第71話 容態
スランプあけに少しだけ書きました。
俺は、ユエやミスティル、メッテルニセと合流して不正貴族の秘密の地下室からとりあえず出た。
宝物を探すために地下室に入ったはずだったが、宝物以上の存在になるものを見つけてしまった。
それが勇者だ。
勇者健。
俺と共に異世界に召喚されてしまった友達だ。その友達いや親友が地下室に幽閉されていた。
俺が国王に騙された時、健も国王に騙され魔王征伐を名目に他国との戦争に駆り出されていたはずだ。それなのにどうしてこんな場所にいたのか。
聞きたいことはたくさんある。
しかし、全部聞こうにも健はかなり危険な状況にいる。
回復が優先だ。
「ユエ、頼む」
「うん。キュアライト」
ユエに回復の魔法を頼む。健の表情はかなり青く心配に思えるぐらい悪いものであったが、回復魔法をかけたことにより徐々によくなっていった。
「うぅう」
言葉が何とか出てくるぐらいになった。
「健、健!」
俺は健の名前を呼ぶ。
健は、俺の声に気づき反応する。
「か、和之……?」
「ああ、そうだ。俺だ。和之だ」
「ああ、あれは夢じゃなかったんだな」
「そうだ。俺がお前を助けたんだ」
「そうか……。か、和之。未来が、未来が……」
「おい、未来がどうしたんだよっ!」
だが、俺の言葉に返答することなく、そこで健は気絶した。
未来がどうしたのか。
俺はその言葉の続きがとても気になった。
「カズユキ、落ち着いて。とりあえず彼を救護できる場所に運ばないと」
ユエの提案で俺らはこの町の小さな医者の元へと連れて行った。
町は空っぽになって人がいなかったが、こっちには医者が従軍している。なので、医療道具さえあればこっちのもんであった。
「シュタイナーさん。お願いします」
俺は、この革命軍に従軍していたシュタイナーという医者の人にお願いする。
「ああ、カズユキさんの申し出なら私は承りますよ。私はこの集団の下っ端に過ぎないのですからね」
シュタイナーは、そう言って健の様子を確認する。
「んー。かなり衰弱しているようですね。回復魔法をかけられたようですが、これはもっと強力な回復魔法が必要ですな。私の医療魔道具を使ってどうにかしてみようと思います」
「お願いします」
俺は、シュタイナーさんの言葉を信じて見守ることしかできなかった。
「ああ、あとは任せておけ」
そう言ってシュタイナーさんは健の治療を始めた。
俺はその様子を見守るだけだったのだ。




