まだ見えない未来。
とりあえずの思いつきでバーっと書きました。
喧嘩、それは口論やいきすぎた暴力の下で行われるのが普通だろう。
でも皮肉れた性格の俺は考えるのだ。もし彼らに銃を与えればソレを持ってしても喧嘩を続けるだろうか?
あるいは、和解を望み手を緩め話し合うだろうか?
ゆっくりと目を開ける。
見慣れない赤い色、頬にしたる深紅の滴。
「....血?」
ひとまず整理する、俺は何をしていた?
いやおかしい、何も思い出せない。
そう自分の名前さえもだ。
「....ぅ...来ないで....」
そもそもいったいなんなんだ?俺にうつ伏せで上に被さっているこの少女は!
ゆっくりと体を動かして少女をずらす。
「くっ...」
さっきからの謎の不快感に気づいた俺は顔を歪ませた。
どうやらこの血は自分自身のもののようで、頭と太ももの辺りから痛みと生ぬるい感覚がある。
しかも体の所々に包帯が巻かれている。
「とりあえず...起こさないとなにも始まらないな....」
ゆっくり、遠慮しながらゆっくりと体を揺らす。
「す、すいません、ぉ、起きてくれませんか?」
....情けない声が出た
「・・・」
ゆっくりと目を開け数秒パチパチしながら体を起こす少女。
「ぁ.....」
俺に気づくなり急に目に涙を浮かべつつ直視してくるその顔は...見覚えがない。
涙で濡れた顔を拭いながら口を開く少女。
ここでもう予想できる。目の前にいるかなりのルックスをお持ちの少女が、記憶にないこと。
そしてこの状況に合う記憶、ましては自分の記憶すらないのだ。
おそらくというか、ほぼ確実に記憶障害だろう。
(さて、どうするか。とりあえず状況を...)
「その..「よかったぁ~、寝たきりずっと目を開けないから...」ギュッ
ファッ!抱きついてきたんだけど///アセアセ
みごとにかぶられちゃったよ、どうすんの俺?”すいません、あなた誰ですか”っなんて抱き締められてる状態で言えるか!!
「え...どうしたの....?」
(声に出てたぁぁぁぁぁぁ!!!)
驚きを表し始めた少女の顔が曇っていく。
「もしかして...記憶がないの?」
焦りと申しわけなさでどうしようもない俺は、ゆっくりうなずく。
そしてまた少女は涙を浮かべ口を開く。
「そ..う...」
(場の雰囲気に罪悪感を感じるなあ、とりあえず状況を聞かないと...)
「すいません...一体どういう状況ですか?」キョロキョロ
辺りを見渡せばコンクリートに囲まれた小さな広場のようにも見える。
地面には所々にキラキラと光るものが散らばっている。手元にあるものを拾い上げる。
(これは...なんでこんな場所で...)
その正体は薬莢だった。
「...鈴夜くん...」
口を開いた少女の言葉に解を求めて目線を移す。
「あなたの名前は迅...迅鈴夜」
(自分の名前...)
少し頭の痛みが増した気がした。
「あなたは4時間ほど前にこの場所で戦っていた」
戦いという不慣れな単語のせいか思考が一瞬とまる。
「戦っていた?一体何と?」
「この世界の悪であり的です」
あぁ、全く整理ができない。この状況の中、丸腰で戦っていたのか?
(話が理解できないだけでここまで不安になるとは)
「とりあえず移動しましょう、この状況で敵がこられると面倒です」
もう少女の顔には涙は無く、諦めの色を含んだ顔に変わっていた。
突如空気が変わりなんとも言えない感覚が身を包んだ。
「くっ...このタイミングでっ」
少女が焦り出す。
と同時に空間にモザイクのようなものが発生し、その中から人の形をした不規則な色を浮き沈みさせている”何か”が這い出てきた。
「なに...これ?」
その異形に対して恐怖よりも悪寒が体を巡った。
女性の体つきに口が裂けていて笑っているように見える。
体の部位に金属のような光沢を出している物体が不規則にめり込んでいる。
「いまのあなたの状況では戦闘は無理です、本部に戻りましょう」
この化け物のまえで冷静さを見せる様子から驚異では無いようにおもえるが、指示にすんなり従う。
「失礼します...」
男一人をひょいと抱える姿は少女に似つかわしくないものだった。
(女の子に抱えられるのは...)
「少し大胆に移動します、変に動かないでください」
ものすごい音と共に人間とは思えないほどジャンプした少女は、辺りの建物の上を忍者のように飛び越えていく。
ジャンプしたときはGが体に掛かり気を失いかけてしまったが。
(この子人間ではないのか....)
どこかに行くつもりであるらしい少女の顔を見る
(そういえばまだ名前をきてないなぁ。この状況で聞くのもアレだけど...)
