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第79話 かつての勇者



 「俺らがこの世界に異世界転移したのは全部俺のせいなのだ」


 「え?」


 健の言った言葉の意味が俺にはわからなかった。


 「そ、それって一体どういう意味なんだ?」


 「ああ、どういう意味もない。俺のせい。すべては俺のせいでこの世界にみんなを巻き込んでしまったんだ」


 健が俺達を巻き込んだ。

 それって健が何か関係したことがあるということなのか。


 「その俺のせいって言うのはどういうことなんだよっ!」


 俺は、その詳細についてとても気になった。

 それゆえ焦り健に対して声を荒げてしまった。


 「……話は長くなるがいいか?」


 「長くてもいい。俺は真実を知りたい。どうして俺らがこの異世界に来てしまったのか。そのことを知りたいんだ」


 知りたい。

 真実を知りたい。

 俺は健から話される内容がとても気になっている。

 だから、いくら話が長くなろうとも全部、一言一句聞き逃すことなく聞いてやる。


 「……わかった。それならば全部話をすることにしよう。そもそも俺はこの世界に昔来たことがあるんだ」


 「え? 来たことがある?」


 「ああ、中学2年の時にこの世界に転移した。その時は、今のあの国王のいる国ではなく別の国に召喚されたんだ。あの時も勇者として俺は崇められた。当時の俺は厨二病だったから……ちょっとはしゃいでしまった。勇者という立場に酔いしぐれていた」


 「そういえば、あの頃の健は今とはだいぶ違ったよな」


 俺は、中二の頃の健を思い浮かべる。

 あの頃の健は今と違ってかなりオタク趣味にはまっていたし、はしゃいでいたし、性格もだいぶ違っていた。

 それが、中学二年のある時を境に変わってしまった。

 急にオタクな趣味を辞めてしまい、性格もかなり大人びた。

 俺は、その時の健をああ、大人になったんだなとか趣味が変わったんだなとかそんな風に思っていただけで特に不思議に感じたことはなかった。

 しかし、背景に異世界転移というものがあったとは想像もしていなかった。


 「勇者としての立場に酔いしぐれていた俺は、周りを見ることができていなかった。仲間になったみんなをしっかりと見ていなかった。何があっても自分が勇者だから何とかなる。俺も異世界でTUEEEEEEEEEEEEEEEEってやれると勝手に思っていた」


 健は、そこで一拍おく。


 「やれると思っていた。それが一番の悲劇であった。俺の勝手な行いが仲間の多くを死なせる結果になってしまった。多くの罪なき人々を被害に合わせてしまった。俺のせいで一つの国を滅ぼしてしまった。そして、最後に俺は魔王との戦いで勝つことができたがその魔王を完全に打ち破ることができなかった。ただ、魔王は体を維持することができず物体としては消滅した。それゆえ、俺は魔王を倒した英雄としてさらに持ち上げられた。讃えられた。だが、俺には耐えられなかった。多くの仲間を犠牲にした。多くの人々を見殺しにしてしまった。良心の呵責には勝てなかった。俺は、魔王を一応倒したこともあり自分の役割はここまでと判断しある日……自分ののどを貫いた」


 「自分ののどを貫く……それって自殺じゃねえか」


 「ああ、俺はこの世界で死んだ。死んだあと気が付くと元いた世界に戻っていた。俺が異世界に転移してから時間は3時間しか経っていなかった。俺が異世界で過ごしたのは5年間。あまりの時間の誤差に驚いた。俺が大人びたというのは和之よりも5歳多く生きているからだ。それと異世界でいろいろなことを経験しすぎてしまった」


 「そ、そうだったのか」


 健の話を途中まで聞いた。

 だが、かなり重い話であった。

 昔の俺であればラノベみたいな展開やべえとか思っていたところだが、ここまで深刻な話だとそんな気持ちにもなれなかった。


 「それでだ。ここまでがこの話の前半部分だ。俺のせいで異世界に転移した。その話に関係することを今から話す」


 一旦健は話を止めた。

 そして、いよいよ異世界転移の核心に迫る話をし始めたのだ。


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