第51話 辺境領の入口にて
「着いたよ」
ミリー教官に言われて俺は、ほっと息をつく。
「ここが辺境領何だね」
ユエが驚く。
「私、ここに来たのは始めただけどこれはまたすごいね」
ミスティルも驚嘆している。
辺境領の入口には、領地を囲むように城壁がそびえたっていた。
これは、完全に戦争をする気で作られている。
俺にはそのように感じた。
城壁の上の方を見ると兵士がこっちを見ている。
やはり、戦争をする気でいるように感じられた。そうとは、知っているのか、知らないのか分からないが、ミリー教官とルミエ教官は堂々と門番のところへと向かっていった。
そういえば、すでにここの中にいたんだっけ。と、なると堂々としている理由は分かるが、俺達はまだここに来たばかりだ。こんな緊迫した場所で堂々とするのは、とても難しいことだった。
ミスティルは王族だったこともあり何とか自分を保とうとしているが、ユエなんかものすごく硬くなっている。体の動きがロボットみたいだ。
ただ、ロボットみたいだと言ってもこの世界の住人であるユエには理解できないだろう。
「おい、お前ら!」
「ひぃ」
ユエから女の子が出してはいけないような声が出た。
今、門番である衛士が俺達に低い声で話しかけてきた。
俺ら、何かやったのだろうか。
今、ミリー教官とルミエ教官が俺達のことをしっかりと説明してくれたのではないか。そういう手はずになっていたはずだ。
それなのに、どうしてそんな低い声で脅迫するように俺らに声をかけてくるのだろうか。
俺が、そのようなことを考えていると、衛士は呆れたような声で言った。
「おいおい、お前ら何そこで突っ立っているんだ。早く、中に入れよ」
衛士はそう言った。
どうやら普通に中に入らせてもらうことができるらしい。では、なぜあんな京博するかのような声であったのか。
ユエなんか、怖いのかとてもブルブルおびえている。俺の体で自分を隠しながら門を通り過ぎようとしていた。
それを見た衛士はまたまた呆れていった。
「おいおい、そこの嬢ちゃん。俺の声で怖がったのかい? この声は元々なんだぞ。だから、そんなに怖がられるとちょっと傷つくな」
どうやら元々の声だったらしい。
そういう訳だったのか。
衛士は、首に手をまわしてやれやれと言った。
やれやれって、いう人久しぶりに見た。
正直、俺は衛士に対してそんな印象を抱いてしまった。しかし、本来の衛士というのは門を守る担当だからある程度怖い人じゃなきゃ、仕事が務まらないだろうからある意味適材適所なんだろな。
絶対に本人に言わない方がいいような気がしたので衛士に対して、俺が今思ったことは言わないで、自分の中だけで完結させておいた。
「とりあえず、ユエ。中に入るぞ」
「う、うん」
まだ、ユエはおびえていた。
意外とこういったものにおびえるような子なんだなと学園でも生活をしていたはずなのに思った。
ミスティルのことも実は深く知らないし、もっと2人と仲良くなった方がいいのかな。学園ではある程度仲良くしていたつもりだけどやっぱり俺の心には国王への復習しかなかった気がするから心のゆとりが少なくてそれ以外の事に構っていた気がしない。
さて、門の内側に入った。
ここが、辺境領。
俺らにとっては初めての場所だ。
辺境領ということもあり、田舎の風景が俺には思い浮かんだ。しかし、意外と栄えていた。
辺境領の入口の街ミエという名前らしい。らしいというのは、ミリー教官から直前に耳元でこっそり教えてくれたからだ。何で、こっそり教えたのか分からなかった。耳元で話す必要のどこがあったのだろうか。
それを問いただしても教えてくれなかった。一体、ミリー教官は何がしたかったのだろうか。
「ここから辺境領の中心まではまだまだ時間かかるから急いで向かうよ」
辺境領の地図をミエでもらった。
確かにこの町が辺境領の一番は字に位置していることが確認することができた。
「ユエ、大丈夫か?」
俺らは急いで歩いていた。
ミリー教官になぜか急かされていたからだ。曰く、王弟が早くカズユキに会いたいという連絡を送ってきたかららしい。
王族の命令には逆らえないよな。
そのため、移動のペースがかなり早くなっていた。
ユエがそのペースに対して付いていけなくなりそうだったので声をかけた。
「だ、大丈夫……」
言葉ではそう言っていたが、顔色はかなり疲れているように見えた。無理しているのは目に見えてわかった。
「ユエ──」
俺が、ユエにどうするか聞こうとするとその言葉を別の人によって妨げられた。
「カズユキ、疲れたあー。私にも何か気遣ってー」
ミスティルが声をかけてきたからだ。
疲れた、疲れたと言っているがそんな様子は完全に見えなかった。嘘だというのが一目で分かった。
「おい、ミスティル」
俺は、かまってほしいだけだというのが分かったので、怒った。
「ご、ごめん」
俺が意外と本気で怒ったのであっさりとミスティルはひいた。
まったく、本当に体調が悪い人がいるのだから今はふざけている場合ではない。
ミスティルに悪気がないのは分かるが、今はユエが心配だ。
「ユエ、水のむ?」
「うん」
「きちんと飲まないとダメだぞ」
俺は、近くにあった小川の水をユエに差し出す。
ユエは少し水を飲んだ。
顔色は少しだけよくなった。
でも、まだまだ距離があるみたいだからな。
ユエには悪いがやらせてもらうか。
「ユエ。ちょっとごめんな」
「え、えええ」
ユエは動揺していたが、かまわなかった。
俺はユエを背負った。
これならユエも楽だろう。
そう思い背負ったのだ。
「ああああああ」
ミスティルが叫んでいるが気にしない。
ミリー教官からなぜか圧力を感じたが気にしない。
俺は、ユエを背負って歩き始めた。
「ごめんね、カズユキ」
「あー、大丈夫大丈夫」
俺は、そう言ってユエの気を紛らせてあげようとする。
「じゃあ、行くよ」
「うん」
ユエからの声がものすごく元気に感じたのは気のせいだと信じたかった。




