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第40話 勇者の力

更新遅れました。


 「フレアボール!」


 突如として俺たち以外の第三者の手によって魔法が放たれた。

 火の玉が盗賊の連中に弾けた。盗賊は、火の玉によってやけどした。

 フレアボールはそれほど威力の高い魔法ではなく、難易度もかなり初級の魔法だ。俺も城の中にいたころに習ったことがある。

 しかし、誰が俺たちを助けてくれたのだろう。俺は、魔法が飛んできた方を見てみる。そこには2人組の影が見えた。しかし、ここからではある程度の距離があるのか人の顔を判別することがうまくはできなかった。だから、誰が俺達を助けたのかは分からなかった。

 いや、まだだった。


 「ふざけるなあああああ」


 「何様だ!」


 「怯むな! 女は犯せ!」


 「男は殺せ!」


 盗賊は盛り上がった。

 盗賊の言葉を聞いておれは思った。


 (それって、ゴブリンやオークの言うようなことじゃないですかね)


 どうやらこの盗賊の知性というものはよくよくエロゲーとかで出てくるようなゴブリンやオークのような考えしか持てていないようだった。

 ……ちなみに俺は未成年であるので、エロゲーをもちろんやったことがありません。……本当ですよ、ええ……

 まあ、そんな頭の中でどうでもいいことを考えている場合ではない。

 まだ状況は変わっていない。

 相手がやる気が出たというのならばこちらも戦わなければならないというのは変わっていない。

 でも、武器はない。

 戦うものはない。

 戦う力もない。

 俺に何かができるのか? ……いや、やらなくちゃいけない。やらなくちゃいけないんだ。


 カランカラン


 俺の目の前に金属音が響いた。

 金属音の正体は鉄だった。といっても、ただの鉄ではなかった。


 「こ、これは」


 その鉄は刀であった。

 刀。

 日本刀らしきものであった。

 どうしてこんなものが異世界ここに? 俺は、この刀がここに突如として現れたことに驚きを隠すことができなかった。


 「日本刀がどうしてここに」


 しかもだ。その日本刀は光輝いていた。

 最初。思ったことがあった。突如として出現したこの刀は先ほど俺達を助けてくれた2人の人の魔法によって出てきたものだと思った。しかし、直感的にそれが違うような気がしてきた。

 どうしてなのかはわからない。

 だが、直感的にそんな気がしたのだ。


 「「カズユキ……」」


 ユエとミスティルの2人が俺の名前を呼ぶ。2人は、俺がここで時間を稼ぐので逃げろと言ったのにここに残ってしまっていたようだ。

 まったく、男がここまで格好良く決めているというのに逃げないってちょっと俺的には悲しく思うのだが、まあいい。

 刀を俺は手に取る。

 すると、なぜだかわからないが力が体の中に勝手に入り込んでくるような感覚がしてきた。この刀の情報も自然に入ってきた。


 「勇者の刀?」


 刀から入ってきた情報で最初の思ったのはそれだった。

 勇者の剣じゃなくて?

 それから、どんどんと情報が俺の頭の中に直接書き込まれるように入ってくる。

 それらすべての情報を合わせるとわかったことが何か。それは、俺が勇者であったということだ。健がずっと勇者であると思っていた。しかし、刀からの情報によると俺が本当の、真の勇者であったと言っている。

 どういうことなのか。

 刀は、当時の俺には夕社としての資格がなかったと言っている。俺と健であれば健の方がまだ勇者として近かった。だから、くそ国王らには勇者が健であると判断されたと言っている。

 そして、国王の罠にはまった俺は本来持っていた力というものを自覚したらしい。その力というのが誰かを守りたいという思いだそうだ。

 そして、刀が俺の前に現れた。


 「これが、俺の力なのか?」


 「カズユキ、やってしまっちゃって!」


 「そうよ、カズユキならばできるはずよ!」


 戦う力を手に入れた。

 この力を、国王を倒す力としても使えるかもしれない。でも、今は、今だけは大切な誰かを守るための力として活用させよう。


 「わかった。今から盗賊あいつらを倒してみせる!」


 俺は、つかに力を込める。

 そして、盗賊に向かって刀を振るう。


 「はあああああああああああああああああ」


 刀を軽くふるう。声は思いっきり出してみたけど。

 すると、刀のふり幅に比べて斬撃はかなり大きなものになった。たった少し振っただけで盗賊が斬撃によって吹き飛ばされ、中にはグロテスクに体が真っ二つになった者もいた。


 「ひぃ」


 「た、助けて」


 「逃げろおおおおおおおおお」


 たった一撃。

 たった一撃を与えただけで盗賊は逃げていった。

 かなりあっけのないものであった。ここまで盗賊が雑魚いとさっきまでおびえていた無力な自分というのがかなり馬鹿らしく思えてきてしまう。最初からこの力があればよかったんだ。そうすれば健も未来も……

 だめだ、だめだ。悲観的なことを考えるな。

 俺の取り柄は政治力だ。それに武力というものが加わっただけの話だ。国王打倒の作戦は変わらない。武力は最終手段にとっておく。まず、政治的地位を確立することを目標としよう。


 「カズユキ」


 「大丈夫?」


 「ああ、呆気なく終わっちゃったよ」


 「すごく、強くなったね」


 「それだけ強かったら武力で国王やっつけられるんじゃない」


 ユエがそんなことを言ってくる。

 やっぱりそう思えるのか。


 「私もそう思う」


 でも、それだけで倒せたら楽な気がしない。それにだ。


 「武力で倒すよりも政治的に抹殺した方が俺的には苦しみがでかいと思っているんだ。だから、武力は使わない」


 「……意地悪いね」


 「ひどーい。まあ、あんな人どうでもいいけど」


 ユエの言葉は俺への非難に聞こえるが顔は俺への非難ではないことを判断できるような表情をしていた。また、ミスティルは国王の悪口を言う。しかし、言葉だけ聞くとミスティルのセリフって何か、かなりひどい女に見えるな。うん、見える。


 「さて、そろそろ出てきてくれないか」


 俺は、この戦いの中でまだ解決していないことがあった。

 俺らを助けた人物の正体だ。

 その人物がだれなのか。 

 ここで、はっきりさせてやる。

 

 バキバキ


 木の枝を踏む音がし、2人の影が近づいてきたのだった。


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