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リモコンが部屋から消えた

作者: 純白米

 男はふと、ソファの上で目が覚めた。部屋は電気がついていて、なんだかよくわからない番組がテレビに映っている。男は最初、状況がよくわからなかったが、すぐになんとなく予想はついた。きっといつの間にか、ソファで寝てしまっていたのだろう。

 男は、とりあえずテレビの電源を消そうとリモコンを探した。寝ている間、ずっとつけっぱなしだったのだ。電気代が少しもったいなかったなと思いつつ、リモコンを探す。


 しかし、どこを探しても見つからない。今朝の段階では絶対にあったのに。おかしい。リモコンが行方不明になってしまった。男は1人暮らしをしていて、一緒に住んでいる人は誰もいない。誰かがどこかへ持っていったという可能性はない。つまり、犯人はどう考えても自分なのだ。男が住んでいる部屋はワンルームのアパートだ。トイレ等に持っていくわけがないのだから、必ずこの部屋のどこかにテレビのリモコンはある。こんなに狭い部屋の中で、一体どこにやってしまったというのだろうか。


 男は、最初に寝ていたソファの上を探してみた。寝ぼけていてよく思い出せないが、横になりながらソファでテレビを観ていた気がする。そのときにリモコンは持っていたかどうか、曖昧であった。普段、テレビを観るときは、いつもそのソファに寝転がっていた。リモコンを持ちながら観ることもあれば、持たずに観ることももちろんあった。寝起きの頭では、どの記憶がいつの記憶だったかがハッキリとわからなかった。


 しかし、ソファの上はいくら探してみてもどこにもない。乗っていたクッションをどかしても見当たらなかった。そうなると、リモコンは持たずに、いつもの場所に置いてあった可能性が高い。いつもの場所とは、近くにある小さな机の上である。その机の上が、リモコンの定位置であった。でも、その定位置に今リモコンはない。ないから困っているのだ。その定位置から何かのはずみで落ちたことも考えて、机の周りなども探したが、見つけることは出来なかった。


 男は部屋を見回した。他にリモコンのありそうなところはどこだろう。そして、部屋の隅にある雑誌の山が目に入ってきた。そこには毎週買っている雑誌が崩れた山のように積み重なり、読みかけでページが開いたまま置かれているものもあった。もしかしたら、この雑誌の下に埋もれているのかもしれない。雑誌の山をかきわけるのは一苦労ではあったが、一通りどかして探してみた。でも見つけることは出来なかった。こんなことになるなら、日頃からもっと部屋を綺麗に片づけておけば良かったと後悔した。


 捜索にも行き詰まり、今日1日の流れを振り返ってみることにした。朝、まず起きてリモコンでテレビをつけた。それは覚えている。そのときは、確か机の上に置いていたはず。そして、別の番組が観たくてチャンネルを変えようとしたとき……。


男はあることを思い出した。

「そうだ、電話だ。」


男がチャンネルを変えようとしたその瞬間、部屋の電話が鳴ったのだった。男はリモコンを持ったまま、電話を取りに行った。男はその時に受話器の傍に置いたかもしれないと思った。そうして受話器の傍に目を向けたが、リモコンらしきものはない。


「じゃあ、少しリモコンを持ったまま話をしていて、無意識に近くの本棚の上にでも置いたのかもしれない。」


男は電話をしながら部屋をぐるぐる無意識のうちに歩きまわるクセがあったので、そのときに歩いたであろうコースを必死に思いだしながら、その近くを探してみたが、特に見つからない。自然と置きそうな場所はすべて探した。


 本当に、リモコンはどこへ行ってしまったのだろうか。

男は探し疲れて、またソファへと深く座った。少し甘いものでも食べて、頭を働かせようかと思い、好きで買ってあったマーブルチョコを取ってきた。手のひらの上に、マーブルチョコを数個ほどポロポロと取り出した。そのとき、数個出したうちの一個が、コロコロと床に落ちて転がってしまった。


「おっと、もったいない。」


男はそのマーブルチョコを拾おうと、ソファの下に手を入れた。そのとき、何かゴツゴツしたものがあることに気付いた。

男がそれを取りだしてみると、それは探していたテレビのリモコンであった。リモコンが見つかったのだ。きっと、ソファでリモコンを持ちながらテレビを観ていて、寝てしまったことで力が抜けて、床に落としてしまったのだろう。そして、そのはずみでソファの下へもぐりこんだのだ。


 まったく、灯台下暗しとはこのことだ。ずっと探していたリモコンを見つけた男は、すっかり満足した様子だった。これにて、狭い部屋でのテレビのリモコン行方不明事件は、解決となったのであった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] うえ [気になる点] なくなった
[良い点] 妖怪リモコン隠しですね分かります なんどアイツに隠されたか [一言] あるある系をしっかり再現した短編でした
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