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第38話 馬車での移動中の事

 学院を卒業した俺達は、コスモ王国に戻ることになった。

 コスモ王国の中のとある領地に向かってとりあえず行くことにした。


 「で、そこには何があるんだ? ミスティル」


 「ふふん。よくぞ聞いてくれました」


 「ミスティル、いいからそういうのわね。カズユキも早く話の本題が聞きたいはずだから答えてよ」


 「そこは、ちょっとためさせてよっ。まったく。ユエはこういう時のノリが分かっていないのだから。いいわよ、話すわ。私たちが今から向かうのはある貴族がいる領地よ」


 「ある貴族?」


 「うん。その貴族の名前はミスリードル元殿下。あの国王の実の弟で、国王の策略により私たちが今から向かうヘンリエッタ領に左遷させられ、王位継承権を奪われた可哀想な人よ。あの人は反国王派筆頭でもあるから必ず力になってもらえるはずだわ」


 「ミスリードル元殿下……」


 俺は、ミスティルの言ったその貴族の名前をつぶやく。

 元殿下。

 王位継承権を失った男。

 ミスティルが言ったその経歴を見る限りこの国の光の部分をかなり歩いていた人であったはずなのだが、それがあのくそ国王によってすべて奪われて影の生活へと追い詰められた人だ。

 きっと俺達の心強い味方になってくれるはずだ。


 「ミスティル。国王の弟ということはミスティルからとったら叔父ということ?」


 「うん、そうなるね」


 「叔父ということはやっぱり仲がいいとか結構な頻度で会ったりとかしていたの?」


 「いや、あんまり会ったことはないね。前にユエにも言ったけど私は側室の子だから王位継承権があるような人は本当に別格すぎて会わせてもらうこともなかなかさせてもらえなかったから」


 ユエとミスティルの会話を聞いて思ったことがあった。

 王族というのは本当に複雑であるなということだ。

 王位継承権という言葉は元々いた世界においても日本史や世界史を学んでいたので言葉としては学んできたが、実際にその制度の下に生きている人からすれば忌々しい制度のように思えた。


 「カズユキが難しい顔をしているよ。ミスティル」


 「あんまり重く考えないでほしいな、カズユキ」


 「ああ、いろいろと思うことがやっぱり出ちゃうな」


 「まあ、あんまり深く考えなくていいよ、私のことは。ともかくヘンリエッタ領へと向かうことにしよう」


 俺達は、馬車に乗ってコスモ王国のヘンリエッタ領へと向かった。

 馬車っていうのは、初めて乗ったが結構遅いし揺れるものだった。この世界に来てずっと歩いて移動していたのでこういったこの世界の乗り物による移動というのは初めての経験であった。

 馬車がゆっくりなのは、俺がもといた世界では新幹線とかいう便利な乗り物があったので頭の中で勝手にその乗り物と比較していたからに違いない。

 でも、歩かなくても移動できるというのは最高なことだな。

 座ってユエとミスティルの2人と話しているだけで目的地に着くというのはかなり楽ちんでいいことだ。


 「カズユキ、なんで笑顔なの?」


 「なんか、いいことでもありました?」


 「俺、今笑っていた?」


 「笑っていたよ」


 「ええ、笑っていました」


 「そっか……」


 「「?」」


 俺が、沈黙すると2人は不思議そうに首を傾げた。

 俺は、自分が笑っていたことに関して思ったことがあった。

 復讐のために俺はいろいろと考えてきていた。しかし、笑えるぐらいに心の中に余裕というものはもうできていたんだな。

 あのくそ国王の前にもう一度出た時に俺は本当に復讐しようという気持ちになることができるのか。

 それができなかったら……

 今の俺の悩みというか恐怖はそのことでいっぱいだ。

 だが、あまり考えないようにしよう。特に俺の目の前にいる2人には絶対に気づかれないようしよう。あまり心配をかけたくはない。

 俺は、外をぼっーと見つめていた。

 ユエとミスティルはずっと談笑をしていた。

 何事もなく暇な時間だった。

 馬車の旅もいいと思っていたが何もしないというのは逆に酷だな。俺はそう思い始めていた。


 ゴン


 そんな時鈍い音が響き渡った。

 そして、音と同時に馬車が大きく揺れた。


 「「きゃあ」」


 2人の悲鳴が起きた。


 「ちっ、何が起きた!」


 俺も叫んだ。

 すると、次の瞬間体が不自然に浮かんだ。いや、体が浮かんだという訳ではなかった。俺の視界が不自然に変化した。さっきまで床だった部分が壁の部分へと変化し始めていた。これは、つまり馬車が傾いたということか。


 「2人とも気をつけろ!」


 俺は、2人に向かって叫んだ。俺も馬車の中にあった突起に手を思いっきり触れて自分を守ろうとする。

 そして、馬車は、完全に倒れた。ゴンという音は馬車に何かが当たった音だったのか。

 俺は、倒れた馬車から脱出しようとする。ユエとミスティルの2人は、けがはどうやらしていないようだった。

 馬車が倒れた時に自己防衛用の魔法を発動していたようだ。


 「いてて、くそう、何が起きたんだ」


 俺達は外に出る。

 すると、目の前には10人の山賊がいた。

 ああ、なるほど。俺達はこの山賊に襲われたのか。


 「ユエ、ミスティル……」


 「カズユキ、これは」


 「ピンチだね……」


 俺達の平和であった旅は一転してピンチへと陥れることになった。


 次回更新は、明日18時となります。

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