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金の星座 銀の星  作者: 月野安積
第一章 御前試合
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第四話

既に、登録所ではエントリーされ終わった出場者達がそれぞれ体を解す為に、体を動かしいてた。


そこに、どよっと騒めきが起きた・・・。


「おう、あれ近衛の──」


「副隊長の・・・」


その時、シャハードは他の地方からやって来た出場者と話をしていたが、その言葉を聞いて人ごみの中に顔を突っ込んだ。


「あれが、副隊長のアジュラ・・・」


そこには、光の具合で、深い緑にも見える長い髪をポニーテールの様に結んだ美女が、数人の兵士を従えて立っていた。


彼女はその美しい顔を微笑ませながら、すっと周りを見渡した。

そこで一瞬シャハードは自分に目が止まった様に見えた。


「知っての通り、この御前試合の優勝者は球帝の親衛隊に入隊する事が出来る。この天羽境、最強の戦士集団として天羽と球帝陛下を守り続けなければならない。時には苦しい戦いを強いられる時もあるが、自分と家族の生活の保障は永遠に保たれ、名誉と富が手に入る。明日は万全の準備をして試合に臨まれよ。

当時は炎皇球帝も御覧になるので、よく腕を研かれるがよかろう」




「球帝が来るんだとよ、前回はお体の具合が悪いとかでいらっしゃらなかったのにな」


「何でも、この界で一番見目麗しい方だって昔ばぁちゃんが言ってた・・・」


「球帝の顔が拝めるのなんて、年に一回の収穫祭の時だけだろ? そんなの遠くて顔なんか解かりゃしねぇよ。ただ、凄く長い紅い髪をしているな・・・」


「瞳も赤いってよ」


「へぇ、それじゃ俺と一緒だ」


「わっ!!」


いつの間にかナシューが真後ろに立っていた。

確かに、髪も瞳も赤かったが、見目麗しいとか言うのは何か違うような気がするが。


「髪と瞳が紅いと美しいと言うのか、何とまぁ。照れてしまうではないか」


「誰もあんたの事言ってないよ、それより何処行ってたんだよ、今そこに凄い美人の副隊長が居たんだぜ」


「知ってる、アジュラ。スピアの使い手だ」


「スピアってあの長いの?」


シャハードは壁に立て掛けてある、棒の先に剣の付いた武器を指差した。


「そうだ。だが、彼女が持っているスピアは・・・」


ナシューが何か言いかけた時、天羽境のほぼ中央にある鐘が鳴った。


「・・・いかん、帰らねば」


鐘の音に急かされる様に、馬に乗りながらナシューは言った。


「そうだシャハ!、お前今日泊まる所は確保しているのか?」


「そこまで間抜けじゃねぇ!!」


ナシューは馬の頭を代えながら笑った。


「では、明日宮殿の広間で!!」


「ああ、今日はありがとう!!」


「気にするな!」


そしてナシューは一陣の風を起こしてその場を去った。


まだ真実の鐘は鳴り響いている。


「あいつって、結局何者なんだ?・・・」


道の真ん中で呆然としているシャハードの後ろで、突然、蹄の音と兵士の怒号が聞こえた。


「どけどけーっ!!、サーク・ギルテリア公が通られる!! 道を開けよ!! 」


数およそ三十騎。それが土煙を上げながら、天羽ノ宮へ消えて行った・・・。



◇          ◇





「カジャ殿! カジャ殿!!」


女官司のセラーシャが、裾の長いスカートをたくし上げながら猛突進してくるのを見て。顔の引きつるのを片手で抑えながら、カジャは言った。


「何事でございますか?・・・・・」


「今しがた、先触れがあって。ギルテリア候がこちらに向かわれていると・・・。貴公はとても気紛れなお方、もうこちらに到着されているやも知れませぬ、なのに!!」


「まだ、お戻りになって居ないと・・・?」


「申し上げます」


白い衣を纏った召使が来た。


「サーク・ギルテリア候様、ご到着でございます」


セラーシャはどうしたら良いのかと問うように彼を見た。


「かまわない、暫く控えの間にでもお通ししておこう。失礼の無い様にな、私がお相手しておこう。セラーシャ殿、あの方が戻られたら・・・」


「ハイッ! 分かっておりますとも!!」


そう叫ぶと、彼女は来た時の勢いのままで帰って行った。


「さて、どの様に誤魔化すかな・・・」





天羽境の遥か北。

砂漠と草原が混在する未開の大地を、ここ百年あまりで統一し、新たに国家を興した一族をギルテリアと呼ぶ。

人口は天羽境に及ばないが、遊牧民であった彼等が街を造り田畑を耕すうちに一つの土地に定着するようになった。

その、今の当主の名をサーク・ギルテリアと言う。


内戦が続いた為、あまり外の情勢に目を向けて居なかった球帝であったが、最近の目を見張る勢力に無視も出来なくなってきた昨今であった。


近頃は何かと接触を持とうとして、よく球帝の元へ訪れる様になっていた。

しかし、サークがそれだけの為に球帝に会いに来ているのでは無い事を、カジャを始めセラーシャも知っていた。













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