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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

アキトとコンノ

作者: uni




「俺のこと、どう思う?」





中学・高校と野球漬けだったけど、大学ではきっぱり縁を切ると決めていた。そこそこの強豪校に行ったのがいけなかったのかもしれない。特に高校時代の部活は最悪だった。もはや部活ではないな、軍隊だ。上下関係が当たり前で、その適用具合といったら馬鹿馬鹿しくなるほどだ。先輩より先にグラウンドにでて整備をして、マネージャーなんていないからドリンクやテーピングの準備。朝から吐くほど走らされてボールに触るのなんてもんはほんの一瞬だった。高校3年間のうちレギュラーになることもあったけど、補欠でいることのほうが多かった。2年の時に膝を壊したからだ。監督は使えない奴にはチャンスすら与えないような人だったから、怪我をした俺には2度とに向きもしなかった。努力しても報われないんだなぁとか、結局トップに気に入られて奴がいい思いするんだなぁとか勉強になったもんだ。


結局俺は一度の怪我で、その後スポットライトを浴びることがなかった。ずっと補欠。100人もの部員がいる部活での補欠なんてほとんど意味なんてない。ご愁傷様。



そんなわけで大学では野球はやらないことにした。草野球サークルならまぁやってもいいかなと思ったけど、レベルが違いすぎて煙たがれるのが目に見えたし、サークルっていう響きがなんとなく近寄り難くなってやめた。



結局、無所属のまま4月が終わろうとしてる。


実家から大学へは少し通学に不便だったから一人暮らしにしてもらって、最初は慣れない生活にバタバタしてて気づかなかったけど、大学生って案外暇なんだなっていうのが感想。


理学部だけど土日以外に週一回休みが取れるようにカリキュラム組めたし、実験が始まるのも1年の後期からだ。


「バイトでも始めようかなー」


一人暮らしで独り言を言う癖がついたのかもしれない。一人ラウンジでごちてしまった。


「バイト探してんの?」


いきなりかけられた声にビクッとした。同じ学科の・・・なんだっけ、長い名前。


「いきなり声かけてごめんな。俺同じ学科の五條寺なんだけど…わかる?今日の2限の基礎物理近くにいたんだけど。」


あ〜ゴジョウジね。思い出した。すげー名前だと思ってたのに長ったらしいから忘れてた。

「わかる。すげー名前だし、お前目立つよな」

「目立つか?俺からしたらコンノのほうが目立つけどな。ガタイいいし」

そういって、明るい髪色のゴジョウジがいった。


ゴジョウジは、学科の中でもにぎやかな集団の中にいつもいるやつだ。背も高いし、誰とでも仲良く慣れそうな感じがする。自然と周りに人が集まるタイプってやつか。入学式ですでに明るい頭してるから目立ってた。


「ずっと野球やってたから。それでなに?」

「悪い悪い、本題な。いや、バイト始めようかなーってコンノがいってるのが聞こえてさ。俺のバイト先で募集してるんだけどどうかなーって」

「なんのバイト?」

「引越し!慣れるまで大変だけど、時給換算すると結構いいし、小遣いみたいなのももらえたりするからいいよ」

「だから“ガタイ”ね」

「ははっ。ばれたか。うん、まぁ気が乗らなかったらいいんだけどさ。お試しとかでもどう?試しに一回だけ」


まぁ暇してたし、ちょうどいいかもなと思って引き受けた。

これが俺とゴジョウジ アキトとの初対面だ。


それから俺はバイトのお試し期間を経て正式に引越しのバイトを始めた。ずっと野球やってたせいか、体力を使う仕事に慣れるのも早かったし、アキト(苗字呼びが苦手だから下の名前で呼べと言われた)とも話が合うことがわかってきて、まぁ充実した大学生活っていうのが過ごせていたと思う。





