第68話 財宝が欲しい
隠し扉の中にある階段を下りる。
中は暗い。
明かりがない。
「ライト!」
ユエに魔法で明るくしてもらう。
「ありがとう」
「カズユキ、気をつけろよ。明かりがあるとしても何があるかわからないから」
「ミスリードルまで何も来なくてよかったのに。ユエと俺とあとはミリーで十分だと思うけど」
隠し扉の先にある階段を下りているのは俺、ユエ、ミリーそしてミスリードルの4人だけだった。
部下に任せてもミスリードルはいい気がするんだが、本人は自分が下りると言ってきた。
「私自身も地下の様子というものを知りたくてね。不正貴族ともなれば地下に金銀財宝を絶対に隠していると思うんだ。それを財源としていろんなことができるしね」
ミスリードルはミスリードルでいろいろと考えているようだ。
金銀財宝を狙っているっていうのは盗賊っぽくてあれだと思うけど。
でも、その金銀財宝も本来ならば国の税金として納めるべきものだったはずだから本来の場所に納まるという意味でまあとってもおかしくはないのか。
「財宝があったら俺も少し欲しいな、なんちゃって」
俺は少し罪報というものに興味を持っていた。
やはり日本にいた時には財宝なんかで会う機会がまったくなかった。ダイヤモンド、エメラルド、金銀、宝石などなど財宝を見たい。
触ってみたい。持ってみたい。欲しい。
俺はそんな思いがあった。
「そんなに欲しいのか、カズユキ」
「欲しい!」
ミスリードルの言葉に食い気味に俺は欲しいと答える。
「……本来ならば国に納めるものだが一つだけなら俺があげたということにしてあげることもやぶさかではないが」
「じゃあ、1つだけ」
俺は、現金であった。
宝石がもらえるチャンスがあり素直に喜ぶ。
「カズユキよ。なかなか現金な奴だな」
「俺は一応俗物という認識をしているからな。宝石とかやっぱり1つぐらいは欲しいとは思うぜ」
ミスリードルとそのような会話をする。
「はいはい、2人ともそろそろ地下に着くよ」
俺らが無駄話をしている間に階段の一番下までやってきていたようだ。
相変らず魔法で明かりをつけないと周りが分からない。
「金銀財宝はあるか?」
「いや、カズユキ。それ今思うところじゃないからね」
ユエに突っ込まれる。
いや、だって俺にとって一番大事なことだから。財宝の有無。
「財宝おおおおおおおおおおお」
俺は財宝を見つけるため叫びながら走り出す。
俺自身は明かりをつける魔法を使えないというのに1人で走っていく。他の人を置き去りにして。
「え、えええ、カ、カズユキ!」
「ちょ、ちょっとカズユキ勝手にどこかに行かないでよ」
俺にはそんなユエとミスティルの言葉が耳に入ることなくそのまま走り去る。
「財宝はどこだああああああああああああああああああ」
俺は叫んで走っていく。暗い中を。
「ん? この声は?」




