第9話 教官と修行
久々の更新です。今回は短くなっています。
衝撃の事実を知ってしまった僕であったが、2人にそのことを伝えることはできず、またこの国の人に行ったら絶対に何かされてしまうと思い心の中でいろいろともやもやしていた。
伝えるか、伝えないか。
その間で僕の心は揺らぐ。僕はあまり強くはない。この強くないというのは、力のことも当然あるがそれ以上に弱いのが、精神面だ。僕の精神は豆腐メンタルといってもいいほど弱い自信がある。友達からのからかいなのか、本当なのかわからないような罵声に関してはその場でやり過ごしてもそのまま少し経つと腹が立ってくる、イラついてくる。だから、精神的に弱い。
どうすればいいのか、自分一人で考えれば考えるほど自分の身が崩壊していく。ああ、もうダメだ。もう疲れた。
その日、僕はベッドの上でひとりずっとずっと悩んでいた。隣では健と未来がすやすや小さな寝息をかきながら寝ている。何も考えることなくただ魔王という国王に頼まれた敵を倒すために2人がひたすら練習して疲れているのだということがこれから読み取ることができた。そんな2人ががんばっているのに僕は何をしているんだ。
自分が何をしているのかがわからなくなってくる。どうすればいい。今の僕に何ができるんだ。
──結局、その日僕はまったく寝ることができなかった。
ずっと考え事をしていたら気づいたら日が昇っていた。
向こうの世界でいうところの鶏らしき鳥のような顔が猿のような怖い生き物がコケコッコーと鳴いた。まあ、この声を聴くだけなら鶏なんだが、実際に見ると本当に気持ち悪い。
そんな顔を想像するだけで吐き気がするような生き物の鳴き声によって寝ていた健と未来もベッドから起き上がる。
「「はぁーん」」
2人とも大きく背伸びをする。そして、よく寝たと言いたそうな感じで目をごしごしする。僕に至ってはまったく寝ていないというのにこいつら幸せでいいなと思ってしまう。まあ、寝れなかったのは僕自身が考え事をしていたせいであり別に、健も未来も僕に別段何かをしたというわけではないから恨むのは間違っている。
「カズ、おはよう」
「どうかしたの?」
僕が眠そうな顔をしていたのか2人がとても心配そうに僕を見てくる。
「べ、別になんでもない。ただ、今日はいつもより早く目が覚めてしまって眠いだけなんだ」
いい感じの嘘が浮かんできた。
これならばばれない。そう確信した。
「二度寝でもすればよかったの」
「何なら、もう一度寝てもいいぜ。俺の方から説明でもしておくから。その表情を見る限り本当に早く起きたんだろ。だったら、寝ておくべきだ。調子が悪くなられたら大変なことになるかもしれない。この世界には薬の存在があるのか怪しい。そう言ったことを踏まえるとなるべく体調不良にだけにはなりたくないな」
「……すまない」
僕は健に対して感謝の言葉を述べる。
「いいってことよ。さあ、未来も行くぞ」
「えっ! 私はカズを監視してるから」
「そんなことしたらただいちゃつくだけだろ。カズは本当に大変そうだし寝かせておこうぜ」
「……わかったよ。じゃあね、カズ。早く寝て元気になってね」
早く寝て元気になってねって僕は風邪でも引いたのだろうか。その言い方だとそうとられてもおかしくはないような感じであった。
まあ、それはさておき僕は今度こそ寝ることにする。というよりも実はかなり限界にまで達していた。いくら悩み事で寝ることができなかったとしても一晩開けた後に待っているのは、その悩み事すら凌駕する最大の眠気であった。
このビッグウェーブには逆らうことができない。
僕はこの眠気に従うことにした。
◇◇
それからどれぐらいが経ったのであろうか。僕は眠りから目覚める。
眠る前は重かった体が不思議なくらい軽い。気持ちも上々だ。睡眠がこれほど大事なものであったと思い知った。
さて、起きて僕は部屋を見渡す。
「おはよう、カズユキ元気かな?」
女性の声だ。
僕は声がした方へと振り向く。
そして、僕の名前を呼んだ人にどうしてこの部屋にいるのか理由を聞く。
「ミリー教官どうしてここに?」
僕の部屋にいたのは、修行を見てくれているミリー教官であった。ミリー教官は僕が寝ていたベッドの横にいすを置いてそこに座っていた。
傍から見れば病室で看病されているみたいな光景だったであろう。
「そ、それは……」
ミリー教官が言葉を濁す。
「わ、私の修行でこないだも体調を悪くさせてしまったから看病に来ただけだから。別にカズユキのことが心配とかそうではなくて、私の出世や評判にも関わるわけで」
ミリー教官は顔を赤くしながらそう言う。
ああ、この人僕のことを心配してくれたんだなと今の発言からわかった。男勝りなミリー教官だけど自分の出世とか評判とか言っているけどなんだかんだ言って僕のことを心配してくれているんだ。心配された分これからがんばらないとな。
そう思った。
「大丈夫です。僕はもう元気ですから。ミリー教官も心配してくれてありがとうございます」
「なっ! いや、私は別に心配などしていない。カズユキが調子を悪くすると私の評判が悪くなるからそれを防ごうとしているだけで……」
ミリー教官は、顔を真っ赤にしながら全力で否定した。
本当にこの人は素直じゃないな。
僕はミリー教官にここまで支えられていたとは。
「そんなことより、早く修行するぞ」
ミリー教官は誤魔化すように僕に対して修行をすると誘うというよりも半ば強制的に命令する。
「はいっ!」
僕は、その言葉に不快感を抱くことなくミリー教官の言葉に従う。頑張らないと。
ミリー教官は僕の返事のあとすぐに後ろを向いてしまったが、心なしか笑顔だったような気が……まあ、気のせいだと思うけど。
この日はたっぷりと修行でしごかれたのであった。