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第13話 倒れた勇者

 これよりこの作品の方向性として更新回数を保つために1話あたりの文字数が少なくなるかもしれません。今回はそのため短くなっています。最低2000文字のラインを下回ることがあることをご了承ください。

 僕は国王に叫びながら近づいて行った。


 「ふっざけんな!」


 僕の怒りは頂点に達していた。正常な判断なんてできないほどにだ。だから、国王に近づいた瞬間に近くにいた者によって簡単に捕まってしまった。

 よく見ると2人は衛士だった。衛士は僕に文句を言う。


 「貴様! 陛下に何をしようとした」


 「陛下、この者に処罰を!」


 「はーなーせー! こいつをこいつを僕は殺すんだ!」


 僕は国王をにらみつける。

 両手を思いっきり国王直属の衛士によって押さえつけられているが、そんなこと関係ない。思いっきり国王をにらんだし、国王に今にでも一発食らわせてやろうとあがいている。

 足をバタバタと振り、手を思いっきり前に出そうとするものの周りにいる衛士が思った以上に強くて前に出ることすら許されない。むしろ一歩また一歩と後ろの方へと後退させられている。

 一歩また一歩と後退させられるのを何としてもあがく。


 「くそがあああああああああああ」


 しかし、叫ぶもどんどんと後退させられていく。

 そこに僕が狙っていた国王が自ら僕の方に近づいてきた。


 「うるさいぞ。雑魚ざこが。貴様はどうしてこんな状況になったかわかるか」


 健がどうして倒れているのか。僕はその現場を見ていないのでわからない。僕は首を横に振る。

 国王はついに自身の野望について話す。


 「お前はちょこまかと図書館に入ってこの世界の情勢について調べ上げていただろ。この世界には魔王がいない。そもそも勇者召喚するような事態でもないということを」


 「そ、それは……」


 口を濁す。なぜならば確かに僕はそのことを調べ上げた。この国王が何かをたくらんでいたと思い一応の警告として健にも伝えておいた。健にだけ伝えたはずだ。


 「そのことについて我が知らないわけないだろ。この王城は我の居城。すなわちここで秘密を隠すことなど無理だということだ。音声だけは拾うように魔法を行使しているからな」


 「っ! じゃあ、まさかっ!」


 どうやら盗聴されていたようだ。僕の考えはすでにバレていたということか。


 「ああ、そのまさかだ。我はお前らが危険だと思い排除することを決めた。それだけの話だ。我がどうして勇者召喚をしたのか。その理由は勇者というのは異世界から召喚されてくる特別な才能の持ち主だ。その才能、力をもってすれば世界を征服することなど容易であるだろう。そう、我の野望はこの世界をすべて我のものにすることだっ! だから、それにはお前らは危険すぎる。いや、勇者にはまだ役目がある。でも、お前にはすでに用はない。だから、ここで殺ることにするか」


 「ちっ」


 どうやら僕はここで殺されるようだ。何もしていない。健をひどい目に合わせてしまった。僕が調べなければこんな目に合わなくて済んだというのになんてことをしてしまったんだ。すべては僕がいけない。ああ、どうすればいいんだ。

 どうすることもできない。これで終わり。後悔はたくさんあるけど仕方ない。

 僕の目の前に見えたのは国王がおそらく健を斬っただろう血が付いた剣を持ったところだ。今から僕も健と同じようにあの剣で殺されるのか。

 走馬灯が流れる。

 ああ、死ぬ瞬間というのはこういうものなんだ。

 奇跡は起きない。 

 僕はこの時すべてを諦めたのだった──

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