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第87話 亡命

 今年最後の更新です。


 「助けてくれえええええええええええ」


 「いいだろう」


 俺が、いや俺だけでなく健、ユエ、ミスティル、ミリーが助けを求めて謎の男に対して助けを求める。

 すると、俺らの体の周りを光が覆った。

 ルミエはその光には入っていなかった。


 「ちっ、あと少しではめられたのに」


 俺らが王城から離れる最後の瞬間、ルミエは今まででもっと邪悪な低い声で俺らの悪口を言ったのが聞こえた。

 ああ、あれがルミエの本性か。

 俺はかなりのショックを覚え意識を失ったのだった。


 ◇◇◇


 「うぅ」


 目が覚めた。

 俺はどれだけ意識を失っていたのだろうか。

 

 「おう、目が覚めたか」


 「カズユキぃー」


 「起きたー」


 ユエとミスティルの2人が涙を流しながら俺に抱き着いてきた。


 「ちょ、ちょっと2人!」


 俺は2人が抱き着いて驚く。2人の体が俺に密着している。とても柔らかい。恥ずかしい。何が柔らかいかだって? そんなの決まっている。


 「ほおほお、彼女が敵方にいるっているのにこっちではハーレムですか、そうですか」


 健が俺をニヤニヤ見てくる。


 「う、うるさい……って、そうだ! ここは一体どこなんだ?」


 「ああ、ここか。ここはだな……」


 「よう、ようやく目が覚めたか!」


 俺を助けた男がやってきた。


 「ええ、おかげさまで……って誰?」


 その男は若い男であった。若いといっても俺らと同じぐらいの年齢ではなかった。俺らよりは年上かなと思う。

 眉毛が濃い。毛が濃い。THE男というような感じがする。


 「ああ、初めましてだな。俺はフリーベルトだ。よろしく」


 「ああ。よろしく……」


 この男はフリーベルトと言うらしい。だが、この男の正体については知らない。


 「カズユキ、目が覚めたか」


 またまた人が来る。

 メッテルニセだった。


 「メッテルニセ?」


 「ああ、作戦は失敗だ。カズユキは半日眠っていたんだ。私達は王都から撤退し隣国シュノーデン王国に来ている」


 シュノーデン。王国。

 初めて聞いた地名だ。

 だが、1つだけで理解したことがある。俺らは失敗したということだ。失敗し隣国に逃げたんだ。つまりは亡命ということなのだろう。


 「他の人たちは?」


 「主だったメンバーはうまく逃げ切ることができた。ただ、多くの兵を失ってしまった。彼らには申し訳ないと思っている」


 メッテルニセはかなり悔しそうに言う。涙も流している。失った兵たちに申し訳ないと思っている気持ちにうそ偽りはないのだろう。これがあの国王と同じ王族とは思えない。


 「俺がいなければメッテルニセは助からなかっただろうな」


 「ええ、ありがたいですよ。フリーベルト国王陛下」


 「え?」


 「ああ、俺はシュノーデン王国の国王フリーベルトだ。よろしくな」


 「国王……」


 「意外か? まあ、これでも年齢は23だから若くて国王って言われると驚かれることが多いんだよな。でも、立派な国王をしているんだぞ」


 威厳があるような男には思えなかったのに。

 そして、年齢は23だったのか。髭とか眉毛とか毛が濃いなあとは思ったけど年齢にしては濃い気がするなあ。


 「なんか、今失礼なことを考えたか?」


 「な、何も考えていないっすよ」


 どうして俺が考えていることはバレてしまうのだろうか。

 しかし、隣国の国王がどうして俺らに協力をしてくれるのだろうか。

 俺は、そのことが疑問であった。


 「ああ、どうして俺が助けたか気になっているみたいだな」


 「!」


 どうして俺の考えていることがバレているのだろうか。不思議だ。


 「まあ、俺のことは健に聞けばわかるさ」


 「健から?」


 「まったく、面倒くさいからって俺に全部話を振るんじゃねーよ」


 健がかなりフランクに国王に対して接している。そのことから知り合いだったのだろうなということだけは分かった。

 健は、フリーベルトとの出会いについての話を始めたのだった。


 今年も『国王』を応援してくださりありがとうございました。来年もよろしくお願いします。

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