表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

49/90

第49話 泣いた教官

 「……ここまでが私達が来た経緯よ。カズユキ。私達はあなたに対してとてもひどいことをしてしまったわ。私達は、あの国王とは対立していたものの結果としてあの国王に協力をしていたようなもんだわ。きちんとカズユキ達に情報を伝えればよかったのに……謝って許されることだとは思っていないけどごめんなさい」


 「ごめんなさい」


 俺達に今までの経緯についてミリー教官とルミエ教官は語ってくれた。そして、語ってくれた後に俺に対して謝罪の言葉を述べた。

 俺は、今まで絶対に許さないと思っていた。しかし、この話を聞いて少し考えを改めなおした。この人たちが本当のことを言っているのか、嘘のことを言っているのかどうかは分からない。今までの経緯というものがまるっきり嘘の話なのかもしれない。しかし、この人たちが嘘をついていないと確信できる部分があった。この2人の目はとても真剣であった。俺に対してすべてを話すことで、俺に許されなくてもいい。私達は絶対に許されないことをしてしまったのだと認めている。そんな雰囲気を俺は悟ることができた。

 被害者は俺達だけじゃなかったのかもしれないな。俺はそう思った。

 ミリー教官とルミエ教官の話を信じていいのかもしれない。この人たちが嘘をついているようには思えないから。

 もう一度人を信頼してみる。あの国王に騙されたときは、もう人を信じようとは思わなかった。でも、あれから数年たったことでユエとミスティルという2人の仲間に出会いことができた。この2人のおかげで俺は昔の感覚というものを取り戻せていたのかもしれない。あのすべてに絶望した状態から俺の心が晴れてきたのは2人のおかげだ。

 だからこそ、前を見なければならない時が来たのかもしれない。

 ミリー教官とルミエ教官の2人の話を信じ、次なるステージへと進まなくてはいけないのかもしれないと思った。


 「2人ともわかりました。今、思えばあの時ミリー教官は俺にきちんと生きるすべを教えてくれていました。あの時の行動にうそ偽りがあったようには思えないです。だから、俺は2人の話を信じることにします」


 「「カズユキ……」」


 2人が、俺の名前を呼ぶ。

 しかも、泣きながら。思いっきり泣いていた。年は俺と同じぐらいの人が思いっきり泣いていた。

 え、ええ。ちょ、ちょっと。

 俺は急に泣いてしまって動揺してしまった。あたふたしてしまった。


「ちょ、ちょっと、や、やめてくださいよ。お、俺はもう何とも思ってませんから」


 「うえーん、何とも思われていないんだー」


 「うええええええええええん。何も思われてないんだー」


 えー。

 内心で思った。

 大丈夫。もう、気にしていないという意味で言ったのに別の意味で解釈されてしまったみたいだ。ってか、何とも思われてないんだという返事は何だろうか。俺に何か思われてほしかったかのような発言に聞こえてしまうが、2人はそのことに気づいているのだろうか。あえて、気づいて言っているのだろうか。まあ、気にしないようにしよう。

 うん。とにかく2人を泣き止ませることが先だ。

 そうしないと、さっきから端っこで状況を理解することができていないユエが困るだろうし、何でこんなことになったのかしらと思っているミスティルの2人に説明をする時間を確保しなくてはいけないのでこのことを早く片付けなくてはいけないと思った。

 でも、どうすればいいのだか。

 困る。

 2人は同じ年だから子供あやすわけじゃないんだし。そもそも泣き止ませるって子供じゃないじゃん。勝手に解決するんじゃない。 

 ギブギブ。

 無理ですよー。

 俺は困る。困った。


 「うにゃあああああああああああああああ」


 「ああー、カズユキが壊れたああああああああああ」


 「どうすればいいのよおおおおおおおお」


 俺が、急に叫びだしたことでユエとミスティルの2人も動揺したのか叫びだした。

 すごい光景になっていた。

 良い年をした2人の女性が泣き、3人の男女が叫ぶ。

 ああ、傍から第三者としてこの集団を見たとするならばやばい連中だという認識をされるのだろう。そのやばい連中が今の俺らなんですけどね。

 どうしたものか。

 冷静になりたくてもなれない。

 何だ、この葛藤は。


 「どうすればいいんだ?」


 「ほっとけば?」


 「そうすればいいと思う」


 ユエとミスティルの2人はやけに厳しかった。

 ミスティルはまだしもユエに至ってはこの2人って初対面の人だよね? 初対面の人相手によくこんな手厳しいことを言うことができるもんだと俺は思った。俺だったら絶対にすることができないことだと思う。

 ユエ、ミスティルの2人の意見は「ほっておけばいい」というものだった。

 そうだな。

 一理あるかもしれない。

 一時的な無視をする。何か、案外効果がありそうな気がしてきた。その根拠はどこから来たものかわからないが、とにかくなぜだか自分でもわからないがいけるような気がしてきたのだ。

 だから、2人からもらったアドバイスを本当に実行に移すことにする。


 「ユエ、ミスティル。行くか」


 「「えっ!?」」


 驚かれた。

 いや、そんなに驚かれても。2人が俺にほっておこうと提案したんじゃん。俺は、そのことに従ったまでよ。なのに、何で驚くんだ。

 俺は、? という表情をした。

 2人は、この男やっちまったよ、というような顔をしていた。

 あれ? おかしいなあ。どこで間違えたのだろうか。

 俺は、ミリー教官らを見る。

 2人はまだ泣いていた。

 

 「はぁ~」


 早く、移動したい。

 内心そんなことを思っていたのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