第57話 俺の考え
「王を倒す計画をどうやって立てるのか?」
俺は、メッテルニセに聞いた。
メッテルニセは王の弟であるが同じく弟であるミスリードルがその疑問に答えてくれた。
「王を倒す方法はいくつか考えている。1つ目に武力で討伐だ。これは正面から武力で倒す話なのだが私の領地の兵士を使って倒すという計画。2つ目はこれも武力になるが正面からではなく暗殺をするという計画だ。しかし、暗殺をするにしても国王の周りには魔法のプロである隠密部隊が潜んでいるから草々難しい。3つ目は、戦争だ。我々の領地は辺境だ。だから、独立をして戦争を起こす。もしくは、この辺境を隣国に譲る代わりに王都へ攻めてもらうという作戦だ」
ミスリードルの計画のすべては武力によるものであった。
確かに武力で倒すという計画の意味はしっかりと理解している。あのくそ国王を殺そうとしているからだ。しかし、俺はこの作戦がかなり難しいなということが分かっていた。あのくそ国王の周りに隠密部隊がいると言っていたがそれだけではなく兵力が無効にはかなりあるはずだ。
俺が曇った表情をして考えていると俺の考えていることが分かったのか俺の教官をしていたミリー教官、ルミエ教官の2人の宮廷出身者がこの計画についての意見を述べた。
「私の考えであるけど、王の周りには隠密部隊だけでなく近衛隊など多くの兵士がいるから難しいと思う」
ミリー教官は武力で倒すことが難しいと言う。
「私も同感だわ。兵士は力がかなり強いし近衛隊というのは私みたいに魔法が使えないという者が少なくて拳でも魔法でもどっちでも強いっていう人が多いの。だから、武力は難しいわ」
2人は武力で国王を倒することが無理だと判断したみたいだ。
「カズユキ。武力が難しいって宮廷にいた2人が言っているわけだから諦めたほうがいいかもしれない」
ユエが弱弱しいことを言う。
「私も王族としてユエと同感です。無理ですよ。こんなの」
ミスティルもユエにのっかかる。
だが、2人がどうして無理だと言っているのか別の理由があるとも思った。2人はいつになく真剣だった。おどけてもいなかった。
「ねえ、これが絶対に失敗すると思っているから2人は反対なんでしょう。俺が死ぬ確率が高いということが分かっているから」
俺は2人が反対する理由を言い当てる。
「そうに決まっているでしょ」
「そうよ。私達はカズユキに恋人が言おうともカズユキのことが好きなの。だから、好きな人には生き延びてもらいたい。そして、愛する人の元へとしっかり行ってほしいの。まあ、私達の内心はモヤモヤしているけどね」
2人が泣いて俺のためだと言う。
2人は俺に恋人がいると知っても俺のことを好きでいてくれている。そして、俺の命の事もしっかりと考えてくれている。これはとてもうれしいことだ。正直に言ってここまで考えてくれているとは思わなかった。2人に愛されていて本当にうれしい。
「2人ともありがとう。俺に彼女さえいなければどっちかと付き合っていたような気がするよ」
本音だ。
絶対に俺が未来と付き合っていなければこの2人のどちらかと付き合っていただろう。そんな風に自然と思えた。
「カズユキ。1つ聞きたいんだが、ここは重婚オッケーの国だが……」
「……異世界だからそんな気がしていたけどそれは今知りたくはない情報だった」
メッテルニセの余分な情報で俺の余胤がどこかへといってしまった。しかし、まあこの恋人問題は後回しだ。
俺は国王を倒す。いや、殺す。
その方法は武力ではない。
武力で倒すことが不可能に近いということはみんなからちゃんと聞いた。メッテルニセ、ミスリードルの2人が考えた作戦は基本的には武力によるものだ。この世界の人間では考えが広がらないのだろう。
ここからは異世界から来た人間の出番だ。
俺は日本史、世界史、政経が専門だ。とても詳しい。
この知識を生かしていく。
国王を倒す。
地球ではそれはどうやってするのか。
決まっているじゃないか。フランス革命、イギリス清教徒革命、名誉革命。そう王政というのは民衆が倒すという相場があるのだ。
この世界の民衆にはそんな思いはないのかもしれない。
だったら、俺が煽ろう。
「俺は、この王国をぶっ潰す。革命の時間だ!」
「「「「「「革命?」」」」」」
ユエ、ミスティル、メッテルニセ、ミスリードル、ミリー、ルミエの6人は俺が放った革命という言葉の意味がどうやら分からないようで首をひねっていた。
さあ、革命の説明から始めることにしよう。
次回は土曜日更新です。




