第70話 懐かしの人物
俺は怪しい声がする方に近づいていく。
どこかで聞いたことがある声だった。
さて、どこでこの声を俺は聞いたことがあったのだろう。
よく思い出すことができない。
「誰なんだ? 誰が助けを求めているんだ?」
俺は徐々に声のする方に向かっていく。
「誰だ?」
「タ、タスケテ」
俺は、この長い通りの行き止まりに突き当たった。
暗く暗くとても長い廊下であったがようやく廊下の隅にたどり着いた。
そこにあったのは扉だった。
暗くとても重い鉄の扉があった。
どうして重いかって? そりゃあ、もちろん自分で触って押してみて動かなかったから重いということはわかった。簡単には動きそうにない。
でも、まだ俺の力はこんなものではない。
俺は本気の力で扉を押してみる。
全力だ。
「うぉぉぉぉぉぉぉ」
全力で扉を押す。なかなか重い。
だが、こんな扉俺にとっては軽い障壁に過ぎないぞ。
「うぉぉぉぉぉ」
全力で最後の力を使うことにより扉を開け切った。
「ぜぇぜぇぜぇ」
さすがに力を使いすぎた。
息がかなり乱れてしまった。
「しっかし、ここの扉の先に一体何があるんだ?」
俺は、ゆっくり呼吸を整えて周りの様子を見る。
部屋はあまりにも大きくはなかった。かなり小さい部屋であった。そして、部屋の奥には1つの椅子があった。椅子には人がいた。男だ。もう、不正貴族がいないというのにこんな屋舗の一番奥に人がいるとはどういうことだろうか。
不思議に思えた。
だが、まだこの部屋が廊下以上に暗くて目が慣れていない。
俺も一応明かりをつけることができる。
「ライト!」
明かりをつける。
部屋の中が一気に明るくなった。
これで周りをよく見ることができる。
何とも便利なことか。明かりが人類にとってとても大切なものだということがよくわかる。
さて、部屋をよく見ることにしよう。
椅子に座っている男はいったい何者なのか。それをしっかりと見極めないといけない。
「え?」
俺は、男の正体を見て驚いた。
その人物は俺がよく知る人物であった。
「健?」
それは、俺がこの世界に召喚された際に分かれた勇者健であった。
「健、おい、健だよな?」
「その声はかずゆきか?」
「ああ、そうだよ」
「ああ、無事でよかった」
「それはこっちのセリフだよ。お前こそ無事でよかった」
俺はまず、健を椅子に手錠で繋がれていたため動けなくなっていた状態だったのでこれを取り出すことから始めた。
健はかなり弱っていた。
一体どうしてこんなことになったんだ。
そう思うぐらい衰弱していた。この地下に一体どれだけの期間閉じ込められていたのだろうか。
「健……」
俺は、健を明るい場所に連れて行くため部屋から出て外に向かったのだった。




