第48話 経緯
連載再開です。
久しぶりなので短いです。
「私は王都から脱出する」
王弟はそう言った。
「脱出するのですか?」
私は、王弟に対して思わず聞き返してしまった。
「ああ、ここにいてももういいことはない。それにもう兄上は遠慮することなくどんどんと自分の政策を推し進めるはずだ。その中で私のことが絶対に邪魔になる。障害は絶対に排除するはずだ。そうなると私の命はもう狙われるに決まっている。今まではまだ甘くされていたが本格的に暗殺者を仕向けられることになるだろう。だから王都からは脱出をする」
王弟の言葉から緊迫した雰囲気を感じ取ることが私にはできた。
王弟が逃げる。
逃げるという手段を使わなくてはいけなくなるほど追い詰められてしまったということなのか。私には、考えることもできない高度な駆け引きというものがきっとあったに違いない。
そして、私達はどうすればいいのかについて考えてみた。私達は今までこの人に守ってもらってきていた。しかし、王都に残ったとしたら王弟から庇護されることがなくなる。私達を守ってくれる人はいなくなってしまう。これを機に私達も逃げたほうが賢明であると考えた。
「私も王都から出ていきます」
私は、王弟に言う。
「なら、私も逃げることにします」
ルミエは、私の意見に乗っかってくれた。同じことを考えていたのかな。私はそう思った。
「そうだな。君たちも逃げるのが賢明だろう。ただ、一緒に逃げると見つかる可能性があるから私とは別行動をとるようにしよう」
「別行動、ですか……いいですが、私達はどこに逃げればいいのでしょうか?」
王弟はどこへ逃げようとしているのだろうか。
私にはその事が気になった。
王弟が逃げる行き先が気になっていた。別行動で逃げるにしてもいつか合流をしたい。だから、行き先だけでも聞いておくことにする。
「私はここから兄上の領地に向かう」
「兄上……あっ、ミスリードル元殿下のことですか?」
「ああ、そうだ。兄上なら私をかくまってくれるだろう。ミスリードル兄上も国王によって左遷させられたのだからきっと何かしらの手伝いをしてくれるはずだ」
「それは、名案ですね」
ルミエが笑顔で答える。
ミスリードル元殿下の名前が出てからかなり笑顔になったのだが、どうしたのだろう。あの人と知り合いだったのだろうか?
ただ、そのことをわざわざ聞くのも何だか悪いなあと思って聞くことまではしなかった。
「では、ヘンリエッタ領で会おう。私は一足先に向かう」
「はい。御無事で」
「向こうで会いましょう」
「ああ。ミリー、ルミエ。君たちも無事で着くんだぞ」
こう言って王弟は一足先に旅立ってしまった。
それから少し時間が過ぎた。
「ねえ、ルミエー」
「何? ミリー」
「そろそろ私達も行くことにしましょう。おそらく荷物を持ってくる時間はないはずよ」
「うん。そうだね。今戻ったらおそらく私達は捕まる。目に見えているわ。ところで通貨は持ってきているの?」
「……少しだけなら」
「なら、仕方ないわね。走って逃げましょう」
「ルミエは、魔法があるから移動するのは楽だけど私には魔法を使う才能がないのよ」
ルミエには魔法がある。魔法による補助で走るのも楽にすることができる。そんな便利なものは私にはない。
私には剣しかないからただ体力があるだけで走り続けることしかできない。ああ、完全に脳筋の言うようなセリフではないか。自分で言っててとても悲しくなってしまう。
「それなら、私が補助魔法かけるけど……」
「……あっ」
そういえば、補助魔法って自分以外の人にもかけることができるのであった。そのことを私はすっかり忘れていた。
とても初歩的なことだったのにどうして忘れていたのだろうか。
ど素人だった。
「大丈夫? 少し疲れている?」
ルミエにかなり心配されてしまった。
まあ、これは完全に私が悪い。こんな初歩的なことを忘れているのだから。いくら魔法が専門外だとしても日常的な知識として覚えておかなければならないことなのに、それなのに忘れていたのだ。
ルミエに心配されてしまう、いや、頭の悪い子のように思われても仕方ない。仕方ないけど……ルミエにだけ言われるのはとてもショックだった。
この子にだけは言われたくはないセリフだった。
いや、もう気にしちゃだめだ。
「疲れているけど、気にしないで。さっさと逃げましょう」
そう言って、私達は王都から脱出した。
目的地に向かって2人でなるべく人に見つからないように隠ぺいの魔法をかけながら逃げ続けた。
そうして逃げて、目的地に向かった。辺境伯の家にたどり着き、王弟ともしっかり合流することができた。
辺境伯で隠れ住んで数年が経ち、領内に向かう怪しげな人がいるので私達は警備のために様子を見に行った。
そこで出会ったのは、カズユキだった。
私達は、まさかの再会をしたのだった。




