第78話 衝撃のひとこと
今回は短くなります。
コンコン
俺は健の部屋にノックをした。
「健、起きている?」
健が起きているかどうか確認をする。
「あ? 和之か。起きているぞ」
「入ってもいい?」
「ああ、いいが」
「お邪魔するな」
俺は健の部屋に入る。
「何か用があるのか?」
健が俺に尋ねてくる。
「ああ、実はちょっとね。今日見た夢のことで健に聞きたいことがあってさ」
「夢? 夢の内容なんかで俺に聞きたいことがある?」
健が夢なんかで俺に話しあるのかよ。みたいな態度を取ってくる。
まあ、そうだろう。普通なら。
だが、俺が見た夢は過去の記憶。昔あった出来事についてとても気になったから聞くのだ。
「俺が異世界に転移する前に健は何か悩んでいたことがなかったか?」
「……俺が悩んでたこと?」
今、健が明らかに言うのをためらった。
何か俺に隠していることがある。
俺に言えないようなことなのか。
ま、まさか彼女がいたのか。
俺が知ったらからかうから言わないのか。
「け、健まさか彼女の事か?」
「俺に彼女なんかいないぞ」
俺の予想はいとも簡単に否定されてしまった。
瞬殺だった。
「じゃあ、何で悩んでいたんだ?」
「……」
健は黙ってしまった。
そこまで俺に言いたくないのだろうか。
だが、健の表情はかなり厳しいものであった。
「……」
俺は、健にどんな言葉をかければいいのかわからず黙ってしまう。
「……」
「……」
無言の時間が続く。
「どうしても話してくれないのか?」
俺は最後の最後のダメもととして健に話しかける。
これでだめならこの話はなかったことにしよう。
あくまでもこの悩みは健個人のものだ。
俺がたとえ友人だとしてもあまり深くかかわってはいけない。
人には触れては欲しくない場所がある。
そういうことだろう。
これは俺と健の仲でも触れては欲しくないアンタッチャブルな場所だ。
「……そんなに聞きたいのか?」
健は、俺に確認を求めてきた。
「ああ、気になっているんだ。友人として健が何に悩んでいたのか?」
俺は健の悩みを解決したい。できなくても負担を減らしたい。そんな思いで聞いている。
「……言ってもいい。ただ、和之。この話をする前に俺はお前に謝らないといけない」
「謝る?」
俺は健の言葉の意味が分からなかった。
「ああ、謝るだ」
「何を?」
俺は言っている意味が本当にわからなすぎて健に何を謝るのか聞く。
健は、一拍おき、俺にとって衝撃のひとことを発するのであった。
「……俺らがこの世界で異世界転移したのは全部俺のせいなんだ」
「……え?」
その一言はとても衝撃的であった。




