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第26話 新たな仲間

 俺は、ユエにすべてを話した。

 ユエは、俺が話している間は黙って俺の話を聞いてくれていた。黙って聞いているだけであり茶化すこともうなずくこともせずに本当に黙ってただただ俺の話を聞いてくれているだけであった。


 「……というわけなんだ」


 「カズユキ……」


 俺がすべてを話し終えるとユエは泣き出した。

 え、ちょ、っちょっと。どうして急に泣き出したんだ。俺には訳が分からなかった。


 「ユエ、なんで泣き出したんだ?」


 「いや、だって、カズユキがそんなひどい目にあっていたというのに私は、私はもう…ぐすぅ」


 ユエががち泣きをしてしまい、俺はあたふたする。

 必死に泣き止ませようとユエをあやす。


「あ、だから、ユエ、そ、その、なあ、俺にとって、確かに過去というのはとても悲しくとても苦しいものだけど、それはユエが気に病むようなことではないから、だから、な、泣き止んでくれよ」


 俺があたふたさらにしていると、ユエは俺が困っていることに気づいたみたいで泣くのをやめてくれた。


 「ごめん。カズユキ。私、カズユキの過去のことを考えてみたらとても悲しくなってきちゃって、そ、その勝手に涙が出てきちゃって……、それで」


 「なんか、ごめん。俺が過去のことを話したまでにそんな気持ちにさせてしまって」


 俺は、ユエに謝る。

 ユエは、俺に対してそんなことないですよと、謙虚? に俺に対して謝らないで、と言う。


 「それで、カズユキはこれからどうするの?」


 ユエが聞いてくる。


 「そうだね。俺がもともとカード屋を始めたのはアキナにある学院に通うためだ。俺には力がない。魔法と剣術は王国の王宮にいた時に師匠いや、もうあんな人は師匠じゃない。えっと、とある者から教わっていたが、だめだめだった。力がだめなら知恵だと思ってね。学院に通ってくそ国王を倒すすべを探し出そうと思ってね」


 俺は、学院に通う目的について話す。


 「カズユキ、私はカズユキのことが好き。これは私の気持ち。では、カズユキにとって私はそういう相手ではない。そのことはさっきの話を聞いてよくわかったわ。でも、私はカズユキのことをあきらめる気はないの。だから、私も一緒にアキナに向かってもいい?」


 ユエは俺に聞いてきた。一緒についてきていいのかということを。俺は一瞬迷う。俺に例えついてきたとしても俺の気持ちが変わることなどない。ユエを一層悲しませてしまうだけになってしまうはずだ。だから、ここで完全にユエに俺のことを嫌いになってもらいここで一生の別れにしたほうがいいはずだ。

 しかし、結局俺は心を鬼にすることができなかった。誰かを傷つけるということに慣れていなかった。何度もこの世界にきてあのくそ国王に騙されて悪に染まる、悪いことをしてやると粋がっていたが結局は何もできなかった。俺は結局クラス委員長みたくいいことをしないといけない人間のようだ。そんな自分がなさげないが、一方で自分がまだ変容していないことに安心している部分もあった。

 ユエをどうするのか。

 俺は悩んだが、決めた。


 「ユエ、俺についていってもつらいことしかないぞ」


 「わかってます。でも、それでも私はカズユキの側にずっといたいの。隙あらば彼女にはなりたいけど、今のカズユキの様子を見ているとさすがにそれはできそうにないから、まあ、一緒にいることで我慢する。それでいいよね」


 「ああ」


 俺はユエの言葉を聞いてなぜだかわからないが安心した。

  しかし、まだ気になっていることがある。それは今になって思ったことでありとてもどうでもいいようなことであるが、まあ、俺も商売をした人間としての感想と言うかそのことで気になったことがある。


 「ユエさ。俺についていくとなるとお店の方はどうするの?」


 そう、ユエは俺の商売についてまねて成功をしている。ユエのお店の方もかなり儲かっているのだ。そのお店の店長であるユエは当然そのお店について今後どうするのか考えているはずだ。お店を軽々しく話すようなことはしないと思う。では、どうやって今後も続けていくのかそのことについて一応聞いてみたいと思った。


 「あっ、忘れてた」


 「おいっ」


 ユエは自分の店のことをすっかり忘れていたようだ。それでいいのか。


 「でも、まあ。ユキナがどうにかしてくれると思うから手紙だけ置いていくことにするよ」


 ユキナ─ユエと一緒にお店を開いた人であり俺も多少なりの面識はあった。年齢は18歳。俺たちよりも若干うえでありユエにとっては幼馴染のお姉さんともいうべき存在だそうだ。家も近かったのでよく一緒にいてそれでユエが俺の影響を受けてカードゲームをするというわがままに付き合ってくれたそうだ。そんな話を聞くとよくユエのわがままについあっていられるよなと思う。しかし、彼女と面識があるのでわかることは、彼女はとても良い人だ。すごく良い人。確かにあの人であればユエの今度のわがままもしっかり聞いてくれるはずだ。


 「置手紙でいいのか?」


 俺がユエの言葉に対して思うことを言う。せっかく良い人のユキナさんなんだから、置手紙ではなくきちんと事情を語れば許してくれるように思えるんだが、ユエはどうして置手紙で終わらせようとするんだ。


 「ええ、いい」


 「どうして?」


 「それは……ユキナにからかわれるから(ぼそっ)」


 「えっ!?」


 「私がカズユキについていくなんて面と向かって言ったら絶対にからかわれるよ。だから、嫌なの」


 「ふははははは」


 俺はユエのその言葉を聞いて笑ってしまった。まあ、確かにそれはそうだな。ユキナにからかわれるよな。男と一緒に旅をするとか言い出したら。

 ここはしっかりとユエの気持ちも理解してあげるか。


 「わかった。ユエ、あと半刻で出発をする。しっかりとそれまでに準備をして俺の家の前にきてくれ」


 「わかりました」


 ユエはそう言うと、足早に駆けていった。

 半刻と言ったがそんなに時間もかからずにユエは来たので俺たちは真夜中まだ日が出ていない状況の中で出発したのだった。


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