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第27話 シスターの占い

 俺はユエとともに旅立った。目指すは学園があるアキナという国だ。アキナの首都キールデンにある学園は民族、身分、貧しいか豊か、性別などなどどんな人でも入学することができるというこの世界においては長画期的な学園だ。そんな学園において行われている学問は魔法学だけではなく多種多様数多くの分野に渡っている。

 そんな学園に入学して俺がやりたいことは政治学だ。もともとの世界においても俺は社会科が得意科目であり興味がある科目で政治学についても独学で学んできていた。しかし、こっちの世界の政治学というのは、やはり向こうの民主主義がかなり発展した政治学とは異なっている。なので、こっちでもしっかり学んで、ゆくゆきはあのくそ国王を倒すために王府に入って中からぶち壊してやると考えた。

 ユエも俺と一緒に入学するようだ。ユエは商学を学びもっと商売をうまくやりたいと俺に語っていた。良い心意気だと思う。


 旅立ってから数日。意外と早くアキナにたどり着いた。途中、検問があったのだが、そこは俺たちが商売をしていたことを証明する証書を前に発行していたのでそれを見せたら一発で町の中に入れてもらえた。通行税も商人であればある程度安くなるみたいだ。


 「ここがアキナ」


 「カズユキはアキナに来るのは初めてなの?」


 「そういうユエはどうなんだ。アキナには来たことがあるのか?」


 「……いや、ないけど」


 じゃあ、なんで俺に対して初めてなのにどや顔で自慢をしてきたのだろうか。解せない。

 俺たちはアキナについてまずはアキナの中心部にある教会に向かった。俺は別にこの世界の宗教の熱心な信徒ではないが、ユエが一応信徒であるので新たな門出の時には教会においてシスターに未来のことを占ってもらうという風習があるのでついて行くことになった。


 「でかい」


 ユエと一緒に向かった教会はとても大きかった。中世ヨーロッパの城とも表現できるし、具体的に向こうの世界において近い建物が何かと言われればサクラダファミリアだと表現するのが正しい。ステンドグラスの窓が教会のあちらこちらにある。教会の中はその窓のおかげで入ってくる日光がとても神秘的であった。


 「きれい」


 ユエも始めてきただけあってこの幻想的な雰囲気にうっとりとしている。俺は、ユエがしばらくうっとりと見てフリーズ状態になっているのを横でしばらく観察していた。いつ、ユエは動くのだろうか。じっとした状態で止まっているのを見ていてすごいと思っていた。

 それからユエが動き出したのは5分後の事であった。つまり5分間ユエは、まったくもってその場から動かなかったのだ。周りのことをしっかりと見てほしい。


 「ご、ごめんなさい」


 ユエは自分が夢中になってみていたことに気づいて俺に謝ってきた。別に俺はその様子を見ていて面白かったから別に悪いことをされたということはまったく考えていなかったんだが、本当のことを言ったら怒られそうなのでユエの謝罪の言葉にうなずいておいた。


 「ところで早く占わなくていいのか?」


 俺は、ユエに本来の目的である占いについてどうするのか聞いてみる。すると、ユエは顔を赤くして言う。


 「すっかりそのことを忘れていた……」


 本来の目的を忘れるぐらいステンドガラスの窓に魅了されてしまっていたみたいだ。ユエは顔を赤くしたのをごまかすためなのか恥ずかしさでこの場にいたくないのか、俺から顔を背けてそのままシスターがいる方へとすたすたと歩きだしてしまった。


 「待ってよ、ユエ!」


 俺は、そんなユエを追いかけるのだった。

 さて、シスターにユエは占ってもらったのだが、結論から言うと、その占いの結果は……


 「不吉」


 「まあ、当たらないことを祈るべきだね」


 シスターから占ってもらった結果は、ユエの身に何か良くないことが起きるというものだった。そのよくないことというのは、具体的にどんなものかまではわからなかったが、シスターさん云わく、ユエの命に関わるような大事ではないということなのでひとまずは一安心だ。だが、よくない事は命以外にもいろいろとある。しばらく、俺はユエの身のためにも守ってあげないとな、と力も全くないくせして内心そんなことを思って見たりしていた。

 でも、守れるときはきちんと守らないと男としては。ただでさえ、俺は1人の女性を守り抜くことができなかったのだから。あの女性を守るために、助けるために俺は新たな一歩を踏み出さなくてはいけない。


 「カズユキ、難しい顔をしてどうしたの?」


 ユエが俺の顔を覗き込むように見てきた。


 「ううん、何でもないよ。ユエは、別に心配しなくても大丈夫だから」


 俺は、大丈夫大丈夫って言う。


 「少しは、私に話してくれてもいいのに……」


 俺が強くユエからの言葉を否定したせいか、ぼそっとユエがそんなことをつぶやいていたが、あまりに重苦しい俺の過去をこれ以上背負わせるわけにはいかない。

 これは、俺の最低限度の意地だ。ユエには悪いけどな。


 「さてと、ユエ。教会には行ったしそろそろ目的地に行くとしますか」


 「そうね。カズユキ。早く学院に向かいましょう」


 俺たちの学院生活の始まりまであと少しとなったのだった。


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