男一人を抱えながら目的地に向かう紺色髪をしたのポニーテールの少女。
今の自分の環境に苦笑する。
視線に気づいたのか少女がなぜか頬を赤らめて目線を逸らす。
「そういえばまだ名前を確認していませんでしたね」
少し言葉を選んだのか数秒開いてから名を名乗る。
「私の名称はM1911型です。貴方からは以前まで”ミツキ”と呼ばれていました」
(言い方から察するにやはり人間ではないみたいだな)
黙々と移動を続けるミツキ、体の痛みを堪える鈴夜。
「見えてきました、あれが本部です」
多くのビル群の頭上にただずむ巨大な円盤上の物体。
「見えてきたと言いましてもまだ10kmは距離があるのでできる限りあなたについて説明します。」
「10キロも?かなり大きいんですねアレ」
かなりの大きさがあることは説明から納得できるが、何より不思議なのはその形状だ。
ここから見るとまるでUFOのようだ。
「はい、聞かされている限りでは東京ドーム50個ぶんほどの大きさらしいです」
「・・・」
そんなことを聞きたいわけで訳ではない。
もっと自分に関する個とを知りたい。
険しくなっていく表情から察したのか、焦った様子で言葉を足すミツキ。
「あ、あれはですね、記憶をなくす前のあなたが生活していた家のようなものです」
「・・・」
記憶をなくすことがここまで思考を混乱させるとは。
「おそらくあそこで治療をすれば記憶も復元できるかと...」
(記憶を復元できるのか...)
ならばここで記憶を整理する必要はないのではないか?
そんな考えも出てきたが、俺に美少女の話を中断できるほどの勇気は持ち合わせていない。
「...私は..兵器です...あなたのパートナーであり武器でもあります...」
「...確かに君の能力は人間離れしているようだけど、僕が君を扱うの?指示を出して?」
するとミツキは移動するのをやめビルの上で俺を下ろし顔を見つめてきた。
(え、なに・・・)
男である俺にそこまで異性に対しての免疫がないのは心の弱さゆえだろうか?
「...私の手を取ってください」
手を差し出すミツキ
それにあたふたと困惑する男。
(と、とりあえず言うこと聞くか...)
少し控えめにそして遠慮しがちに、綺麗な女の子らしい手をとる。
すると腕に電流が流れるような感覚と共に、眩い光が辺りを染める。
「え、あ、ちょっと?!」
激しい閃光のあとにはミツキの姿はなくなっていた。
手の中にある黒光りする拳銃と引き換えに。
(これは...)
なにかを思い出しそうだったがそれよりも早く頭痛が脳内を埋めた。
「...」
『だ、大丈夫ですか?』
いないはずのミツキの声が聞こえ咄嗟に顔をあげ、辺りを見渡す。
しかしどこにも先程まで居たはずの少女はいない。
『...あなたの手に持っているその銃が...私の本当の姿です...』
さっきよりも少しトーンが低いように感じられるその声はなぜか申し訳なさそうだった。
『私は...凶器です...怖くはありませんか...?』
声が直接頭に入ってくる。
凶器であり、武器でもあり、兵器でもあるといい放った彼女は、俺が恐怖をなし恐れると思っているのだろう。
しかしなんなのだろうか、このワクワクする子供のような高鳴りは。
銃を握った記憶がないのに何故か親しみがあるような感覚。
「...怖くなんかない..むしろ気分がいいよ」
『...そう...ですか』
トーンがもとに戻った少女は少し嬉しそうだった。
『撃ってみますか?』
「いいの?」
あぁ、本当に気分がいい。
『はい、まずセーフティを...』
ミツキが言い終える前に指が動く。
今は複数の感情で頭が一杯だ。
撃ってみたい、当ててみたい、何かに撃ちたい、という衝動が。
右足を引いてサイトに目の焦点を合わせる、トリガーに指をずらして一呼吸。
『覚えているのですか?』
記憶にないので覚えてはいないだろう。
ただ体が覚えていたのだ。
「いいや、全くだよ」
(自分でも不思議なくらいだ)
だが次の行程に移れない。
トリガーを引きたいのに指が動かない。
『待ってください、私の意思も安全装置となっています』
トリガーを引こうとしていた指が軽くなった。
意思を解除したのだろう。
『いつでも撃てます、反動に注意してください』
「・・・」
そしてまた一呼吸。
屋上にある錆びた柵に標準を定める。
〈パァン パァン〉
比較的軽い衝撃と共に来るのは満足感。
最高の気分だ。
『お見事です、リコイル制御と共に標準にブレなく当たっています』
なんだろうすごく嬉しいのだが。
「・・・」
嬉しさと共に記憶のようなものも込み上げた。
『...どうしましたか?』
不安そうに訪ねるミツキ。
その顔も、そしてミツキのような”彼女”たちの存在を思い出した。
「...思い出したよミツキ、今のこの状況を」
『・・・』
そう、俺は思い出した。
なぜ俺はこんな傷で倒れていたのかを。
「俺は...ミツキ...お前を取り返しに来たんだ」
ーーー
二日前 銃契取扱所
ーーー
この世界は今から60年ほど前に世界戦争によって変えられた。
当時の日本は軍事力を持っていなかったために、世界最強であった合衆国の援護をする形で戦争に参加していた。
合衆国に敵対していた勢力は禁術を用いて、合衆国に匹敵するほどの力を手に入れた。
それが”銃契”である。
銃に人間の魂を結びつけ、その銃の使用者の運動能力や耐久性を人間離れしたものへと変える物である。
それを駆使した敵対勢力は次第に合衆国を押し返すようになったが.....
