第28話 学院への入り方
ついに、ついに俺たちはたどり着いた。
「ここが、聖アテナ学院か」
「ようやく着いたね、カズユキ」
俺たちが今いるのは、これから通う予定の聖アテナ学院の入口だ。入口はとても大きな門で閉じられていた。中にはどうやって入ればいいのか全く分からないほどの大きさだ。
そもそもこの学院ってどうやれば入学して生徒になれるんだ? 俺はその辺のことに詳しくない。そのあたりのことはユエが知っているだろうと思って聞いてみる。
「入学の仕方? えっ、私、知らないよ」
「……えっ!?」
「えっ!?」
ユエのその言葉に俺は驚いて声を発する。
同じく、ユエも俺が入学の仕方を知らなかったことに驚く。
お互いがお互い向こうなら知っていると思っていたようだ。そもそも俺はこの世界にそこまで詳しくはないということをユエには話したはずだ。俺が、入学の仕方を知っているのか怪しいと思ってほしいものだが、まあ、責任転嫁はできない。事前にしっかりと俺が調べておけばよかっただけの話だ。ここは、ユエを攻めてはいけない。
「これは、もしかしてどうしようもないパターンだな。俺のせいだ」
「そんなことないよ、私も何も知らなかったし」
「いや、俺が悪かった。本当にすまない」
「カズユキは悪くないよ。私が悪いの」
俺とユエは学院の門の前でお互い自分が悪い、相手は悪くないと謝り続けていた。謎のコントのようにその会話が彼是何分だろうか無駄なほど続いた。
そして、この不毛な会話は俺たちの予想にしない終わり方をする。
「あの、いつまでも門の前にいられても困るんですけど」
第三者の登場により俺たちの会話は終わりを告げた。
俺たちの声をかけてきたのは、1人の男であった。服装から見るとこの学園の関係者には思えないようなぼろぼろの服装をしていた。ただ、先ほどの言葉から関係者ではないということが違うということが分かっていた。門のことについて言ったとなるとやはり学園の関係者それも下っ端に入るような部類と想定はできる。きっと学園の雑務をする人なのだろう。俺はそう判断した。
そして、俺と同じことをユエも思い至ったみたいだ。ユエがその男に話しかける。
「あなたは学園関係者なのですね?」
「ええ、そうです。ところであなた方はこの学園に何か用があるのでしょうか?」
「俺たちはこの学園に入学したいのですが、どうすればいいですか?」
俺は男に聞いてみる。
学園関係者であるとなれば入学方法をはじめとした入学の仕方の1つや2つを教えてくれるだろうと思ったからだ。
男は俺たちにやさしく教えてくれた。
「そうだね。この学園では月に1回途中入学生志望者向けの入学試験を行っている。試験の内容は様々なんだが、主に自分の得意なものを披露するのが主流だな。で、その試験に見事合格することができたのならば、入学することができる。次の試験は1週間後にアテナの町にある商業ギルドにおいて受付をしてから学園内において実施することになっている」
月に1回。その試験に合格すればいいということか。
それにしても問題は俺の特技が何かということだ。
「ありがとうございます」
「ありがとうございます」
俺が男に感謝の気持ちを言う。俺の言葉に続いてユエも男に言う。
「……いえいえ、こちらこそどうもありがとう……面白そうな子達だしね」
男はそう言うと、そのまま門の中に入っていってしまった。
俺たちはその様子をなぜだかわからないが、ずっと見ていた。
そして、俺は1つ思ったことがあった。男の最後のぼそっとつぶやいた一言、面白い子達だしねという謎の発言にかなり気になった。しかし、男はもう行ってしまったので、さっきの発言の意図を聞き出すことができない。謎は解決することなく俺はとりあえずユエとともに泊まる予定のホテルに向かうことにした。