第35話 彼女の誘い
「はああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ?」
俺の絶叫が響き渡った。
な、何を言っているんだ、この女は。
婚約者になれとはどういうことなんだ。
「いや、そ、その驚かないでほしいのだけど……国王に復讐するには私一人では力不足なの。だから、私に協力をしてほしくて、それでね……」
ミスティルは、説明をしているが言葉は最後の方はごにょごにょとなり顔も赤くなっていた。
「だからといって、婚約者になるのは突飛過ぎない?」
俺は、ミスティルの言い分について途中までなら分かった。復讐するのに自分ひとりの力じゃ何にもならない。その通りだと思う。しかし、そこから何で俺が婚約者になるという話に繋がるんだ。
そこが分からない。
「そ、それは、ね、ね」
ミスティルの言葉はもはや会話とは言えなかった。
ね、ねと言われてもわからんよ。
もっと説明がついた話をしてもらいたい。
「ね、ねっじゃ、分からない」
「……私、一目見た時からあなたのことが好きでしたっ!」
「っ!」
俺は、ミスティルにどうして婚約者になってほしいのか理由を聞いてみたら、その答えは告白だった。
「え、え、えええええええええええええええええええええええええええええええええ!」
俺はその告白の言葉を聞いてとても驚く。
俺は、女子に告白をされたのか? 生まれて二度目の。
いや、二度目というのは贅沢だとか思わないでくれ。俺としては一度されても二度されても驚きに変わりはない。
「そ、その、監視対象として初めて見たとき時から気になっていた。そして、この1年間ずっと監視していて思ったことは、私はあなたのことが好きだということだ。だから、どうか私の婚約者になってほしい」
ミスティルは、目をウルウルさせながら、顔も赤くさせ、体も震えていた。
本人なりの精一杯の告白であったのだろう。
それには勇気があったのだろう。俺を監視対象としてずっと見張っていた。その行為自体は俺にとってはとても嫌なもの不信感あるものであるが、女子がここまで勇気を振り絞って告白をしたとなれば俺からもきちんとした返事をしなくてはいけない。
俺は、少なくともそう思っている。
だから、返事をする。
「ごめん。俺は君の思いには答えられない」
「それは、ミライさんのこと?」
「ああ、そうだ」
「それほどまでしてあの人のことを思っているのね」
「ああ、俺にとっては大事な人なんだ。だから、彼女を裏切るわけにはいかない」
「そう、ならば早く助けないとね」
「そうだな」
「……」
「……」
お互い無言になってしまった。
気まずい。
告白を堂々と断ったのだが、その後の会話でどうすればいいのかわからなかった。未来の話が出てきた。未来は今頃どうなっているのだろうか。ミスティルなら知っているだろうか? でも、もしもだ。俺にとってあまり知りたくないことをここで知ってしまったとしたらどうなるだろう。俺は冷静でいられるのだろうか?
少なくとも冷静でいられる自信は俺にはない。無理だろう。
それこそ国王への復讐心がマックスになる。今にでもあの王国を崩壊させてやろうと企むぐらいだ。そして、崩壊へと行動をとる。絶対に俺はやるだろうと思う。
「ミライさんのことが気になるの?」
俺が、気になっていたことをミスティルが言う。
こいつ、分かってやがる。俺の気になっていることが顔に出ていたのかどうかわからないが、ミスティルはわかっていたようだ。
「知っているのか?」
「ええ、知っているわよ。でも、教えてほしいのであれば私と婚約しなさい」
「そ、それは……」
「気になっているんじゃなかったの? まあ、婚約と言われてもうなずくわけはないよね。わかったわよ。こっちが今回は引いてあげる。いい、ミライさんは今王城のとある塔に幽閉されているわ。食事はしっかり出されているようですし、国王にまだ何もされていないからそのあたりは安心していいはずよ」
「よかった~」
俺は、未来が今のところは身に危険が及んではいないということを知ることができてうれしかった。どうにか、無事でいてほしいと思っていたのでこれ以上ないうれしさだ。でも、いつまでも安全でいられるかどうかはわからない。もしかしたら、あと少しで身に危険が迫ってしまうのかもしれない。
だから、1日でも早く未来を救うために行動をしなくてはいけないと思った。
「で、カズユキ君。私は婚約者になってほしいという話はあきらめたわけではないけど、1回はその話はなかったことにするとしてお願いがあるのだけどいい?」
「お願い?」
「ええ、私に協力してくれる? あの国王を倒すために」
あのくそ国王を倒すことに協力? そんなの答えはすでに決まっている。
「もちろん、いいぜ。協力するしかないじゃないか」
俺は、ミスティルに協力することにした。
だって、俺も同じ目的だから。
「でも、協力って具体的にはどういったことをすればいいんだ?」
「私たちの学院生活はあと1年。学院は2年通えばあとは卒業するのもよしもう1年勉強するのもよしだから、卒業したら私の執事として国政に関与しない?」
国政に関与。
俺が望んでいるものではないか。これは、断る必要がない。
「ああ、いいぜ」
きちんと返事をする
あとは、1年間政治についてきちんと勉強をする。もちろん、もともと持っていた政治に関する知識もフル活用だ。
さあ、くそ国王待っていろよ!
……と、言ってもまだまだ1年あるんだよな。我慢我慢。まだ、復讐心をたたきつける時ではない。