突如現れた異形の化け物により壊滅させられてしまう。
化け物の進行を耳にした合衆国は、いち早く技術を取り入れ対抗してゆき、化け物の弱体化に成功した。
ーーーーーーーーーーー
銃契約法により銃の保持を認められた世界。
そんな中でもう16歳になる俺は銃契約法により銃を保持しなければならない。
「すいませーん」
銃にガキの頃から興味を持っていた俺は、今日が楽しみで仕方なかった。
今日は銃の講習を受けて銃契をしたあとすぐ帰るつもりだった。
「はい、お待ちしておりました、迅鈴夜さんですね」
にこやかに笑顔を作る受付の女性。
ちなみに女性への免疫が低い俺でも今日だけは特別だ。
「はい!そうです」
こちらも笑顔で返す。ほんと子供みたいだ。
「それでは早速、実射テストをしましょう」
テスト会場に移動した俺は適当に撃ったあと、運動能力テストを行った。
「...す、素晴らしい」
小声で何か言っているらしい受付の女性。
「しょ、少々お待ちください...」
テスト結果を見るなり俺に見せずに何処かへ行ってしまった...
嫌な雰囲気がもれ始める。
「そんなにも悪かったのかなぁ...」
体力には自信があったが、どうやら実射テストがだめだったらしい。
(クソッ、いくらアニメが見たいからって適当に撃つことは無いだろ俺~)
後悔と絶望の味。
ちなみに成績が悪いと一週間の講習がある。
ちなみのちなみに、見たいアニメとはソードアート・オフラインである。
ーーーー
数分後
「あなたが迅鈴夜君?」
受付の女性と共に現れたのは軍服の女性。
「え?あ、はぃ」ガクブル
情けない声だなと自分でも思う。
(あぁ、講習確定だなこれ)
「はじめまして、私の名前は旗義理あやねだ」
金色の髪に栗色の瞳、五感が判断している。
この人は美人だと。
「ぁ、はいぃ、はぎめまして..」
なさけねぇぇぇぇ!!!
しかも噛んだぁぁぁぁ!!!
「フフ、そんなにビクビクしなくていいよ、講習の話じゃないからさ」
(いえいえ違いますとも、ビクビクしているのはあなたの美貌のせいですよ)
「お、おう、お世辞でも嬉しいな///」
声に出てた。
死にたい。
「ゴホゴホ、話が変わるがいいかな?」
先程の笑みが消え軍人の顔になる。
こちらも襟をただす。
「直球にいこう、君をスカウトしに来たのだよ」
暫しの沈黙...
思考が動いたのは5秒後だった。
「はい?」
美女に対してこの返事である。
「君の成績が異例でね」
異例だと?実射テストではそこまでいい成績ではなかったはずだが。
「これは機密だが...君には特別に教えてあげよう」
「ちょっと、旗義理さん?人に教えては機密の意味がありませんよ」
間に入るのは制止の声。
「いいんだよ、お世辞の礼だ」
こちらに目を向け笑顔を見せる。
(クッ、刺激が強すぎる!!)
「このテストには3つの秘密がある」
まず、1つ目。実射テストなんだが、的の表示が奇数だけランダムでね、真ん中を狙っても真ん中に当たらない。
発砲した偶数の結果だけを記録していた。偶数の時は的が動くように細工してある。
つまり、一発目は絶対当たらない、奇数はランダム、二発目、つまり偶数は奇数の時の軌道を体感的に覚えておかないと当たらない。
君は発砲した数の偶数は全て命中していた。
2つ目。異性への免疫が低いかどうかだ。
これは、銃契したときに関係する。後にわかるよ。
3つ目。運動能力テストなんだが、これは持久力を図っていた。
と思うだろうが違う。
ランニング中に雑音をならしたり、集中力を削る試みをした。
しかし君の脳波は全くブレがなかった。恐ろしい集中力だ。
「以上がこのテストの秘密だ」
このテストであるラインを越えると軍にあるメリットを提示されるらしい。
どうやら俺は最高得点のようで、わざわざこんな美人を送りつけてまで軍がスカウトしにきたようだ。
「で、どうだい?軍に来てくれないか?悪い扱いはしない」
もちろん答えは決まっている。
「お断りします」キリッ
そう俺には国なんかどうでもいい。
S○Oのシノノンさえいれば生きていけるッ!
「理由を聞いても言いかな?」
険しい顔になる旗義理さん
険しい顔をした軍人さんに向かって
『アニメみたいので無理です』
と言えればどれだけ楽なことか...
もちろん俺にそんなことを言えるほどの度胸は持ち合わせていない。
悲しいな、訂正するしかないだろう。
「あ、いややっぱり軍に入隊します!!(汗)」
くそったれ!女性に弱い自分自身に憎悪が沸くぜ(泣)
この時の判断が俺の人生を劇的に変えるとは、もちろん思ってもいなかった。