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第14話 そして、僕は俺となる

 僕はこの時すべてを諦めた。

 もうダメだと思った。

 しかし、ここでもう1人大事な人の存在を忘れていた。それが……


 「ちょっと、待った!」


 大きな声がした。女性の声だ。その声は聞き覚えがある声だった。そう、僕の彼女であり一緒にこの世界へと転移してきた未来だった。


 「未来来るんじゃない!」


 僕は叫ぶ。

 しかし、未来は僕の静止する話を聞かずにこっちに近づいてきた。

 来るな。僕は何度も何度もそう言うが、未来は一切僕の話を聞こうとはしなかった。どんどんと大きく足を地面に叩きつけるかのように歩いてくる。顔は今までで一番厳しくとても怖かった。未来にもこんな表情ができてしまうほど国王の行った行為は許せないものだったのだ。


 「あなたは一体なんてことをしてくれたの! あなたみたいな人が国王だなんて私は認めないわよ!」


 迫力があった。

 怒鳴った。あの未来がどなった。

 そのことが僕の中でとても意外であり本当に驚いたことだった。未来をここまでにさせた国王は本当に許すことができない存在だ。

 僕は何としても国王を一発殴りたかった。

 どうにかして僕を抑え込んでいるこの2人の衛士をどかしたいがどうにかできないか。

 僕は僕なりにどうにかしようと考えていた。

 ただ、事態は再び動き出す。そう悪い方に。

 国王は未来に近づいてきた。

 未来は怒って睨みつけているものの国王の方はそれをまったく介さずに近づいてきていた。国王が近づいてくる。何か圧力を感じる。そして、嫌な予感がする。

 未来もそれを察したのか一歩また一歩と後ずさりをしていく。下がっていく。


 「どうした、女。先ほどまでの威勢のいい言葉はどこへ行った。我を国王として認めない。そう勇ましく言った言葉何処へ行ったのだ!」


 「っ!」


 未来は完全に国王の気迫に負けていた。


 「どうしたあ! そんなもんか」


 国王はどんどんと未来に近づいてきている。

 そして、国王と未来の距離はほぼ0というところまできた。

 未来はその迫力に完全におびえてしまい、足ががたがたぶるぶると震えていた。足を動かすことができないようだ。

 国王が未来に手をかけようとする。

 僕は怒鳴る。


 「ふっざけんな!」


 しかし、国王は僕の言葉を一切聞くことなく未来の顎に手をかけてくいっと顔を持ち上げる。


 「おい、女。なかなかいいな。お前我の女になれ」


 「そんなことできるわけないでしょ!」


 未来がそう言ってにらみつける。

 国王がその言葉を聞いて不気味な笑みを漏らす。


 「そうか、お前さては、あの捕まってほざいているくそうるさい奴の女だな」


 「そうよ。だから、私はあんたなんかの女にならないわ」


 未来は当たり前でしょ、ふざけないでよと怒る。

 しかし、国王はそんなのはどうでもいいようだ。


 「いいや、我は国王ぞ。我の命令は絶対。我の命に逆らうことなど許さない。そうじゃな。我の女になるというのであればあの男と勇者の命は助けてやろう」


 「えっ!?」


 その言葉が未来に衝撃を与えた。

 僕達の命を救いたいのであれば国王の女にならなくてはならない。

 それは、未来にとって大変重い選択になるのだった。


 「未来そんな話を聞くんじゃない。僕達はどうなってもいい。未来だけは逃げるんだ」


 僕は悩んでいる未来に向かって叫ぶ。


 「おいっ」


 「黙れっ!」


 僕が叫ぶと取り押さえている2人の衛士が僕に対して黙れと暴力を振るってくる。かなり痛い。おそらく僕の顔には今あざができているか最悪血が流れている状態なのだろう。

 しかし、今は僕のことなんてどうでもいい。未来が僕の彼女のピンチだ。何としても未来には何も迷惑をかけることなく逃げてもらいたい。僕なんかどうでもいい。自分さえ助かってもらえばいい。

 だから、国王のそんな要求を無視するんだ。

 僕はそう思っていた。

 未来は悩んでいるようで顔を下に向けている。確かに僕がもしその立場であったらかなり悩む。でも、僕のことはいいんだ。僕にとっては未来が無事であるというのならば何も文句はない。

 だから、逃げてくれ。


 「わ、わかりました。私が従えばいいのですね」


 未来は僕が望んでいた答えとはまったく反対のことを言った。唇をかなり強くかみしめている。声が震えていた。その答えは不本意であったが従うことしかできない。そういった追い詰められた状況というのを感じ取ることができた。


 「おいっ! 未来、やめろ! そんなことを言ってもこいつが約束を守る確証はないのだぞ!」


 僕は怒鳴りつける。


 「ごめんね……でも、これしか方法がないの」


 未来は泣いていた。

 もうこれしか方法がないのだと何回も僕に対していた。


 「じゃあ、我妻よ。行くとするか」


 国王はそのまま未来を連れて行こうとする。

 僕はそれをさせないように怒鳴りつける。


 「ふざっけんなああああああああああああああああああああああ」


 「……うるさいぞ。お前のようなごみクズは本来殺したいところだが、生憎この女の覚悟に免じて命だけは取らないでおこう。おい、お前らこいつを城の外に放りだしておけ」


 僕はその言葉を聞いて腹がさらに立つ。


 「いい加減にしろよおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 国王は僕の方を向くことはなかった。

 未来は最後に泣きながら僕に対して小さくでも、確かにこう言った。


 「さよなら、カズ」


 「くそおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお」


 僕は何もできないのか。

 僕は無力だ。僕は無力だ。

 健はこれから国王に奴隷のように戦わせ続けられるだろう。

 僕は無力だ。

 みんなが僕が弱いせいでこんなことに。僕がもっと強ければ。強かったらよかったのに。

 

 僕が、僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が僕が、が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が俺が───


 強くなりたい、強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい強くなりたい

 強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ強クナリタイ──


 そうだ。すべてはが弱いのがいけないんだ。もっと強く強く強くならないといけない。

 俺は両方を衛士に押さえつけられてそのまま運ばれていた。城の外まで衛士に運ばれていた。

 

 「ふひひひひ」


 「おい、こいつ大丈夫か」


 「まあ、俺もこいつと同じ立場になれば壊れるだろうから同情はできるがな」


 俺はもうこいつらの話などどうでもよかった。

 ああ、復讐だ。

 もっと強くなる。俺が弱かったのがすべての原因だ。

 剣技も強くなる。

 魔法も強くなる。

 そして、俺にとってあの国王をどん底までに陥れてやる。この国王がいるこんな国をぶっ壊してやる。そのためには政治力も必要だ。

 この国を武力と政治力でぶっ壊してやる。

 変えてやる。


 俺は城の外に捨てられた。

 門の外に1人放たれた。城の外なんかに出たことはない。

 でも、必死に生きていくしかない。あの国王は俺に何も渡すことなどしなかった。一文無しで始まる。俺の本当・・の意味での異世界生活、そして復讐の物語が始まったのだった──

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