第64話 ヴァイデンの領主
俺らは政庁の前で守備している兵士らの前に堂々と歩いて近づいて行った。
当然、向こうの兵士も俺らの姿を確認している。
「おい、そこの3人止まれ!」
「止まらないと攻撃をするぞ」
「魔法班、魔法の準備をしろ」
兵士らが警戒する。
俺らに向けて火の魔法を飛ばそうとしているのが分かる。
火の魔法が宙に何十個も浮かんでいた。
あれがもしも俺らに向けて放たれればひとたまりもないということだけがわかった。
「待て」
しかし、興奮する瓶子を制止するものがいた。
「君らは何用でここに来た? 理由次第では帰すわけにはいかなくなる」
騎士団長らしき人物がやってきた。
他の兵士も彼の言葉に従っているようなので騎士団長らしきとは言ったが本当にそれに準ずる立場である人物なのは違いない。
まず、オーラが違った。
足が震えていた。
殺気なのかわからないが、威圧感がかなりすごかった。
それに顔もごつい。
ゴリラか、と言いたいような顔だった。
それも俺が威圧的に感じてしまう一要因のような気がする。
「俺らは使者としてやってきました。ミスリードル、メッテルニセ両殿下連名の手紙があります」
「……そうか。ならば中に入れ。ただし怪しい動きをしたらすぐさま首が落ちることになる。それだけは肝に銘じておけ」
「……はい」
威圧的だ。
足が震えている。
それは俺だけじゃなくユエもミスティルの2人もそうみたいだ。
俺らは、中に案内される。
まっすぐ向かった先は領主のいる部屋であった。
とりあえず、ここで牢屋行きになるという展開だけは回避できたようだ。問答無用で牢屋に送られてしまったら何も話すことができなかったからな。それだけを回避することができてよかった。
「失礼します」
俺らは領主の部屋に入った。
部屋の中央、立派な執務机には1人の女が座っていた。
……女?
「やあ、私がこのヴァイデンの都市領主アイーシャ=シルフィーだ。君がカズユキ君だね。それにミスティル王女にユエさんかな。君たちのことを待っていたよ」
「え!?」
俺はその言葉に驚きを隠せなかった。
俺らのことを待っていた。それは一体どういう意味だ。
「さあ、私の復讐も始めさせていただくよ」
アイーシャが俺達を待っていた理由を語りだした。




