第89話 険悪
1回俺らは解散した。
俺は部屋に戻った。
しかし、部屋に戻った時のミリーのことがすごく気になっていた。ベッドの上でごろんと横になっていた俺はモヤモヤしていた。
「やはり……」
俺は、ミリーが大変なことをしそうな気がしていた。
こういう時の悪い勘だけ当たる。
1時間ほどだろうか。ずっと考えていた俺であったがついに行動に移すことにする。
俺は、ミリーの部屋へと向かう。
心配になったので向かう。ミリーの部屋は俺の部屋の上の階に位置していた。階段を上りミリーの部屋らしき部屋をノックする。
コンコン
「ミリーいる?」
俺は部屋の前で名前を呼ぶ。
「……」
しかし、部屋からは返事がしなかった。
おかしい。
俺はそう思った。
女性の部屋をいきなり開けるのは失礼だ。だが、これは緊急事態。開けていいはずだ。
俺は無理やり自分の中で正当性を見つけ出し扉を思いっきり開ける。
「ミリー」
叫んで部屋に入る。
「……いない?」
案の定部屋の中には誰もいなかった。
個人的にはしっかりミリーが部屋の中にいて着替中だったみたいなラッキースケベをちょっと期待していた。まあ、現実はそんなには甘くはなかったようだ。ちょっと、深刻な感じであるのに下心があった自分に反省をする。
「しっかし、どこに行ったんだ?」
部屋にいない。
そうなるとこの王城のどこかだろうか。メッテルニセやミスリードルと話をしているのか。
俺はとりあえずメッテルニセとミスリードルがいると思わしき部屋に行くことにする。その途中のことだ。ふと窓の外、庭を見る。
庭を偶然だが見たら、そこにミリーがいた。
何をしているのだろうか。
ここからでは様子しかわからない。
暗いのでミリーが立っている。それだけは分かる。ただ、立って何をしているのかが分からない。なので、外に出て様子を見てみることにする。
「で、お前はこれからどうするんだ?」
「わ、私は……」
ミリーは誰かと話をしている。
男の声だ。
誰だ。誰と話しているんだ。暗くて誰と話しているのかよくわからない。ただ、これ以上近くに寄ったら俺が盗み聞きをしていることがバレてしまいそうなのでやめておく。
とりあえずは話だけを聞くことにしよう。男の声は聞いて誰か考えることにしよう。
「では、何で城から出ていこうとした?」
「そ、それは……」
「ルミエと直接話がしたいと思っているんじゃないか? だが、あのルミエは偽物だったぞ」
「ええ、だから本物がどこかにいるはずなの。私はずっとルミエと一緒に王国から逃げることができた。そう喜んでいた。それなのに私だけが1人浮かれていた。それを認めることが私にはできない。私は本物のルミエを探したいの」
「なるほどな。あなたの気持ちは分かったが、1人で危険な場所に行かせるとでも思っているのか?」
「そ、それは……」
「俺は見逃さないぞ」
「健、私をどうか見逃してくれない?」
どうやら話し相手の男の正体は健だったようだ。
確かに言われてみれば健の声だったような気がする。俺は大親友の声を見分けることができなかったことに後ろめたさを感じてしまう。
「見逃せると思っているのか?」
「……やっぱり無理だよね」
「そうだぞ」
「……力づくだとしても?」
「俺も力には力で対抗するぞ」
俺の目の前でミリーと健との戦いが始まろうとしていた。
俺はその様子を横で見ることしかできなかった。
ど、どど、どうすればいいんだろうか。




