第15話 アキナへ
久しぶりの更新です。1話あたりの文字数がかなり減っています。
俺は城の外に放りだされた。
そして、現在何もない。
あるのは来ていた服だけ。
あの国王は俺に対して本当に城の外に追いやっただけだった。
俺は憎い城を見る。
城は相変わらず大きかった。召喚されたときは城が大きくて子供の様に興奮した気もしないが今となってはどうでもいい。むしろここが憎悪の対象、憎悪のシンボルに変わってしまった。
ああ、こんな城早く落城させたい。
崩れ壊したい、燃やしたい。
ああ、壊れてくれないかな。
俺はそんな復讐の心を持って城から離れていくのであった──
◇◇◇
さて、城から離れたのはいいが、俺には本当にさっきから言っているように何もない。すべてを失ったからだ。
それにこっちの世界に来てからお金がまずないから寝床もないというのだ。
ああ、これは野宿かな。
現代人の俺としては野宿というのは本当はしたくない。それにここは異世界だ。治安がいいはずがない。よく、元の世界で読んでいたライトノベルにおいて異世界転生の定番としてあったのが勇者となった主人公が魔王を倒す前に強くなるためや民衆から支持されるために王都の近くの森や村で暴れまわっていた盗賊を倒すということから始まることが多い。
つまりは、ここの世界においても盗賊がいる可能性が無きにしも非ずだ。
今、城から出た俺は王都を歩き回っている。城の外に出たことがなかったのでこの王都が意外と反映していることに驚いた。あんな国王が治めている国だというのにどうしてこんなにも栄えているのだろうか。独裁者というタイプなのか。だったら、絶対に民衆は不満を感じているはずだ。しかし、王都を歩く人々を見る限りみんな笑っているし、市場で売り買いも盛んにされている。統制が民衆にまでされているような様子はない。
つまりは、やはり普段は人当たりが良いように見せて裏ではあのような性格で政治を行っているということか。
俺は、もうこんな国にはいたくない。
この王都からもすぐに離れよう。
行くあてはない。
でも、王城内の図書館で本でこの世界の情勢を確認した。この世界にどんな国があるのかということも確認した。
そして、その中でも注目した国があった。それがアキナ市民国だ。俺が確認した国の中でもこのコスモ王国から比較的距離が近くそして、民主的な国であったということだ。もう1つ民主的な国としてヴァルナ共和国があったが、6年前に民主化したとあったのできっと現在は政治的に不安定なはずだ。そんな危険な国にわざわざいく必要性を感じない。だったら、アキナに行くのが最善の策だと今は思う。
だから、アキナに向かおう。
アキナへの道については町の人に聞いて見ればわかるはずだ。
「すみませーん、アキナへはどうやって行けばいいのですか?」
とりあえず、近くを歩いていた男の人にアキナへの道を聞いた。
「そうだな。アキナはこの大通りをまっすぐ行って、王都の突き当たりまで行ったら、2つの道に分かれるんだが、それを右の方に行けば着くよ」
親切に教えてもらったのでよかった。
「ありがとうございます」
「ええ、いいよ。それにしてもどうしてアキナに向かうんかね?」
「ちょっと、俺にはなさなければならないことがあるんです。そのためにアキナに行くんです」
「そうかい。お兄さんが何をしたいのかわからないが、それがうまくいくことを心から祈っているよ」
男の人はかなりフレンドリーであった。ちょっとした雑談もしてくれた。雑談を少々した後、俺はそろそろ向かいますのでと言って、話を切り上げた。
そして、俺はその男の人に教えられた道筋でアキナへと向かったのであった──
◇◇◇
「アキナ、か」
和之が見えなくなってから、和之に親切に道案内した男はそうつぶやいた。
「あいつの中には復讐の精神を感じ取ることができた。おそらくはあの国王に何かされたのだろう……不憫なことに」
男はそれだけ言うと、和之と同じ方向に向かって歩き始めたのであった。