ? なんだこれぇ」


 ちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょちょ!?


 ええっ!? そう、ええ!? 創造できちゃったんですけど!?


 どういうわけか、右手でかざしたノートパソコンの横に、もう一つのノートパソコンが発現したのだ。


「夢だな。寝るか」


 静かにベッドに入る。


「いや、夢なのに寝てどうする!」


 いや、これは間違いなく現実だ。もしかして異世界が恋しすぎて幻覚でも見え始めてる? え、それやばくね?


 ぶぅぅん。


 今度はなんだ? 


 奇妙な機械音に辺りを見回すと、今度はテレビが勝手につき、またあの市松人形が現れた。

 いや、もう驚かないけど、何故に日本人形?


 すると再び声が流れ出す。


『やあ! 私はしがない小説家だ。突然だが全世界の諸君、準備はできているかな? うんうん、いい返事だ! それではカウントダウンを始めよう』


 準備? 準備って何の準備だ? いやもうさっきからわけわからな過ぎて困ってるんですけど。


『さーん!』


 テレビ画面に数字が映し出され、カウントダウンが始まる。


『にーい!』


 これはあれか、ちょっとした新ゲームの余興みたいなもんか?


『いーち!』


 そんなことできるなんて権力持ってんだなぁ。


『ようこそ! 私の異世界へ!』


 そういうコンセプトのゲームなのかな? 異世界大好きっ子の俺にすげー向いてそう!

 

「うおっ」


 突如、謎の声に呼応するように地響きがなりだし、本棚やら机が倒れて部屋がぐちゃぐちゃになる。

 それから謎の声は最後にこう言葉を残した。


『ああ、それと……この世界はちょっと奇麗すぎるんで、最初に『メテオ』ぶっぱなしまーす。気を付けてくださーい』


 ブツン。と音を立ててテレビが消えた。その直後だった。

 

 耳を劈くような轟音と共に眩い光が部屋を照らし、視界を覆った。

 視界が晴れ、急いで窓を開けて外を見て、驚愕する。


「おいおいおい、嘘だろ?」


 そこには、崩壊した街の姿があった。

 割れる地面に折れ曲がる電柱、突如現れたクレーター。燃え盛る家々に何処からか聞こえてくる悲鳴。

 すぐ横を見てみると、うちのマンションも俺の部屋の右隣がきれ―いに跡形もなくなっていた。

 不意に空を見上げると、大量の隕石のようなものが辺りに落ちていくのがわかる。 


 これはあれだな……夢だな。


「寝よ寝よ」


 こんなね、どこかで見たことあるような超災害なんてね、普通起こらないの。

 だから、目が覚めたらいつも街に戻っているはず……だよな?





《スキルディテイル》


【創造】希少性・5 汎用性・5 


 目で認識した対象を創造する。


 レベルボーナス Lv99

 創造数・制限なし 創造可能物・制限なし 形状維持・24時間 機能性・99%


 ラックボーナス

 一度創造したもののみ、頭で考えるだけで創造が可能になる。

 

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