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第4話 勇者召喚の儀式

 「汝、この場において力を求めむ。汝、この力を持って──」


 数人の黒い服を着た男と女たちが怪しげな呪文を唱えていた。

 呪文を唱えている先に存在しているもの─それは光り輝いている魔法陣であった。魔法陣を描くことで何かを召喚しようとしているのであろうか。ただ、ここにいる者全員が召喚するものについてまでは詳しくは知らなかった。彼らには国王からあることしか伝えられていなかった。


 勇者召喚


 勇者を召喚するために儀式をしてくれと国王から直接この場にいる者に伝えられたのがついおとといのことであった。それから2日。準備という準備に明け暮れた魔術師たちは勇者を召喚する儀式を進めていた。

 そんな魔術師の様子を少し離れた場所から眺めている男が1人いた。

 彼の名はマダロス。国王直属の近衛騎士団の隊長を務めている男であった。

 彼がここで魔術師たちのよる勇者召喚の儀式を眺めている理由はそんなに難しいわけがあるとかではなかった。


 魔術師たちが怪しいことをしないか監視していろ!


 要は国王からの命令であった。

 マダロスとしてはそんなことは絶対にないだろうと思っているが、あの国王は人を信用しない。よくもまあ国王やめさせられないよなと思ってしまうほど人間としての器が小さいと彼個人の心の内では思っているがそれを公に発した瞬間自分の今いた地位はすべてなくなってしまうことを容易に想像することができないので言わないでいる。

 そんなどうでもいいことを考えているうちに魔術師たちによる勇者召喚の儀式は進んでいた。古の文献には禁術指定されていたためいかに難しいものかと考えていたところだがそこまで難しいというよりも禁術指定される要素はないとマダロスは考えてしまったところであった。

 正直もう監視する必要性はない気もしていたがこの後もしものことがあったら自分の首が飛んでしまう。やはりマダロスの頭の中には自分の身しかなかったのであった。


 「──ここに今英傑を呼び出すことを宣言する」


 どうやら勇者召喚の儀式の詠唱をすべて言い終えたようだ。あとは、この場に勇者が1人だけ召喚されればいいだけの話だとマダロスは思った。しかし、詠唱を統べて言い終えたはずなのにいつまでたっても魔法陣の上から勇者と思えるような人が召喚されるようなことが起こらない。


 これは不発か。


 マダロスは魔術師たちに対して侮蔑的な視線を送る。こちらを見ていた魔術師は一気に自分たちの面目を失ったことに気づき下を向くものや今すぐこの場から逃げ出そうとするものまで現れる。

 そこで、マダロスはここにきて傍観者的立場からようやく口を開く。


 「おいっ! お前ら!」


 ひぃぃ


 口には出ていないがおそらく全員と言ってもここでいう全員とは魔術師全員のことを指すが彼らは恐れそして、ビビったであろう。それほど、迫力ある声であった。だてに近衛騎士団隊長を務めている男ではない。


 「状況はどうなっているのか?」


 マダロスは近くにいた魔術師の男に尋ねる。

 魔術師の男はひぃぃ殺さないでとわめいていたがそれを無言の圧力で黙らせ無理矢理聞き出すことに成功した。


 「あ、あの、ど、どうやら、勇者召喚で、ゆ、勇者の現れるざ、座標をずらしてしまったみたいで……」


 「座標をずらしただと!」


 マダロスは怒鳴りつける。

 魔術師の男はそのマダロスの怒鳴り声でまたひぃぃとビビりだし始める。そこで、マダロスはもうこれ以上この魔術師からは聞き出せないと判断すると近くにいたまた別の魔術師の女に尋ねる。


 「おいっ! そこの女! 勇者はどこに召喚されたんだ!」


 「あ、あの、座標はずれたと言っても印は王城を指していますのでおそらく王城内のどこかだと……」


 どこかと言われてもな。マダロスはそう思った。だが、これで探さなければ俺の首が飛んでしまうとも同時に考える。まあ、もしものことがあったら今会話をした女はなかなかの美貌とスタイルの持ち主だと黒ローブの上からでも分かるものだったのであのヤリ○ン国王ならばそれで許してくれるだろうと近衛騎士団の隊長あるまじきことを考えてから召喚の儀式を行っている部屋から退出する。


 マダロスが部屋から退出した後に向かった場所は王城内にある近衛騎士団の宿舎であった。マダロスがここに向かった理由は1つしかなかった。


 「「お疲れ様です」」


 マダロスが宿舎に入ると数人の団員たちが挨拶をしてくる。ただ、これぐらい常識のことでありマダロスにしてはいちいちかまうことはしない。数人の騎士たちの挨拶を黙殺し奥へと進む。宿舎の奥にあるのは作戦司令室とでもいうのだろうか、騎士たちが任務を行う際に集まる部屋である。


 「おい、今ここにいる騎士たちは今から任務を与える。緊急性が高いものなのですぐに行動せよ」


 マダロスは勇者召喚についての説明をし、すぐに王城内を探せと命令をし自身も勇者たちの行方を探すことにした。

 騎士たちは数十人いたはずだったが、時間が経つうちに数百人規模にまで拡大していた。マダロスとしては急いで見つけたいとは考えていたが、国王にこのことを露見されるのも防ぎたいとも思っていた。しかし、そんなことどうでもいいと考えることを途中でやめる。そんなことを考えている暇があったら勇者を早く見つけなければいけない。


 「隊長」


 そこに数人の騎士たちがやってきた。その表情は喜びともいえるものを読み取ることがマダロスにはできた。


 「……どうした?」


 「はい。勇者たちを発見できました。こちらへ来てください」


 「そうか……すぐに案内してもらおう」


 マダロスはとりあえず面倒事になんなくて済んだと内心でほくそ微笑んだ。そして、勇者がいると報告を受けた場所へとマダロスは向かった。

 しかし、そこでマダロスが見たものは勇者召喚では召喚されるはずの勇者は1人であるはずなのに3人の少年少女がいたのだ。普通ならばありえない。だとしたら、一体誰が勇者であるのか? マダロスはとりあえず3人に向かって尋ねてみることとしてみた。


 「で、君たちの中の誰が勇者だ?」


 マダロスが質問をした3人は驚いているようであった──

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