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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

六曜の勇者

作者: 光合セイ
掲載日:2026/02/23

       〈プロローグ VS魔王〉

「ふはははは! よくぞここまで辿り着いたな勇者どもよ!」


 人類と魔族の生存競争――人呼んで、人魔決戦。

 多くの人が、そして魔族が動員され、互いの生死を賭けた戦いを大陸各地で繰り広げ、戦果を撒き散らした大戦争。

 その戦争が今、佳境を迎えようとしていた。


「我こそは魔王ダイアーク! 貴様ら勇者を打ち倒し、魔族を再興せんとする者である!」


 高らかに名乗る魔王は、その巨体よりも遥かに大きな玉座から立ち上がり、謁見の間を自身の黒い魔力で満たした。


 さながら明朝の霧のよう。

 それだけで勇者達の体は重くなる。

 当然だ。


 魔力の過剰摂取。


 人間にとっては、毒にも薬にもなり得る現象だ。

 今回は間違いなく、毒。

 魔王の前で膝を屈する者も出た。


「怯むな! 敵は魔王、ただひとり! 俺たちが臆するものはもう、ない! みんな、これが最後の戦いだぞ!」


 勇者……リーダー格の金髪が発した(とき)の声に、膝を折った者たちが立ち上がる。

 対する魔王は余裕の笑み。漆塗りみてえな顔面のくせに、表情のわかりやすいやつだ。


 そんな中で俺はひとり、魔王の意識から外れるのを待っている。



「……ヨウ。やることは、いつもと同じだ。頼むぞ」



 一滴の淀みのない信頼を、リーダー格の勇者からぶつけられる。


「任せたぜ、悪友」

「死ぬんじゃねえぞ、リーダー」

「ああ、お互いにな」


 そう言って俺は、金髪の幼馴染に踵を返す。

 魔王との戦いを始める5人を置いて、俺は影に身を潜めて時を待つ。


「うおぉぉおおおお!!」


 ガタイのいい重装甲の戦士(おっさん)が突貫を掛ける。

 魔王軍の中で最も体格のデカかった幹部を、一撃でぶっ飛ばした戦士の突進だ。

 いくら魔王でもタダじゃ済まない。



(――ここだな)



 意識は戦士に集中された。今なら俺は動ける。

 魔王の視線は此方に来ない。

 炎の魔法も、闇の魔法も、斬撃も。魔王の繰り出す攻撃の対象の悉くは、俺には向かない。


 一進一退の攻防。

 勇者も魔王も一歩も引かず、剣を、杖を、その鋒を、互いに向け続ける。


 そして――



「くはははは! よもや我が、ここまで押されるとはな! ならば応えようではないか。

 これが我の――真の姿である!」



 城が内側からはち切れんばかりの魔力。放出されると同時に、間近で受けた勇者達は吐血する。

 身体の拒否反応。さっさとケリを付けなければ、アイツらが危ない。



「  『先んじれば、勝つ』  」



 詠唱にも似た言霊の先、俺は魔王の逆鱗を見つける。

 俺は盗賊(シーフ)

 敵の弱点を見つけ、捉え、仲間の道を開拓する者。


「――ぬ。貴様、何処から!?」


 魔王が俺に気っいた。だがもう遅い。

 莫大な魔力を一身に浴びながら、尚も俺は肉薄する。

 5人の勇者が作った隙。針の穴に糸に通すような繊細な、けれど派手に爆発するような作業。



 ――魔王討伐。



 その任を、俺は引き受けた。


 俺の力は、日によってその本質を変える。

 今日は、()()()()()()()()()

 第二形態への変身中だろうと、攻撃すれば敵は死ぬ。先に動けば、先にダメージを与えられる。


 当然の帰結。当然の話、だろう?

 その当然を、成功に確定させるのが俺の力だ。



「悪いな……今日は先勝(せんしょう)なんだ」



 昨日は赤口。明日は友引。

 即ち――六曜(ろくよう)

 勝つには今日しかないんだよ。



 ――俺のナイフの鋒が、魔王の腹に沈んだ。



「ぐぬぅ……!? 核にまで迫るこの感覚……! 貴様、何をした……!?」

「変身中に悪いな。だがこっちも切迫詰まってるんでね。すっぱり切れるトコを()()()だけさ」

「切った……まさか、因果の収縮か!」


 フフフ何を言ってるんだろうこの魔王は。


「インガだかリンゴだか知らねえが、収穫すんのはテメェの命だ!

 大人しくこの俺に渡してもらおうか!」

「ぐぅううう……! させん! 我が命は魔族の希望! 強奪者如きに渡してなるものか――!」



 しぶてぇ! コイツしぶてぇ!

 今までの相手なら諦めてたのに!

 すっぱり両断できたのに!

 やはり魔王、厄介すぎんだろ!


 ――と、魔王に肉薄する俺の手に触れる者がいた。



「――あ、お前」

「助けに来たぜ、ヨウ!」


 そんな金髪イケメンの幼馴染は、ニッと口角を上げて笑い掛ける。


「――ああ、やったろーぜ!」

「息を合わせろ……いや、言うまでもないか!」

「当然!」


 同時にナイフに力を込める。

 ずぷり、と魔王の腹に深く沈んだナイフは、さらに魔王を苦しめた。


「ぐあぁぁぉあああ!? 勇者あぁぁあああ!!」

「おおぉぉぉおおお!! 魔王おぉぉおおお!!」



 俺も何か叫んだ方がいいのかしら。

 でもなぁ、叫ばない方が力込められるんだよなぁ。

 でも雰囲気的に叫んだ方がいいよなぁ。



「今日は焼き肉だゴラァァアアア!!」

「ふざけろ今日は疲れてるからシチューだぁァア!!」

「何の話をしてるのだ貴様らあああア!?」




 ここまでが、6人の勇者による魔王討伐譚。

 そしてこれから語られるのは、その後の話。


 勇者達が大成し、各々の道に進んだ後の――




 ――とある、シーフの物語。



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