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長い休暇 晴れた梅雨の夜

作者: 荒木 樹

梅雨って奴は何故あるのだろうか?

いや、PCで調べればすぐに答えなど出てくる。そんなのはこのご時世当たり前の事だ。某掲示板とかにgrksという言葉が存在するくらいだ。調べればすぐに分かる。

つまり、俺が疑問に思った事はそういうベクトルじゃない。

俺なりふと思いついた事を言うとすると、きっと梅雨がある理由は。


春って奴はどの季節よりもきっと女々しい奴なんだと思う。だから、春は自分が今いる場所から離れ、他の場所に移る時、きっと泣いてしまうんだろう。そして、まだそこにいたいという気持ちが雨に込められ、日に当たり雨が地面から空に上がる時、未練がじめじめとまとわりつくのだろう。

だから、梅雨が降る。


こんな事を考えてしまう辺り少し恥ずかしかったりするのだが、考えてしまうのだから仕方ない。

いつもならこんな事は考えずオンラインゲームに集中しているのだが、なぜか今日はいつも遊んでいるメンバーがいなかった。

俺はヘビィユーザーなので、もはや一人でやるものなどないってくらいにこのゲームをやっている。

そのくらい俺は時間があるのだ。

そうなった理由は思い出したくない。

思いだそうとしても、気がついたら誰とも話せなくなり、そこからコロコロコロコロと、いや、ずるずるずるずると、学校に行かず家に部屋に引きこもった。

まぁ、大雑把に言えば、コミュ障になったから学校がつまんなくなり引きこもりましたってやつだ。

だから、時間はたくさんあった。

だから、オンラインゲームもやりまくれた。

これからもたくさんある……と思いたい。


今の時間は深夜1時。

朝と夜が逆転しているおれにとってはこれからが本番。なのに誰もいない。というか最近、みんな来なかったりする。なぜか某掲示板を見る気も起きない。

ふと窓から外を見る。

今まで雨が降っていたのだろう。蛍光灯で照らされた周りの家の屋根が濡れて光っているのが分かる。

空へ視線を移すと、風が吹いているわけではないのに、雲が速いスピードで西から東へ流れている。


そんなごく当たり前な風景を見て、外へ出かけたくなった。

理由は分からない。

今までこんな事を思う事はなかった。

引きこもりでも身だしなみをきちんと整えているので、人に見られても問題はないと思う。

何故か最近になって気を使うようになった。

と言っても、髭を剃ったりなど簡単なものだけだが。


夜空を見上げながら住宅街を歩く。

大通りを歩く。

そして、コンビニで本を読む。

そのコンビニで読みたいのが無くなったら、別のコンビニに行く。

そして、同じようにして本を読む。

読み終わったら帰る事にした。

大通りを歩く。

住宅街を歩く。


そういえば住宅街に公園がある事を思い出した。

行ってみた。

ここの公園は普通の公園だ。

ブランコがあり、滑り台があり、ジャングルジムがある普通の公園だ。

昔の俺もここで遊んでいた。

遊ばなくなったのは、小学生高学年くらいからだ。

その頃はまだ人と話ができた覚えがある。

だって、話ができなくなったのは……いや、無理に思い出す事もないだろう。

きっと一人で思い出すと耐えられない。

でも、今は友達って言っていいのか分からないけど、聞いてくれる人がいる。

ここのところ少しずつ少しずつ掘り返していける。

だから、今じゃなくていい。


俺が家から出て三時間くらい経ったのだろうか?

空が4時くらいの特有の明るさになろうとしていた。

ちょっと前まであった雲はどこかに行ってしまって、やっと顔を出せたほしは見えなくなりそうになっていた。

まったくあんなに雲っていたというのに、もう雲がなかった。

早いものだ。

ああ、人間に比べたら本当に早い。

人が一度、雲ってしまったら閉じてしまったら、そこから晴れるまで時間がかかるというのに。

でも、本人次第で晴れるのだ。

人だって晴れる事ができるのだ!

だからこそ、俺は今日こうして初めて散歩に出る事ができたのだろう?


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