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詩花

詩花 海に向かって

作者: 葵冬弥

桟橋の上を走り


海に向かって


何かを叫ぼうとして


ふと思いとどまる


どうしたの?


ゆったり君は歩いてきた


いや、何叫ぼうか考えてなかった


君は吹き出して笑いだした


走り出して何するのかと思ったら


全く、君らしくて良いと思うよ


浮かんできた涙を指で掬って


はぁ、可笑しいと


腹を抱えて息を弾ませ


白いワンピースの裾がヒラヒラと踊る


気恥ずかしさと


どう返したら良いかわからなくて


とりあえず


頬を掻きながら苦笑い


ねぇ


ん?


ひとしきり笑って


乱れた髪をかきあげながら


楽しそうに半月になった目を


こちらに向ける


それで、何をさけんでくれるの?


う、うーん…どうしようかな


じゃあ私から叫んであげる


君はそう言って一歩進んで


大きく息を吸い込んだ


好きだーーーーー!!!


普段の君ならしなさそうな事を


2ついっぺんにされて


まさに不意の一撃


ポカンとただ口を開けてた


ふぅと気持ち良さそうに


息を吐いて君は振り返る


あ、あの、僕もす


別にあなたに言ってないわよ


ニコニコしながら告げられる


あぁいつもの君だ


でも


少しだけ白い肌は赤くなってた


陽射しのせいかもしれないけど


じゃあ


僕も決まったから叫ぶね


何を叫んでくれるのか楽しみね


僕は彼女よりもさらに海に近づいて


大きく息を吸い込んだ


もう叫ぶ言葉は胸にたまってる


すー!


はい、ダメー!


ドンと後ろから衝撃がきた


わっ、ちょ、ちょっ、た、たすけ


桟橋の際で必死にもがく


君は助けようとせずに


ニヤニヤ笑ってる


ドボンと大きな音を立てて


海に落ちた


もう、ひどいよ


だって、あなたにあんなこと叫ばれたら


叫ばれたら


恥ずかしすぎて死にたくなる


ドンドンしぼんでいく声は


水が入った耳に少し聞こえづらかったけど


ちゃんと聞こえた


海から上がるのに


君の手を借りて


桟橋の上に上がって


おっとっと


わざと足をよろめかせて君に寄りかかる


そして耳許に顔を寄せて


好きだよ


と囁いた


胸にとてつもない衝撃が走り


僕はまた海に落ちた


知らない、バカ!


君はもう背中を見せて歩き去る


また僕は頬を掻く


にやけた顔を浮かべながら

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