第21話 商売始めました
「いらっしゃーい、ここは遊戯屋だよー」
「やあ、坊や。今日もやっていくかい?」
商会を訪れてから3か月。俺達は店を構えていた。もちろん、商会の方には今までなかったジャンルのお店を出すことを伝えておき競争相手がいないなら大丈夫だとアドバイスされたので問題はなかった。俺達は遊戯屋という名のお店を出店した。さて、このお店では何を売っているのかというと……
「おじちゃん。今日もバトルしよっ」
「トランプしよ」
俺が考え付いたのはあやとり以外にカードゲームと言われているゲームをはやらせることができるのではないかということだ。ためしに商会に言った翌日に俺がもともとの世界では待っていた某カードゲームの設定をマネしながら特製のカードゲームを作ってみた。あと、トランプも作ってみた。カードゲームを作る際に紙を探すのに手がかかった。この世界において紙は大量生産がそれほどできていないみたいなのでまず高かった。それとカードゲームをするとなると多少固い台紙のようなものにする必要があった。紙が見つかったのが良かったがペラペラではカードゲームができない。トランプもしかりだ。そこで、みずから紙を作ることとにした。紙を作ると言っても普通に紙作りはこちらの世界のプロの人に任せた。俺が作ったのは、できた紙をうまく何枚も何枚も重ねることによって丈夫なものにしたことだ。もちろん、俺一人ではなく盗賊団の奴らにもやらせた。俺一人でやったら果てしない。時間が足りない。俺には悠長にしている時間がないからな。
そんなわけで1か月でその作業をすべて終えた。あとは、トランプやらカードゲームを作り、お店に並べた。すると、最初は何だろうと警戒していた子どもたちであったが、俺が盗賊に実際にやらせることによって大変興味を持ってもらいそのまま口コミのように多くの子どもたちの間に話が回った。
すると、口コミの力はものすごかった。短期間の間にお店に来る人が増えるわ増えるわ。結果として、今かなり儲かっている。これで、だいぶ資金を得ることができた。
俺達がここまで成功すると妬むものも出てきた。また、マネをする者も出てきた。そこで、俺は商会にこのことについて説明した。商会側からは十分に警戒するとともに新たにギルドの新設を許可された。ここで、俺は代表をハイールに任せることにした。また、ハイール以外の下っ端たちにもノウハウを教えるために頑張ってもらうことにした。いつ、俺が抜けてもいいようにだ。いつまでもここにいるわけにはいかないからな。
商会の方に真似をする者がいるという話をしたが、今日はそいつをここに連れて来いと俺は頼んでおいた。素直に来るやつがいるのかわからないが、俺は一応頼んでおいた。
「カズユキー。来たぞ」
俺は呼ばれたので店の外に出る。真似をする奴がどうやら来たようだ。店の外に出てみると商会の人に連れてこられた人は1人だけだった。噂によるともっといるはずだが、素直にここまで来たのは1人だけみたいだ。その一人は女だった。表情は暗く、悪いことをしてしまってこれから何をされるんだろうかという心配そうな雰囲気をいかにも醸し出していた。
俺は、商会の人にお礼を言い、たった1人で来た女を店の奥にある事務室に連れて行く。事務室は机といすがあるだけの簡素な作りになっている。そんないろいろと物を置く必要というものを俺は見出さなかったからだ。まあ、俺がいなくなった後はハイールに任せるつもりだから、俺がいる間だけはきれいにしておこうと思う。さて、その女を俺は椅子に座らせる。女はビクビクしている。俺はその女について観察をしてみる。すると、今まで気づかなかったが、年の方は俺と同じぐらいで結構かわいかった。金髪で、目は青く、ゴスロリが似合いそうな容姿だ。服装は結構普通の者で白いワンピースみたいなものを着ていた。最初遠目から見た時に言い年下奴がワンピースかよとか思ったが、俺と同じくらいの年ならワンピースを着ていてもおかしくはない。
俺は、女に声をかける。
「で、俺の場所がやっているものをマネしていたのは君かね」
「は、はいぃ」
ものすごく声が裏返っていた。高かった。そして、ものすごい動揺している。完全に俺に起こられると思っているのだろう。しかし、俺が今日呼んだのは怒るためではなかった。
「そんな緊張しなくていいよ。見たところ君は俺と同じくらいの年齢っぽいしね。年は?」
「17です」
「俺と同じか」
「そ、そうなんですか?」
「ああ、さて、話はそれてしまったね。俺が今日君を呼んだのは俺のところが作っているカードのことなんだけど。君が真似したのはどれだね」
「モンスターが書いてあるカードゲームです」
「そうか。君は1人でやったのかい? それとも仲間がいるんかい?」
「ええ、私と同年代の子たちで作りました」
「そうか……で、話なんだが実は俺的にはカードゲームをマネしてくれるのは構わないと思っている」
「えっ!?」
俺が言った言葉の意味を女は理解できないという表情をしていた。
「あくまでも真似をするだけだ。完全にコピーをするのは禁止だ。俺達が作っているカードゲームをモチーフに新たにカードゲームを作ることを許すということだ。ルールを変えたり、モンスターとかカードを変えたりすることを許すって話。ああ、トランプについてはマネしちゃダメだよ。それさえ守ってくれるならこっちから公認という形で君のとこのカードゲームを認めるけどどう?」
「……本当にいいのですか?」
「ああ、俺としてもカードゲームがもっと広まってくれるならいいと思う。それに、君は正直に俺に話をしてくれた。正直者には得を与えないとね。ああ、俺達と一緒にやりたくなったら言ってくれてもいいよ。カードの種類をもっと増やしたいし、協力という形をとってもいい。そのあたりはどうする?」
「ありがたい話だけど断ります。でも、まったく違うカードならいいのですね」
「ああ。いいぜ。カードゲームの形式が違えばお互いのカードのどっちかに人がはまってくれるだろうし、客層も被ることはあるとしても困惑はしないだろうね」
「わかりました。私達だけのカードゲームを作りたいと思います。ああ、そうですね。自己紹介をしておきます。私の名前はユエ。アリア協会のリーダーです」
「俺の名前はカズユキだ。よろしく、ユエ」
こうしてお互い利益を得るように交渉を成立させた。
後日、ユエのところの出したカードゲームは女子向けということもあり俺達と客層がかぶらなく商売として成立していた。なお、俺のところにこないで無断でカードを作っていた者たちには商会の方から十分重い罰が与えられたそうだ。
俺は、このカードゲームの成功により一気にお金持ちになった。もちろん、ハイールたちにも売り上げを分け与えている。が、それでも十分程のお金を手に入れた。このお金さえあればいいだろう。そろそろ次の計画を移す時期なのかもしれない。
俺はこの後、どうするべきなのかそろそろ考え出すことにしたのだった。




