第44話ミリー、ルミエ②
すみません、スランプにより更新遅れたのと文字数少ないです。
「「お願いっ!」」
ミリー、そしてルミエの2人の元教官の切羽詰まったその「お願い」という言葉に俺の心は揺さぶられてしまった。
振り向くつもりはなかった。
そのままこの場を去っていくつもりであった。
なのに、後ろを、元いた場所を振り向いてしまった。
ああ、すべてはこれが失敗になるとは思わなかったのだ。この時は。
だが、俺は振り向いてしまった。
無言でにらみつける。それだけの動作をしてしまった。しかし、この動作は振り向くとは思ってもいなかった2人に絶好の機会を、隙を与えてしまった。
「カズユキ」
「カズユキ」
俺が振り向くと2人がキラキラと目を輝かせていた。
俺が振り向いてくれるとは思っていなかったようで、うれしいと思っているのだろう。でも、俺にとっては最悪の展開だ。振り向くつもりなどまったくなかったのだ。
どうして俺は、俺は振り返ってしまったのだろうか。自分の行動を悔いる。
「ちっ、何だよっ! お前らは一体俺に何のうらみがあるんだ! 俺が何をしたというんだ! 何が目的なんだ!」
俺はキレた。
怒り狂った。
どうしていいのかわからずにミリー、そしてルミエの2人に対して怒鳴り散らした。
「はぁはぁはぁ」
怒鳴り散らしてそのエネルギーがあまりにも大きかったので俺は怒鳴り散らした後に疲れてしまった。
一人馬鹿みたいに怒鳴り散らしていて冷静になると本当に自分がおろかであると感じさせられた。どうして俺は独り相撲をしていたのか。
「カズユキ、私達はあなたに謝りに来たの」
「そう、謝らさせてほしいの」
「謝る? はっん! 何の話だ。お前らに謝られる筋合いなど全くねえわっ!」
俺は、2人の言葉を手厳しく拒絶をする。
謝られるなんてことをされたくはない。そもそも謝るって何の話だ。あのことか。国王の話か。国王は悪くないんですとか、自分たちは無理やりだったのですとか言ってくるのか。だったら、あきれて何一つとして言いようがねえな。
俺の猛烈な拒絶の言葉に2人は沈黙してしまう。
ただ、2人の様子を見て俺は少し違和感を覚えてしまった。
いや、様子ではない。
そもそも2人がどうして俺の元にやってきたのかについてここにきて考えるようになっていた。
だって、俺の元へやってきたら今の俺がやったように拒絶されるに決まっている。それとも俺があのことをもう許したとでも思っていたのか。そんな甘い考えを持つわけがない。じゃあ、どうしてここに来たんだ。
理由を聞いてはいけない。でも、聞かなくてはいけないような気がしてきた。
俺は、俺はやはり過去と決別をそろそろしなくてはいけないのではないのか。
俺の額から嫌な汗が流れている。
知らないうちに汗が背中からも出ていた。
「カズユキ、大丈夫?」
「無理しなくていいのよ?」
ユエとミスティルの2人が俺の心配をしてくれている。
本当にありがたい。でも、俺は2人にずっと心配をかけているのも悪いと思った。
それにもう過去を、トラウマを乗り越えようと誓ったんだ。
だから、目の前からこのことに取り組もう。
「大丈夫。俺ももう過去から目を背けてはいけないしな。そろそろ相対さないといけない時が来たようだ」
そう、言いつつも俺の額から汗が流れていた。
明らかに体は拒絶しているということは察することができた。でも、でもだ。それでも俺はもう決めた。
過去と決別をすると。
「2人は、……どうして、俺の、ところに、来たんだ」
俺は必死に息を整えてその言葉を言い放つ。
放つという威勢のいいものではなかったが、どうにか言い切った。
「実は、あの時の話をあなたにしに来たの」
「あの日の真実。あなたは、カズユキは知っておくべきだと思うの。それにそのことを私達は謝りたかったの」
「「聞いて、私達の話を」」
そうして2人によるあの日の話が始まったのだった。




