第37話 卒業
本日……というよりも昨日の20時以来の更新になります。お気を付けください。
学院生活最後の日。
つまりは卒業の日だ。
俺がこの学院に来てから編入だがざっくり言うと3年間。物語的に言うと書くことができないぐらい濃い生活を送れたんじゃないかと思う。
仲良くなった奴もいる。
そいつらは平民、貴族と階級にそこまでこだわるようなことはなかった。異世界だから貴族の娘や息子が好き勝手なことをしていると勝手なイメージを持っていたがそれは違った。この学院の生徒である以上全員が平等だというのがこの学院の方針だった。そんな法身のおかげでいろんな奴と知り合いになることができたのだ。
この人脈は将来生かせるかもしれない。コスモ王国の貴族の息子もいた。
「カズユキ、卒業おめでとう」
「ああ、ありがとう。ジュンレン」
それがこいつジュンレンだ。
コスモ王国の北の地レニグラの領主をしている貴族の息子だ。父は辺境伯だというが、その実は反現国王派の幹部的存在だそうだ。この人と仲良くすることにはかなり重要な意味がある。
「ジュンレンはまだ学院に残るんだっけ?」
「ああ、まだまだ勉強したいからな。カズユキはこれからどうするんだ?」
「そうだな。とりあえずは、コスモ王国に行くことにするよ」
「ああ、あの国な。俺の出身国だが、本当は悪いことを言いたくないんだが、少々治安が悪いというかきな臭いから気をつけろよ」
「そうなのか。とりあえず、そのことは頭の中に入れて気を付けるわ」
ジュンレンからしてもあの国はきな臭いのか。自分の出身国を普通に言えるってある意味すごいな。
ちょっと、思ってしまった。
「しっかし、カズユキは羨ましいな」
「ん? 何が羨ましいんだ?」
俺は、ジュンレンが言った言葉の意味が分からなかった。
「はぁ~、それ本当に言っているのか。俺が言っているのは2人もかわいい女の子がカズユキの側にいて羨ましいっていうことだ」
ああ、そのことね。
確かに普通の男子からしたら俺のこの状況は羨ましいものだ。何なら、リア充爆発しろという状況だろう。しかし、俺的には歓迎できる状況ではないんだが。
「前にも言ったが、俺には彼女がもういるんだ。あの2人と付き合ったりしようとは全く思わない」
「一夫多妻なんだから、認めてあげればいいのに」
「俺にはそんな多くの女子を養ったり愛情を与えたりすることができる器用な人間じゃないから無理だ」
「器用とかの問題じゃないぞ。大事なのは……そう愛だ」
「ジュンレン、それマジで言ってるのか?」
「ああ、俺は大真面目だぞ」
「……」
ジュンレンは大真面目であると本人は言っているが、顔は完全に笑っていた。面白がっているのが目に見えてわかる状態だった。
「……」
「……」
「……ああ、すまん。面白がってましたよ、俺が悪うございました」
俺が無言の圧力を加えたことでジュンレンは自ら面白がっていたことを自白した。
やっぱり面白がっていたのか。
「あのなあ、こっちは大変なんだぞ」
「何が大変だ。このくそリア充め」
「うっさいわ。俺のことをリア充とかジュンレンは言うがな、お前は堂なんだよ。エリザとはどうなったんだ?」
「おい、今その話を出す。別れましたよ。ついこないだ。傷心中の奴に向かって今お前は一番言ってはならない話を振った。いいか、覚えてろよ」
「そういうこと言うなら、お前がこの話を始めたのがいけないのだろ」
「まさか、俺の話に来るとは思っていなかったんだよ! っていうか、俺が分かれていたこと知らなかったのか?」
「知ってたわ、すまんすまん」
「ぜってえ、許さねえ」
卒業の日だというのに俺は喧嘩みたいなバカなことをしていた。
「カズユキ、もう式典始まるよ」
「いい加減にしなさいよ」
俺とジュンレンのバカみたいな言い争いをしているところにユエとミスティルの2人がやってきた。
「じゃあ、俺は先に式典の会場に言っているわ。俺は卒業生の席じゃないしな。まだまだ学院に残るし」
「ああ、今までありがとな。ジュンレン」
「照れくさいな。そんな面と向かって感謝されるって」
「いいだろ。もしかしたら最後なのかもしれないからな」
「最後かどうかはわからないが、まあまたいずれ会いたいな」
「そうだな」
「カズユキ」
「遅れるよ」
「じゃあ、また」
「ああ、また」
俺はジュンレンとの会話を切り上げて式典の会場に2人とともに向かった。
式典と言ってもすぐに終わる簡単なものだ。優秀な学生には賞が贈られるみたいだが、俺は優秀ではなかったので関係のない話だ。だから俺は早く卒業式が終わってほしかった。
「ええ、皆さんには卒業後も世界を──」
今、学院長のあいさつの時間だ。
どこの世界でも学院長のあいさつというのは長いらしい。この学院の学院長のあいさつはすでに30分経過している。長い……
学院長のあいさつが終わると関係者のあいさつと向こうの世界と同じような進行であった。
早く終われ。
早く終われ。
俺は、ずっと念じていた。
しかし、すぐに終わることはなかった。卒業式は半日以上かけて終わったのだった。
「終わったあああああああああ」
「うるさいよ、カズユキ」
「そうだよ、他の人が冷たい目で見ているのが分からないの?」
俺の叫び声に関して隣にいるユエとミスティルはそれこそ冷たい目をして俺に説教をしてきた。でも、やっぱりこういった式典が終わった後は気分を発散させるのが一番だと思う。だから、発散しただけなのに。どうしてここまで言われなくちゃいけないんだ。
「2人ともひどくない?」
「「ひどくない」」
2人の息はぴったりだった。
この2人と一緒にいること辞めたいな。
これはぜいたくな悩みなのかな?
でも、俺の目的のためならば仕方ないかもしれないな。
うん。
こうして、俺は学院を無事に卒業した。国王への復讐の作戦は1つクリアした。次の段階へと作戦を移行することにした。
これにて学院編は終了です。
学院編はさっさと終わらせることを考えていたのであまり掘り下げていません。今後、追加エピソードを書くかもしれませんが、しばらくは物語を勧めたいと思います。