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第10話 非日常の話を伝える

 更新遅れました。また、話の長さも今回は短くなっています。

 異世界に飛ばされてから1か月が経過した。

 1か月の間に特に何か特別な出来事が起きたわけではなかった。あえて言うと、やはり異世界に召喚されたという出来事が大きすぎたせいでそれ以外の出来事に何も驚かなくなってしまったというのが悪いのかもしれない。

 僕は、この1か月の間ずっとミリー教官にしごかれて修行を続けてきた。

 ミリー教官は最初の内は、呆れていたほどの俺の腕は今では驚くほど成長している。


 「まさか、ここまで成長するなんて……カズユキは天才ね」


 ミリー教官が顔をなぜか真っ赤にしながらこのような言葉を言ったことを今でも覚えている。これが3日前の出来事だ。

 天才。

 ミリー教官をして僕のことをこうまで呼んでくれたのだ。僕はとてもうれしい。ここまで力をつけることができたという僕の自信にもなる。

 ミリー教官に出会えてよかった。なんて、ことを言うと物語の最終回みたいないいようだし、ミリー教官が死ぬみたいな言い方にもなるし、果ては僕が死ぬのだろうか。

 でも、感謝の言葉だけは述べておきたいと思う。


 「ありがとうございます、ミリー教官」


 「そ、そんなことないよ、す、すべてはカズユキ自身の能力によるものだよ」


 ミリー教官はこの日ずっと顔が真っ赤であった。りんごに匹敵するほどの赤色であった。顔から熱が発生していると見間違えるほどの赤色であった。

 僕は心配してミリー教官の額に手を当てた。すると、さらにミリー教官の顔色が真っ赤になった。


 「ああ、さらに熱くなりました。大丈夫ですか?」


 そのままミリー教官は倒れた。

 これが3日前のすべてである。

 どうしてミリー教官が倒れたのかわからないが、僕はミリー教官がとても心配であった。

 あの後、3日間ミリー教官とは会っていない。教官の部屋に行ってみたがいつもドアをノックしても返事はなかったし、部屋の中は真っ暗であった。といっても、部屋の中をドアを少しだけ開けてみただけなので本当にいなかったかどうかはわからない。女性の部屋の中を勝手に見ることに気が引けたし、中に勝手に入ることはさらに気が引けた。

 ともかく、僕はミリー教官のことが心配だったので早くミリー教官にあって無事を確認したい。あの人ならば大丈夫だと思うがそれでも心配なのだ。

 別にやましい気持ちなどない。僕には美月という彼女がいるからだ。僕がメリー教官のことを心配しているのは、お世話になった恩というものをもっと返したいという気持ちからくるものだ。


 「和之ー!」


 「ん? どうかしたのか健」


 「国王が大事な話があるからって全員呼べって言っているからちょっと来てくれないか?」


 「そうなのか、大事な用って一体何なんだ?」


 「さあ、俺にもわからない。大方魔王退治についての話だろ。だって、俺は勇者だから」


 勇者という言葉にまだ慣れていないのか照れくさそうに言う健だった。しかしそれ以上に俺が反応したのは、魔王退治という言葉だった。魔王退治。この言葉を聞いて内心ドキッとする。あの図書館の本を信じるとするとこの世界に魔王という存在はいないはずだ。あの本が書かれたのはそう昔のことではなかった。時代が古すぎたらそのあとに登場したという可能性を考えなければならないがその本は今から2年前の本であった。国王の話によると魔王が登場したのは数十年前と言っていた。明らかに時代が合わない。魔王という人類に大きな悪影響を与えるような存在が本に載っていない。そんなこと明らかにありえないと言える。

 あの国王は嘘をついている。


 「どうした和之、そんな暗い顔をして」


 「ああ、すまんすまん。ちょっと考え事をしていてね」


 僕がいろいろとあの時の出来事について考えていたところ、その不安な表情が顔に出ていたようだ。この話は結局誰にもしていない。


 「そうか、何か不安なことがあったら相談しろよ」


 健はとても優しい。

 僕がいつも何か抱えているときに無理に聞こうとはせずにこっちから言うよう自主性を重んじている。無理やり聞き出してその悩みを解決する。そう言った方法も確かにいいだろう。しかし、無理やりでも聞かれたくはない悩みだとそれはかえっておもりになる。だから、健はそれがよくわかっていると思う。

 本当にいい友達を親友を持ったと思う。僕にはもったいないほどの存在だ。

 だからこそ、僕もそろそろ本当のことを言わなくてはいけないと思う。

 ここ最近ずっと黙っていたこと。

 あの国王が嘘をついていること。嘘をついているとなるときっと、何かをたくらんでいるに違いない。違いないと断定的なのは昔読んだラノベにこのような話があったからだ。

 嘘をついて勇者を謀略で追い詰めた国王は勇者のことを慕っているヒロインを寝取ってしまうというストーリーであった。健のことを慕っているヒロインというのは今のところいないのでその心配はないが県が何か謀略に巻き込まれることだけは何としても避けないといけないと思う。

 いや、避けないとだ。

 僕は、健に言ってみる。

 本で読んだ内容を。

 健は僕の話を静かに最後まで聞いたのであった─

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