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第39話 VS盗賊と

 「げへへへへ」


 「この女達かわいいですぜ、味見してみてえ」


 「げへへへへ」


 俺達の目の前には山賊がいた。

 山賊たちの目から欲望を感じ取られた。ちょこっと聞こえた話からきっとこの後の展開はご想像の通りになるだろう。ユエとミスティルの2人はかわいい。美少女といってもいい部類だ。

 だからこそ、このあと俺を殺して2人を犯そうとするだろう。

 山賊の考えが単純すぎて呆れる。


 「10人、か」


 俺は周囲を確認する。

 盗賊の数は10人であった。

 俺に戦いの才能があるかと言われればないと言ってもいい。だが、まったく戦えないわけではない。城の中で剣術の指導を実際に受けていたこともあるので少しは戦える。


 「カズユキ」


 「どうする?」


 ユエとミスティル。この2人は魔法を使うことができる。実践をしたことがないはずなので戦えるかどうかはわからない。でも、魔法を使えるというのは盗賊に対する多少のアドバンテージだろう。

 戦わなければどの道俺らは助からない。


 「いけるか?」


 「行かなくちゃ私たちはあのぶさ男に侵されるのでしょう」


 「私の処女はカズユキのためにあるのだから」


 「ミスティル、そういうのを女の子が言うのはどうかと思うよ……」


 「何をぶつぶつ言っているんだ。男の方は俺らに女を置いて行けば命だけは助けてやるぞ」


 「大丈夫だ。女を侍らせているということはもうヤッちまっているんだろ? 俺らがやっても変わらないから大丈夫だぜ、げへへへ」


 げへへへ。

 本当に下品な男達だ。

 ユエとミスティルの2人は引いている。鳥肌が2人の手の肌から出ているのが見えた。

 俺が、女だったとしたらかなりショックだな。絶対に引く自身はあるな。


 「(どうするこの状況?)」


 俺は、盗賊等あいつらに聞こえないように小声で2人に話しかける。


 「(どうにかしないとはいけないね)」


 「(どうにかって、どうするの?)」


 「(それを今から考えるのでしょう)」


 俺達は、これ以上ひそひそ話を継続したとなると盗賊等あいつらに俺らの行動がバレる危険が高まるので各自でどのような対処法をするのか考えることにした。

 俺が、ここで戦うとしたら……

 勝てる自信がない。

 俺は、くそ国王を倒す手段として政治的な力で倒そうと思ったのはそもそも俺自身に武力による勝負をすることが不可能であると悟っていたからだ。学院に通っていた時に魔法の研究や授業もあった。その際に俺も新たに魔法を学び覚えるという機会があった。そこで、覚えた魔法というものはすべて将来くそ国王を倒すためのものであり武力となる戦闘系魔法を覚えるということをしなかった。

 まさか、そのツケがこんなところで来るとは思わなかった。

 いやあ、盗賊に会うなんてな。現代日本がいかに平和なのかが分かる。俺達みたいな日本人が異世界に転生や召喚されるよりもアメリカ人とか治安の悪い国とかの国の人が異世界に転生や召喚される方がいいのではないのか。

 っていう愚痴をいつまでも思っていてもこの状況は変わることはしない。

 はあ、どうしたものか。

 俺は、考えないといけない。

 この状況を打破する方法を。

 でも、俺はまずは2人を逃がすことを考えた方がいいのではないかと思った。あのくそ国王を倒すまで俺は死ねない。でも、その前に俺はやっぱり男として女の子にはしっかりと生きてほしい。生き残ってほしい。ユエとミスティルにはこんな場所でこんなくそみたいなやつらに犯されて人生を終わりにはしてほしくはない。

 じゃあ……

 ここで俺がやるべき選択は決まっている。

 いや、これしかない。

 俺が、身代わりとなり戦い2人を逃がすという選択肢。それしかない。


 「はあ」


 息を一回吸う。

 覚悟を決めよう。

 そうだ。

 足がぶるぶると震えている。

 おびえるな。

 こんなところで俺は立ち止まってはだめだ。

 目が怖くて開かない。

 嫌なことからも目をそらすな。

 俺は、もう逃げないと決めた。 

 覚悟を決めたんだ。


 「はああああああああああああああああああああああああああああ」


 俺は、叫ぶ。

 盗賊等に聞こえるように大きくバカみたいに叫ぶ。

 俺が、叫んだことで盗賊等は一斉に俺に目を向ける。

 盗賊等の目を見るとこいつバカなのかということを思っていることが一瞬でわかった。どうやら俺がこの空気に耐えられずに頭がイカれた奴であると俺の狙い通りに思ってくれたようだ。

 やはり、盗賊というのは頭が悪い。

 まあ、うちの元盗賊どもは勉強したおかげで頭がよくなったので別に彼らをディスっているわけではない。

 今、俺の目の前にいる盗賊等をディスっているだけの話だ。


 「てめえ、死にてぇえのか!」


 「ああん!」


 盗賊等は俺に対して圧をかけてくる。

 俺がビビるとでも思っているのだろう。

 しかし、そんなものに俺は屈することはな──


 ぶるぶるぶる


 足がめっちゃ震えていた。

 あれ?

 あんだけ覚悟を決めて盗賊の目の前に出たというのにどうして足がこんなに震えているんだ。

 どうして動くことができないんだ。

 歩くことができないんだ。

 顔も指の1つも動かすことができない。


 「ひひひ、こいつビビってますぜ」


 「俺らの前に出てきたということは死ぬ気があるということでいいんだよなあ」


 「いひひ」


 盗賊たちが不気味な笑みで俺に話しかけてくる。

 そして、手には鎌や小刀、ナイフといった武器を持っていた。

 ああ、俺は結局ここで死ぬのか。嫌だな。

 いや、まだあきらめるな。


 「ユエ、ミスティル、逃げろおおおおおおおおおおおおおお」


 俺は、叫んで盗賊へと奇襲をする。

 この不意打ちに盗賊も驚いている。

 そして、盗賊は驚くこととなる。

 俺も驚くこととなる。

 この場に本来いない第三者が現れたことによって。


 「フレアボール!」


 魔法が盗賊に向かって弾けたのだった──


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