第25話 過去の告白
俺はユエを追いかけた。
追いかけるつもりなど最初はなかったのだが、なぜだか俺はユエを追いかけて走り出してしまった。俺がユエーを追いかけ始めたのはユエが怒って出て行ってから少し時間が立っていたので、俺が何も考えずに追いかけたところで完全に見失っていた。
「ユエー!」
俺はユエの名前を呼んでみるも返事はなかった。そりゃあ、当たり前だ。
「くそ。どこに行ったんだ」
俺は、そもそも何で追いかけているんだ。自分でも勝手に体が動いてしまって理解などしていなかった。でも、どうしてか走らないといけない気がした。
「ユエー!」
もう一度名前を呼びかける。しかし、返事はなかった。このあたりにはいないということか。
俺は無我夢中になって走っていたためまわりをしっかりと確認していなかった。今、どこにいるのだろうか。
周りを見る。
家からだいぶ離れた場所であった。始めてくる場所であった。
こんな場所には来たことがなかったなあ。
俺はそんな感想を持った。こんなきれいな場所があったんだ。
俺がいたのは森の中であった。薄暗い森の中に月がきれいに輝いているため月明かりがきれいであった。それが付きの下にあった湖をとても幻想的に表現している。
俺は湖をしばらく見つめていた。何かに奪われたかのような幻想的に雰囲気。そんな芸術的なものを見せつけられていた。
「そういえば……」
そういえば、俺はこっちに来てからただひたすらに追い詰められていた。何かやるにしてもあのくそ国王に囚われている未来を救わなくてはいけない。そんな焦燥に駆られていた。ゆっくりしている日など一日もなかったのではないか。あのカードゲームを作ったときも内心では楽しんでいることなどしていなかった。ただ、金を集める。金を手に入れることしか考えていなかった。それ以外のことなど一切考えていなかった。何で、こんなことをやろうと思ったのか。今更に思う。俺が、カードゲームが好きだったから無意識のうちに自分の好きなことをやっていたのだろうか。
まあ、どうでもいい。
俺はやっぱり穏やかな気持ちになってはいけない。俺が落ち着けるのは未来を救ってからの話だ。健も救わなくてはいけない。2人を救わない限り俺に平安は訪れない。
俺が、難しい顔をして湖の方を見ていると湖の際に動く影が見えた。形的には人であるのは間違いない。そこに誰かがいるようだ。
俺は、湖の方に近づいてみる。
「おい、誰かいるの─」
声をかけようとした途中でやめた。
俺は見てはいけないものを見てしまった。
なので、岩の陰に隠れる。
俺が見たものは何だったのか?
それは、裸のユエであった。
水浴びをしようとしているのだろうか。ユエは裸であった。ユエの大事な場所まで見てしまった。あとで、このことがユエにばれれば怒られてしまうだろう。
いや、もうユエとは会う機会はないから見て損はない……いやいや、俺は一体何を考えているんだ。最悪だろう。それはさすがに。
俺は理性を抑える。
岩陰から離れて家に戻ろうとする。しかし、その時。
ザクッ
俺は、足元にあった意外と大きかった木の枝を盛大に踏んでしまった。その結果、かなり大きな音が静かな湖のほとりに響き渡った。
「だ、誰!?」
や、やばい。
ユエに誰かがいるということを気づかせてしまった。ユエはこっちに近づいてくる。もちろん、胸と下半身のあの部分を両手で抑えて見られないようにしていた。
俺は、ユエに見つからないようにゆっくりとユエの様子を確認しながら撤退をしていく。しかし、俺はユエに気を付けすぎていて自分の周りの警戒を怠っていた。
ズル
俺は足元にあった、濡れていてとても滑りやすくなっていた石に足を取られ滑ってしまう。滑った後思いっきりお尻を地面にぶつける。
「痛いっ」
俺は想像以上の痛みについ声を出してしまう。
そして、俺の叫び声というか痛みで発した声によって完全にユエにバレることになったのだ。
「カズユキ?」
いつの間にか目の前にはユエがいた。
もちろん、服は着ている。どうやらさっき俺が石によって転んでユエから目を離していた隙に着替えを手っ取り早く終わらせていたみたいだ。
まあ、裸で俺の目の前に立たれてしまえば目のやりどころに困るのでそのことに比べれば悪いことはない。しかし、裸を見たことはおそらくはバレているだろうな。
ユエは俺を怒るだろうか。
「あ、あのお、ユエさん。これはですね」
俺は適当に言い訳をしようとあれこれしゃべりだす。完全に怪しい人の行動のパターンだ。ユエが俺をジト目で見てくる。
うっ。
その目を見て俺は焦る。さらに焦る。
「カズユキ。さっきはごめんなさい」
「えっ!?」
俺はユエに突然謝られた。なんで?
「ユエは別に悪いことなど何もしてないじゃないか」
「いえ、私はカズユキの事情も知らないのに身勝手なことをしたからよ。告白をして無理やるカズユキの心がつらいということを知っていたのにさらに苦しめていた。私、なんとなく思っていたの。カズユキは何かをなすために自分を殺しているって。それがあの告白をした時の様子で確信をした。あなたを試すようなことをして本当にごめんなさい」
ユエは俺に対して謝ってきた。本当に申し訳なさそうに俺に対して謝ってきた。しかし、ユエが謝る必要などない。俺がすべて追い詰められていて他の人の気持ちをしっかりと配慮していればユエは傷つけなかった。だから、すべては俺の心の弱さが生んだことなんだ。だから、謝らないでくれ。
「いや、俺が悪かった。俺が、追い詰められていて周りをしっかりと見ることができていなかった。それだけの話なんだ」
「何に追い詰められているのかは、聞かないわ。それは聞いてほしくはないのでしょう。私はあなたのことが好き。それは私が勝手に思っている感情であってあなたに迷惑をかけるつもりはないわ。だから、できることならばカズユキの心にゆとりができることを私は祈っているわ」
「ユ、ユエ……」
俺はユエの優しさにどこか救われたような気がした。それと同時にユエになら話しても大丈夫ではないかと思った。それに俺はあのくそ国王に対して反旗を翻そうとしているのだ。1人では何もできない気がしている。仲間を増やさないと。ユエなら俺に見方をしてくれるだろうか。でも、ユエもコスモ王国の国民。そんな反旗を翻すなんていう国家反逆の罪を犯すことができるのか。普通ならばできない。でも、俺は聞いてみたい。どうなのか。俺のすべてをさらけ出してみようと思う。
「ユエ、実は話したいことがあるんだ」
「カズユキ?」
俺は、ユエに自分が別の世界から来て人間であり、国王に騙され、彼女を奪われたことなど今までの過程をすべて話したのだった。