第81話 王城へ
作戦開始直前のこと。
俺は朝、健からすべての真実を聞いた。
魔王、勇者、この世界での健の過去。
俺はその話を聞いて、ますますこの作戦を成功させなくてはいけない。そんな思いに駆られた。
未来を助ける。それが俺の願いだ。あのクソ国王を倒す。それも俺の願いだ。
クソ国王については俺が倒すつもりだった。だが、あいつに対して俺よりも強い思いをもって倒したいと思っている奴がいる。クソ国王については健に任せることにする。
俺の役目は未来を助けることだ。未来を助けたあとは、この国を自分のいいように変える。メッテルニセと協力して。
「カズユキ、準備はいいか?」
メッテルニセが俺に覚悟を聞く。
「ああ、もちろんだ」
本当に、覚悟は決まっている。
ただ、1つだけ言うならば武力ではなく民主的に解決をしたかった。だが、そんなこと理想に過ぎない。平和ボケしすぎていただけなのかもしれない。
革命でこの国を変えてやる。
それが俺の覚悟だ。
「じゃあ、始めるぞ」
その言葉をきっかけに俺達革命軍は一気に王都へ兵を進めた。
「こっちは任せておけ。カズユキ達は予定通り秘密の通路を使って王城へ迎え」
「ああ」
俺は、メッテルニセらに兵の指揮を頼んで、王城へと向かった。
俺、健、ユエ、ミスティル、ミリー、ルミエの6人で行動をする。
「ここが秘密の通路だよ」
ルミエが言う。
ちなみにだ。
ルミエは隠し通路について忘れていたが、メッテルニセとミスリードルの2人が隠し通路の場所を知っていた。そのため、作戦を実行することができた。
「ここか」
下町にあるというルミエの言葉は正しかった。
下町にある廃屋。ここに王城へ続く隠し通路があると言われてもまったく信じることができないだろう。
「よいっしょ」
廃屋は、2階建てであった。ただ、かなりボロボロになっていて2階には入れそうになかった。じゃあ、どこに隠し通路に続く道があるのだろうか。
「こっち、こっち」
ルミエが言ったのは、廃屋の一番奥にあるダイニングらしき部屋であった。何で、わかったかというと、皿などが割れて散らかっていたからだ。それからダイニングだったのだろうと予想した。
ダイニングらしき部屋には机があった。木でできているのでぼろぼろに腐食していたが、何とか机としての体を成していた。その木の下の床の色は他の床と異なっていた。怪しい。いかにも怪しい色をしていた。
その色が異なった床に取っ手がついていた。取っ手を持つと、下からは隠し階段が出てきた。
「か、隠し階段!」
「ここから地下に行くのね」
「すごい」
みんなして隠し通路の存在に驚いていた。
本当にあったんだ。信じていないわけじゃなかったが、あったことに強い驚きを感じる。
「じゃあ、この通路に入って王城へ向かうとしますか」
『おおおおおおーーー』
俺達は、通路に入り王城へと向かう。
ただ、一つもめたことがあった。
「誰が先頭に行く?」
『……』
隠し通路は1人ずつしか入れそうにないほど狭かった。
王城へ続く隠し通路ということは向こうから王族が逃げてきて鉢合わせになる可能性もあるということだ。一番前、戦闘にいる人はかなり危険な立ち位置になる。その先頭に行く人物を誰にするか。その話し合いでもめた。
え? 俺? 俺は魔法がほとんど使えない。だから、戦闘なんかできないぞ。
「ミリーかルミエの2人が戦闘でいいんじゃないの?」
ユエが言う。
「健の方が良いと思うな」
ミスティルが言う。
「私が先頭でもいいよ」
ミリーが言う。
「じゃあ、ミリーでいいんじゃないの?」
ルミエが言う。
そんな話をしてなんとかミリーが先頭になる。
「じゃあ、いざしゅっぱあつ!」
俺がそう言うと、みんなが、
『おおおおおおおお!』
と、再び声を出す。
そして、1人ずつゆっくり隠し通路に入り、王城へと向かうのだった。