「コンノってさぁ、彼女とかいんの?」

バイトの休憩中、アキトが唐突に聞いてきた。

「いたらこんなにシフト入ってねぇだろ」

「まぁ確かに。でもそろそろ夏休みも始まるし、彼女ほしいなーとかないの?うちの学科生物系だから女子も多いし。いいと思う子とか」

「特にねぇ。てか夏休みの前にテストあんだろ?まだまだ先じゃねぇかよ」

「ツマンネ〜回答ありがと〜ございますー」


お前は?という言葉を思わず飲み込んだ。アキトも俺と同じくらいシフト入ってるけど、こいつは付き合ってるやついるだろうなと思ったからだ。

だってアキトはモテる。アキトがいってたように理系の中では割と女子が多いけど、大半がアキトのことが好きだって聞いたことがある。まぁ他に恋愛対象になる男少ないもんな、童貞っぽいやつ多すぎだし。俺もだけど。


だからなんとなく質問を飲み込んでしまった。


「好きな人誘って花火とかいきたいなー」

彼女はいないのか。

「いけば?お前が誘えば来るんじゃね?」

「んー…門限厳しい子なんだよね。人混みとかもあんまり得意じゃないし」

「お嬢様なんだな」

「お嬢様ではないけど」


それっきりアキトがしゃべるのをやめたし、休憩終了を社員が告げに来たから次の現場に急いだ。




「今野くんってさぁ、最近アキトと仲良いよね?」

選択の講義がおわって、同じ学科の女子が話しかけて来た。よくアキトと一緒にいるやつ。

「バイト先が一緒だから」

「そうなんだぁ〜。なんか意外な組み合わせだから気になっちゃったんだぁ」


高校は男子校だったし女子とあまり話す機会がなかったからか、この、女特有の語尾を伸ばす口調がなんとなくゾワゾワする。

じゃ、と言おうとした時に引きとめられた。なんだよ、と言おうとしたのに相手が先に口を開いた。

「あのさぁー、すっごくいいにくいんだけど、あたし今アキトに携帯無視されてんだ?だからさ、今野くんが会った時にでも連絡するようにいってくれないかなぁ?」

伝言係ね。はいはい、頼むからこれ以上しゃべらないでくれよ。

「わかった」






「…って、頭悪そうな女が言ってきた」

「ブッ!頭悪そうって言い過ぎだろ?」

「うっせー。吹き出したってことはお前も思ってたってことだろ?」

「思ってた思ってた。ってか実際頭悪いし。面倒ごと押し付けられてごめんな」

「いいけど。無視してんの?」

「んー、別れよっていったらちょっとしつこくてさ。面倒くさいから無視してた」


“別れよ”っていったって…


「彼女いたのかよ?!」

「ぅわっ!びっくりしたー。なに、コンノが大声出すとかびびった。いってなかったっけ?」

「いや、え?…あれが門限厳しいお嬢様?」

「お嬢様じゃないって。あいつのことでもないし。付き合ってっていわれたから付き合ってただけ」


人当たり良さそうな顔してるから騙された。こいつって結構…


「お前結構ひどいやつなんだな」

「ばれた?俺本命にしか優しくできねぇから」

「こえー」

「コンノには優しいだろ?」

「きもいって!」



アキトってなんか掴めない奴だ。ふざけた口調の中にほんのり本音が混ざってる。たぶんあの女子のことは本当に面倒だから切ったんだろうなと思った。そう思った時、なんか安心した。






「キスした」


アキトがそういってきたのは七月入ってすぐだった。大学はいって初めてのテストだし、一応バイトのシフトを減らして2人で勉強しようってなった。図書館で朝から横流しでもらった過去問の答えを作って、昼を過ぎたから飯でも食おうと大学のラウンジにいったときのことだった。



