初めての友達
「ねね、扇崎さんって中学校どこなの?」
「えっと、西村さん?私は西中だよ。」
「え!名前覚えててくれたんだ。さすが1位。」
「いやいや、西村さんも私の名前覚えてくれてたでしょ。」
「それは扇崎さんだからだよ。ねえ、1つ提案があって…私と友達にならない⁈」
「えっ?」
「いやだったらぜんぜんいいんだけど…」
「ぜひ!ぜひ私と友達になって!」
あ、つい嬉しくて勢いづいてしまった。
「うん!よろしく。紫乃ちゃんって呼んでいい? 「もちろん。えっと西村さんは…?」
「茜だよ。」
「茜ちゃんだね。よろしくね。」
それからしばらく茜ちゃんと話をした。彼女はとても明るい性格で、話していてとても楽しい。私は友達ができたことにとても浮かれていた。
「続いて、校内での生活を生徒会の皆さんに紹介してもらいます。」
私たちは学校紹介を聞くために体育館に集まっていた。
生徒会メンバーが出てくると急にざわめきが起こった。女子たちが頬を染めて1人の人物を見ている。
「茜ちゃん、誰か人気な人がいるの?」
「うん!2年生に久宮先輩っていう人がいるんだけど、その人がすごくかっこいいんだ。おまけに親は大手企業の社長でお金持ちだし、頭もいいんだって。わたしも初めて見たけど本当にかっこいい!」
茜ちゃんの視線もその先輩に釘付けになっていた。
「なるほど。そういうことね。」
私もその久宮先輩とやらを観察してみた。確かに、整った顔をしている。女子たちがかっこいいと思うのもわかる。
ん?今、目が合った?いや、そんなわけないか。気のせいだ。
時はすぎ、あっという間に夕方になった。私は快斗と並んで歩いていた。
「聞いて!今日ね、私、友達ができたんだよ。」
「西村さんか?よかったな。ぼっちじゃなくなって。」
「はあ、確かに今までぼっちだったけど、…今は友達いるの!」
「はいはい。そういえば今日、女子たちが2年生のとある先輩のこと、めっちゃ噂してたな。」
「ああ、うん。なんかかっこいいんだってね。」
「紫乃はどう思った?その人のこと。」
「え、私?ううん。確かに顔はいいけど、あの人なんか猫かぶってる気がするんだよね。なんかみんなの前でだけいい顔して裏では性格悪そう。」
「そうなのか?」
「いいや、分からないよ。けど話し方とかがわざとらしかったし。」
「そうか。それはよかった。」
「あ、そういえば快斗は部活入るの?」
「もちろん、サッカー部に入るよ。」
「そうだと思ったよ。」
「紫乃はどこか入る?」
「私は入るなら文化部かな。茶道部とか写真部とか。あ、けど文化部に入ると、運動部と帰る時間違うから、快斗と一緒に帰れなくなっちゃうね。」
「そうだな。」
「うう、1人で帰りたくないよお。」
「お前は案外寂しがり屋だからな。中学のころも本当は1人がやだったんだろ。」
「うう…ってそれは中学の話。高校では頑張るの。」
「そう、それは頑張れよ。」
歩いているとあっという間に家に着いた。
「じゃあね、また明日。」
「じゃあな。」
私たちはそれぞれの家に入っていった。
私はこの頃はまだ知らない。このときの会話が災いのもととなることを。
翌日の昼休み、私は図書室で本を読んでいた。図書室は人がほとんどいない。私は昼休みはいつもここに来て、奥の方で読書をしていた。そして本を見ようと棚のまわりを歩いていると、
ぼふっ!
「っうわあ。」
えっ?どうやら私は誰かにぶつかってしまったらしい。
「すいません、私の不注意で。」
「いや、僕は問題ないよ。」
顔を上げると、なんか見覚えのある顔が見えた。ああっ!この人、昨日みんなが噂していた久宮先輩だ。やばい。なんていう人にぶつかってしまったんだ。
「あれ、君は僕のことを見て黄色い声をあげないんだ?」
「え、だってあな」
気づけば私は壁際に追いつめられて、口を腕でふさがれていた。普通の女子であれば黄色い悲鳴をあげていただろうが、私にとっては恐怖でしかない。
「これ以上言ったら、君の学校での立場をなくすよ?」
私は必死に首を振った。
「僕、学校での立場も、学校以外でも権力あるからね?逆らうのはおすすめしないよ。」
そうだった。この人、たしかお偉いさんの息子なんだった。
「あ、あと昨日帰るとき、僕の悪口言ってなかった?」
はっ?なんで聞いてんの?もしかしてストーカーされてた?
「ええっと、それの証拠はあるんですか?」
「あるよ。動画がね。」
「うっ、てかなんでそんなもの撮ってんですか?」
「証拠は大切だからね。」
「はあ。ではそのことは謝ります。ごめんなさい。で、あなたはこれで許してくれるんですか?」
「どういう意味だろうね?それはまるで僕が許さないと思っているようだ。」
「実際、そうじゃないんですか?あなた、猫かぶってません?」
「さあ、それはどうだろうね?」
先輩はとても意地悪そうな顔をしている。これ絶対当たってるな。
「あ、あと罰の件だけど、明日から僕の手伝いをしてくれないかな?いいよね扇崎さん。」
手伝いって、パシリのことですよね。しれっと罰とか言ってるし。てかなんで私の名前知ってんの。
「じゃあ、僕はもう行くね。生徒会員は忙しいんだ。明日からよろしくね。」
私は図書室に1人残された。そして溜息をついた。なんだ、あの人は。やはり相当性格が悪いではないか。
せっかく、友達作りも上手くいきそうだったのに。




