初めての生徒会室
「昼休みに生徒会室に来い」
私は自分の下駄箱に入っていた謎のメッセージを見て朝から大きなため息をついた。差出人は書いてない。けど、こんなメッセージを送ってくる人は1人しかいない。久宮先輩だろう。それにしても、下駄箱にメッセージを入れてくるなんて。そんなんラブレターくらいしか考えられない。誰も命令文が入ってるとは思わないだろう。
「紫乃ちゃん、どうしたの?なんか今日元気ないね。」
教室に入ると茜ちゃんが声をかけてきた。
「昨日少し夜更かししたから、眠いだけだよ。」
「そう、ならよかった。」
もちろん元気がないのは先輩のせいだが、言ったら先輩に殺されそうなので言わない。はあ、それにしてもどうしよう。私は昼休みに生徒会室に行かなければならない。生徒会室は一般の生徒が入っていいのだろうか?いや、だめだろう。ということは、誰にも見られずに行かなければならない。
そして、昼休みになった。私はひとまず茜ちゃんと一緒に弁当を食べた。やはり友達と食べる弁当の方がおいしい。そして大急ぎで食べると図書室に行くと言って教室を出てきた。生徒会室は2階の奥の方にある。近くには職員室があるので、私はそこに用があるふりをして生徒会室の前まで来た。扉をノックすると、
「入れ」
という返事があった。私が中に入ると、先輩はソファに脚を組んで座っていた。
「遅かったな。」
先輩は不機嫌そうな顔をしている。
「弁当を食べていたので。」
「なら明日からここで食べればいい。」
「明日から?」
「ん?分からなかったのか?もちろん生徒会室には毎日来てもらう。」
「え?」
「そう、毎日だ。」
「もし、逆らったら?」
「教室まで呼びに行ってやるよ。そしたらすごい噂になるだろう。僕は女子にすごい人気だからね。君は学校中の女子に嫌われるだろう。」
「毎日来ますので。ですが弁当は教室で食べます。」
「ああ、そうか。で、仕事だ。紅茶をいれろ。」
「それくらい自分……」
私は慌てて口をつぐんた。先輩の笑顔が怖い。とても圧がある。
「あと、紅茶は濃いめで、ミルクをたくさん入れろ。あと、ティーカップは温めて。」
「いちいち、注文が多いですね。」
私はぼそっと言った。
「なんか言った?」
「いえ、何にも言ってませんよ。すごいこだわりが強いと感じただけです。」
「ふーん。」
私は紅茶をいれはじめた。生徒会室には茶葉やティーポットが揃っている。おまけに冷蔵庫には牛乳まで入っていた。すごい。
「はい、できましたよ。」
「ああ、ありがとう。」
この人でもちゃんとお礼を言うんだ。
「僕がお礼も言わないほどの人間だと思っていたのか?」
「別に?全くそんなことは思っていませんよ。」
なんでそんな私の思ったことが分かるんだ。怖すぎる。
「で、私はもう帰っていいですか?」
「いいわけないだろう。」
「え、なんで?」
「まだ食器の片付けが残っている。」
「はあ。じゃあ早く飲んでください。」
「僕は紅茶を飲むのが遅いんだ。」
はあ、子供かな?私は仕方がないので待っていることにした。今度から本でも持ってこよう。
「そういえば先輩はいつも昼休みはここにいるんですか?」
「教室にいると人がたくさんいてうるさいからな。」
「弁当もここで?」
「ああ。」
「ぼっち飯ですね。」
「だまれ。あと、お前がいるから1人ではない。」
「やっぱ明日から私もここで食べようかな。先輩かわいそうだし。」
「余計なお世話だ。」
この人、案外怖くないかも。結構単純っていうか。なんだか可愛く思えてきた。
「なんだ、ニヤニヤして。気持ち悪いぞ。」
「いえ、なんでもないですよ。」
「紅茶、飲み終わった。」
「あれ、思ったより早いですね。飲むの遅いんじゃなかったんですか?」
「お前、本当にしばくぞ。」
「はたしてそんなことができるんですかね?あ、カップ片付けますね。」
「……」
「では今日はもう帰ります。明日もまた来ますからね、奏先輩?」
私はノリノリで生徒会室から出た。先輩の名前は久宮奏という。これは茜ちゃん情報だ。覚えていてよかった。私は先輩の困った顔を思い出して笑ってしまいそうになった。これは仕返しだ。私も先輩のこと振りまわしてやる。
「あれ、紫乃ちゃん、おかえり。長かったね。」
「うん、図書室でおもしろそうな本見つけたんだ。だから長居しちゃった。」
「ああ、それはよかった。」
「茜ちゃん、いろいろありがとね。」
「え、急にどうしたの?」
「いや、なんとなく?」
私たちは2人で笑った。




