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金の星座 銀の星  作者: 月野安積
第一章 御前試合
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第三話

「よう」


次の日である、朝早くから試合エントリーの予約札が、各要所で配られていた。

予約札をもって天羽宮に登録をしに行き、初めて試合に登録できるのだ。


札が手に入らないと、試合に出場できないので、辺りはかなり混んでいた。

地方から、腕に自信がある若者が集まってくるだけに、かなりの人数がこの御前試合があるシーズンにはこの都に集まってくるのだ。


そこには、前年戦った事のある顔馴染みがいたりして、かなり広場は賑やかだ。

札は二百枚しか無いので、この場から競争になる。ここで札を手に入れなければ一年を棒に振る事になるからだ。


そこでシャハードは昨日出会ったナシューに会った。

先に声をかけたのはナシューの方だった。


「よう、どうだ。札は手に入ったのか? 」


どうも暗い顔をしているシャハードに覗き込むようにして、ナシューは声をかけた。


「まだだ・・・、列が後ろの方だったから、札取りがこんなに激しいものだなんて知らなかった。あんたはどうなんだ? しかし、びっくりしたなぁ。いきなり声かけるから」


ナシューはフフンと鼻で笑った。


「やっぱりな、昨日田舎から出てきたばかりじゃ、こういう事知らなくて当然だ。実はな、俺、札を二枚持っているんだ」


「何だと? 」


シャハードの顔がパッと明るくなった。

ナシューは昨日、球帝である権力を利用して、カジャから二枚ぶんどったのではあるが・・・。


「一枚、譲ってやらんでもない、ただし・・・」


「金か?」


シャハードの顔がまた曇った。


「金は要らない、お前、武器は何を使うんだ?」


ナシューは何か獲れる物が無いかと彼を見回したが、旅装束も何とも貧弱で小剣さえも見当たらない。


「本当は細身の剣を使うんだが、生憎持って来れなくて。ここに来てから揃えようと思ったんだ」


見るからに、田舎からそのまま出てきたという感じだ。

金を持っているのかも怪しい。

御前試合に出るというからには、かなりの準備をしてくるものだ。

一族ぐるみ、村ぐるみで一人の若者を応援する所も少なくは無い。

ちょっとした金持ちだと、かなりの名剣を2、3本揃えるところもある。


「札はいい、タダでくれてやる・・・」


「本当か? いいのか!!」


「ああ・・。登録にはまだ時間があるな、お前、ちょっと俺に付き合え」


ナシューはシャハードを自分の馬に引き上げた。


「知り合いの所へ行く・・・」


と、言って連れて行ったのは、天羽ノ宮西宮殿であった・・・。


天羽ノ宮は5つある。

主に天羽の宮と呼ばれているのは、球帝が住む都市の中央に位置する宮殿の事である。

後、東西南北に一つずつ、屋敷を置いていて、食物庫、武器庫、宝物庫、書庫とそれぞれに保管している。


その中の西宮殿は武器を保管しているのだ・・・。


ありとあらゆる武器を保管してあるそこに、立ち尽くして口が塞がらないシャハードにナシューは言った。


「細身の剣だったな。やれやれ、暫く平和が続いたものだから、剣に錆びが付いてなきゃいいが」


「おい」


「何だ?」


「ここって、球帝の武器庫なんじゃ・・・」


何かの箱をまさぐっていたナシューの手が止まり、振り向いた。


「大丈夫。俺、ここの番人と友達なの。それに、剣の一本や二本、持って行った所で偉い人にはバレやしないさ。どうせ全然使ってないんだから、試合にでも使われた方が、ここの武器だって幸せに決まっている・・・よし。これがいいな、持ってみろ」


それが手に渡った瞬間、シャハードは目を見張った。

そのツカは3つの宝玉が埋まっていて、どれも蒼だが微妙に色が違った。

剣の方は何か模様がびっしりと施されている。

しかし、よく見ないと分からないほどだ・・・。


だが、一番驚いたのは、その剣が自分にしっくりと馴染んでいると言う事だろうか。

重すぎもせず、軽すぎもしない。


「これは、かなりの名剣なんじゃ・・・」


「おっ、お目が高いな。若いの!」


ナシューは冗談めいて言った。


「その剣、この世で鍛えた物では無くてな、とある世界で造られた特注品だ。向こうの世界の獲物に慣れ切っているから、こちらの獲物じゃ物足りないかも知れない。まぁ、使い手にもよると思うのだがな」


「いいのか?こんなの持ち出して・・・」


「それをただの剣にしてしまうのも、水王が扱う最終の剣に戻せるのも、お前次第と言う事だ」


「何?」


「さぁ、行こうか」


涼しげな顔でナシューはシャハードを見た。

疑わしげな顔をしているシャハードに彼はもう一度言った。


「気にするな、武器が無ければ登録もできないところだったんだぞ?」


「えっ? そうなのか」


「そうなのかって・・・本当に何も知らないんだな。登録されるのは、本人だけじゃなくて武器もされるんだよ」


「どうしてだ?」


ナシューより二十センチほど背の低いシャハードは、彼を見上げながら疑問を投げかけた。


「武器別で最初は登録されるからな。その武器の一番の使い手が、他の武器の使い手と最終的に決戦する。だから暫くは同じ武器の使い手と剣を交える事になるな、俺の場合は大剣だから暫くお前と会わない事になる。勝ち残ればの話だが」


「ふうん」


「さて、登録所に戻るか。登録は昼までだ、あまり時間が無い」


そういいながらシャハードはナシューを馬に引き上げた。


「あんた、何で俺にここまでしてくれるんだ?」


「お前が、あまりにも世間知らずで放っておけなかったからだ」


「悪かったな・・・」


一人でむくれるシャハードに、ナシューは小さく声を立てて笑った・・・。


















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