第31話 学院生活
「皆さんとこれから一緒に学んでいくことになりました。カズユキ・タカハラです。どうぞよろしくお願いします」
「同じく皆さんと一緒に勉学に励んでいくことになりましたユエ・アリアダストです。どうか皆様の学友の一人として認めていただけることを願います」
俺とユエは無事に学院に入学し、今入学したことによりクラスに入って挨拶をしているところであった。俺とユエは同じクラスであった。俺達以外に入学した人は、入学制の説明会で顔見知り程度になったが、まあここではクラスはみんな別になったし特に説明する必要もないから思い出すようなことはしない。
そんなこともあり俺達はついに入学をすることができた。
「タカハラ君、アリアダストさん。席はご自由に座ってください」
先生──ハイン先生という女性の先生が俺達に席に着くよう促す。
この教室は、大学の講義をする部屋のように広く横長の机が階段状になっていた。上に行くほど高い。そして、教室の上に座っている生徒を見る。見るからに身分が高そうなやつだ。金髪ロール。本当にこの世に存在する髪型だったんだ、というかそのようなアニメに出てきそうなお嬢様とか悪役令嬢の容姿を持っている人を初めて見た。
俺は、ユエと視線を合わせてお互いこの状況を確認する。
そして、俺達は一番前の誰もいない席に座った。
(「あの席に絶対に近寄らない方がいい」)
(「私もそう思う。絶対あの女に関わらない方がいい」)
俺は、後ろの席をちょこっと見る。高飛車そうな女とその他に付き添っている女が3人いた。あれは、派閥でもあるのだろうか。女子ってどこの世界においても派閥を作るからな。俺みたいな女に縁もない(彼女はいるけど)男には関わるような世界ではないと思う。
もちろん、ユエのことについては触れないでほしい……
「えー、それでは授業を始めます」
俺達が席に座ると授業が始まった。この学校の授業において行われる科目は向こうの世界の科目とは少しばかり異なっている。まず、わかりやすく言えば国語と英語がない。そりゃ、そうだ。言語がもともと世界とは異なるのだから。また、この学院は向こうの世界で言うと高校、大学にあたるようなものだ。なので、算数とか社会とか科学が発達していないので理科とは存在していない。あるのは、商売のやり方、国の歴史、魔法・近接戦闘の授業だ。まあ、魔法の授業とかある時点でまさに異世界だなと感じさせられる。
俺とユエは魔法をほとんど使えることができないが、(まあ、俺も少しは魔法を使うことができるけど)魔法の授業も受けなければならない。入試の時に自分の得意なものについて実践させられたのは、この学院で学ぶ資格があるのか確認するための1つであると後で聞いた。魔法が使えなくても一応は入学ができるが、魔法の授業も必ず参加しなければならないようだ。
そのことを聞いたユエはかなり顔が真っ白になっていたが……まあ、どうにかなるよな?
俺達は、これから学院生活が始まった。1か月、2か月と過ごすうちにクラス内において友達ともいうべき友人関係を築くことができた。俺達のクラスは24人。入学初日に警戒すべき女子とその周りのお付き3人を除くと18人とは仲良くしている。
「カズユキ、今日も行こうぜ」
「寄せよ、リーク。カズユキとあまり仲良くすると彼女に怒られるぞ」
「か、彼女!?」
「いや、リーク。ユエは彼女じゃないからな。それにユエも彼女と呼ばれてうれしがるんじゃない」
「「えー」」
俺と一番仲良くなったのは、リークという元貴族の男だった。アキナではない別の国の貴族であったのだが、父がいわれなき罪で領地を没収され没落し、この国に逃げてきたそうだ。だが、リークはあまり昔のことを言わなかった。カズユキが、リークの過去を知ったのは周りがそんな話をしていたのを聞いたのであって、本人はその話を本当の事だというだけで真偽は不明だった。
まあ、リークは本当にいいやつであるから嘘ではないと思う。むかつくところはイケメンであるということか。髪の色も金色で背も高い。こりゃあ、むかつくしかない。コミュ力も高いし。
俺なんか何一つとってもかなわないじゃないかよ。
あっ! でも、一応俺彼女持ちだからその点では勝っているな。……彼女は捕らわれの身だけど……
話はずれたが、リークとはこんなに俺としては嫉妬すべき存在であるはずなのに仲良くやっていた。入学初日に学院内を案内してくれたのがリークだったというのもあると思う。それにさっきも言ったが、リークはコミュ力が高い。そのおかげなのだろうか。
リークは、毎日俺らとつるんでいる。
ユエももちろんリークとつるんでいる。さらにリークはクラスの中心の1人でもある存在なのでリークと仲のいい奴はほかにもいる。だから、自然とクラスの連中と俺は仲良くなったというわけだ。
「カズユキ、今日も夫婦喧嘩か」
「このリア充、死ね」
「爆発しろっ」
クラスメイトとは仲がいい。……仲がいいはずだ。なぜだろうか、男どもから嫉妬の視線がいたい。言葉も鋭い。
もちろん。俺には彼女がいるからユエとは彼女ではないと前に説明をした。それなのに、その話をした後さらに視線がひどくなった。嫉妬がひどくなった。
これは男子の話だ。
女子からの評価はどうかというと。
「ユエちゃん、かわいいのに彼女にしないなんて」
「カズユキ君、もったいない」
「女の敵ね」
「でも、一途に彼女を思い続けているのはあこがれるわあ」
「そうよねえ」
貶されているのか、褒められているのかわからない状況だった。多分、五分五分だろう。
まあ。こんな感じで俺の学院生活は幕を開けたのだった。