入学から2週間
昼休みに生徒会室に行くようになってから、2週間。私はこの生活にだいぶ慣れてきた。
「うふふ。」
「その本、そんなおもしろいのか?」
「いや、おもしろいですよ。どのキャラも魅力的で…先輩も読みますか?」
「僕は読書などしない。」
「そこの一人称、僕より俺だと思うんですけどね。先輩って俺とは言いませんよね。育ちの良さですか?」
「さあな。小さい頃からそう言っていた。」
「へえ。」
先輩は無愛想ながらも一応質問に答えてくれる。生徒会室は静かなのでわりと居心地がいい。私はけっこうこの時間を気に入っていた。
「ふう。」
私は自分でいれた紅茶に口をつけた。今までは先輩の分だけいれていたものの、ポットの容量的に2人分入りそうだったので、打診したところ承諾してもらえた。そのため最近は2人分の紅茶をいれている。
「そういえば、もうすぐ茶葉がきれそうなんですが、どうしたらいいですか?」
「それはこちらで買っておく。」
「私もお金払ったほうがいいですか?」
「いや、いい。」
「本当にいいですか?この茶葉高級なやつですけど。」
「うちを舐めているのか?これくらいの金、問題ない。」
「そういえば、お金持ちでしたね。」
「何か…何か好きな紅茶はあるか?」
「え?」
もしかして、先輩、私の好きなやつを買おうとしてくれてんのかも。なんか優しい。
「えっと、好きなのは、アッサムとかダージリンですかね?なんかお菓子に合うやつよりも、単体で飲むようなやつがいいかもです。」
「わかった。それにしておく。」
「え?あ、ありがとうございます。」
え、急にどうしたんだ?なんかすごい優しい気がする。
「先輩って意外と優しいんですね。」
「君は僕をどういう人だと思っているのかな?」
先輩が急に笑顔になった。あ、これ怒ったやつだ 「えっと、もっと人を虐めていて、あ、けど権力でなんか黙らせてるみたいな……」
あ、しまった。 先輩が私の方に向かってくる。とても圧のある笑顔だ。
「実際にそうしてあげようか?」
私は顔をがっちりと先輩の手に挟まれた。やばい、逃げられない。
「い、いや。今のは昔の妄想です!今はぜんぜんそんなことは思ってなくて……」
「ふーん。はあ、それにしても残念だよ。君にそんなふうに思われていたなんて。」
「あははは。」
そりゃ初めのほうの姿を見れば、そういう人に見えるでしょ。
「今は本当に思ってないんだね?今は僕のこと優しいと思ってるんだよね?」
「はははい!先輩はとっても優しいです!」
「感情がこもっていない。」
「うう、もう言いません。…」
「あれれ、拗ねちゃったか。ほっぺが膨らんでりすみたいだ。」
「……」
「今日はもう帰ります。では。」
私は慌てて生徒会室を出た。やっぱ先輩は悪い人間だ。あんな人、関わるんじゃない。
放課後、私は遠足についての話し合いに参加していた。実は私は学級委員長になってしまったのだ。クラスの人の投票でやることになった。
「ええ、今日は5月に行われる遠足について、話します。遠足は1,2 年生合同で行い…」
遠足では1,2年生の交友を深めるという目的があるらしい。そのため、1年生3人、2年生3人の6人班で行動する。私は学級委員長なので、人を振り分けないといけない。はあ、大変そうだ。明日から毎日居残りだ。
翌日、私は同じく学級委員長の快斗と並んで席に座っていた。
「どうしよう、柳原さんと内田さんって仲良いよね。だから、2年生の人が1人になっちゃう。」
「なら穂村さんと内田さんを一緒にすれば…」
もう1時間以上話し合っている。空はオレンジに染まりかけていた。このグループ作り、やってみるととても難しいのだ。あまり仲のいい人を一緒にしてしまうと、2年生の人が1人になってしまう。私たちは結局そこからさらに30分くらい話し合って、グループ分けを終わらせた。
私は快斗と並んで家に帰っていた。夕日がとても綺麗だ。
「はあ、もう疲れた。もうすぐ寝たい。」
「まだ明日にも話し合いあるけど。しかも2年1組と。」
「ええ、明日学校休もうかな。」
「いや、勉強ついていけなくなるよ。」
「もう、勉強やめたい。」
「あんな頑張っていたのに?」
「いや、いまのは冗談。」
「なら明日、絶対来いよ。もし紫乃が休んだら僕、1人で2年生2人と話さないと。そんなん絶対無理だから。」
「確かに、1人はかわいそうだね。しょうがない、明日行くよ。」
「本当に絶対に来てね。」
「はーい。」
「みなさーん!班が楽しみなのはわかりますが、先に概要を聞いてからです。学級委員長の話をしっかり聞いてください。」
今日はクラスの人への説明がある。私も自分の班の2年生をあまり知らないので、少し楽しみだ。 「はい、ええこの遠足はのちに共に学校を支えていく2年生と交友を深めるために行われます。班は6人で……」
説明が終わると黒板に班の振り分けがかかれた紙が貼られた。みんなはそれを見ていろんな表情を浮かべている。よし、私も見よ。
そして、紙を見た後、私は気絶しそうになった。自分の班にある名前を見て。
雨宮伊織




