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最後にタケルがイカダに飛び乗る。
本物の鳥の翼のような芸術的な動きをする、ガジュマルの樹の皮で作られた飛行装置が作動する。
徐々にイカダが浮かび上がり、約15メートルほどの高さに達すると、急発進する。
無駄な時間を省きたいナツヨが、あらかじめプログラムしていたのだ。
すると、海面からマッコウクジラの群れがダイブして来て、イカダが粉砕される。
俺とソラエは自力で砂浜まで泳いで戻る。
タケルはまだ眠っているナツヨを器用に抱えて、立てるところまで泳ぐと、砂浜にナツヨを投げる。
さすがにナツヨも目を覚ます。
海面に浮かぶイカダの残骸を見て、また地球坊やに脱出の邪魔をされたことを、寝起き2秒で理解すると、
「8年ちょうだい。魚みたいに海中を泳いで、まずは本島まで行ける装置を作るから」
とナツヨが言う。さっそく、木の枝を拾い、砂浜に何やら計算式を書き始める。
こうなったら、誰もナツヨを止められない。
8年ということは、17歳になるまでこの久米島から出られないことになる。
地球坊やは、なかなか俺たちを久米島から出してはくれない。
面白がって、続きを見たいと思うときだけ、邪魔をしない。
つまり、地球坊やが面白いと思う方法でないと、地球坊やを止めるために、5人目の仲間が待つ沖縄本島に行けないのだ。
はあ、また小学校に通うのか。
うんざりする。
もう何度も同じ勉強をしている。
さすがの俺だって簡単に100点をとれる。
一方で、ソラエみたいに15点くらいしかとらない生徒もやはりいる。
勉強する気がない奴は、何度人生をやり直しても、勉強しないのだ。
そのかわり、自分が得意なことは、どんどん成長が早くなっている。
いつもこの1988年にタイムループするということは2つの可能性が考えられる。
1つは1988年に、とりかえしがつかないくらい地球坊やを怒れせることを人間たちがした。
もう1つは、1988年からやり直したら、地球坊やがしてほしいことに間に合うという可能性だ。
実際、タイムループする度に、世界が進歩するスピードは上がり続けているのだ。