「お嬢様?」

「お嬢様じゃないっていってんだろ」

「テスト前なのにお前は余裕してんな〜」

「余裕なんかないって」


いや、充分余裕してんだろってふざけてやろうと思ったけど、ふと見たアキトの顔がいままでみたことないものだったからやめた。後悔してるような、うまく言葉にできない。



それ以降話題にしなかった。





夏休みにはいって、俺は実家に帰ろうとおもったけど相変わらずバイトばかりしていた。アキトは夏の短期でバイトをもう一つ増やしたらしく、引越しのバイトでシフトがかぶることは少なくなったけどその日はたまたま一緒だった。


「コンノは今日の花火大会いくの?」


アキトにいわれて今日が花火大会だったのを思い出す。


「行かないかな。…お前は?」


「行くよ。だから今日は次の一件で上がり」


こないだ言ってた好きな人とか?

言葉がでない。

なんで。

聞けばいいのに。


「楽しんでこいよ」


こんなことをいいたいわけじゃないのに。






アキトがあがってから、俺は残業を頼まれたから家につくころには花火が上がっていた。今頃アキトは門限が厳しくて人混みが苦手な女の子の手を引きながら花火をみているんだろうか。本命には優しいっていってたし、人混みから守ってやりそうだな。そんな風に考えてる自分に気づいて気持ち悪くなった。なにに?なにもかもだ。アキトが女の子の手を引いて歩いてるところ。肩をだいているかもしれない。顔は優男のくせして引っ越しのバイトをしているからか筋肉がしっかりとしているし、背だってある。頼り甲斐があるだろう。ちょっと待て。なんで俺はアキトのこと考えてるんだ?友達が誰といようといいんじゃないのか?ましてや好きだといっていた、キスをしたともいっていた。じゃあどうしてそのことを伝えた時、俺にわざわざ伝えた時、あんな顔をしたんだ?



どうして、


なんで、


こんなに俺はあいつのことを考えているんだ。



「…コンノ?」


今まで頭の中でぐるぐるぐるぐる考えていた相手の声が聞こえて驚く。



「…アキト?」


「なんだ、コンノも花火見にきたんだ?」


お前、今日は好きな人と一緒じゃなかったのか?


「その格好…さっきバイト終わったのか?残業?遅くまで大変だな」


好きな人って…


「あぁ、コンノに紹介するな。こいつ、俺の従兄弟のユウタ。花火見てたんだけどやっぱり人混みで少し酔っちゃってさ。心配だから早めに切り上げてきたんだ。まだ中学生だから門限もあるしな。コンノも仕事終わりで疲れてるんだから早めに帰ったほうがいいぞ。じゃあ俺ら行くから。次のシフトかぶってるの明後日だっけ?またな」



なにも言えない俺の代わりにアキトがだらだらと喋っていた気がする。俺の横を通り過ぎた時。アキトに肩をだかれた子は、まぎれもなく男だった。

でも、今まで見た女の中でも一番綺麗な男だった。

あれが、アキトの好きな人。








「ごめんな。一昨日、びっくりしたろ。まさかコンノに会うとは思わなくて。…がっかりした?今まで普通だと思ってた同級生がホモって。うけるよな。中学生だし。ていうか従兄弟だし。でもしょうがないんだよ。…どうしようもないんだよ。





…なぁ、俺のことどう思う?」







いつもみたいに笑い飛ばしてやりたかった。ありえねぇよって、冗談きついって。でもお前のそんな顔見たらなにも言えない。大丈夫だよ、別に変なことじゃねぇよっていってやりたい。お前に出会ってから俺の中がなにか変だ。友達に対してこんな感情あるのかな。おれが今まで野球しかやってこなかった馬鹿だからわからないだけなのか?わかんねぇ。

本当の俺はこんなんじゃないのに、男のお前なんてみてもなんともおもわないはずなのに、お前がそんな顔するからだ。大丈夫だよ、だって俺だって。俺だってお前と同じこと考えてる。同じことで頭ぐるぐるしてるって。でもさ、やっぱ変だよな。どう考えたって変だ。男のお前に対して抱きしめたいなんて、そんなこと考えてる俺なんて、




「気持ち悪いよ」




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