第41話(エピローグ) 旅立ち。“フェーン村を離れる日”
夜明け前のフェーン村は、驚くほど静かだった。
風は穏やかで、
家々の屋根にはまだ夜の名残が残っている。
アルトは村外れの丘に立ち、
白み始めた空を見上げていた。
(……結局、嵐を呼んだのは俺だ)
森は豊かになり、
畑には水が巡り、
村は確かに救われた。
それでも――
その中心に立つ自分こそが、
この村にとっての危険になってしまった。
背後で、小さな足音が止まる。
「……やっぱり、起きてましたね」
ミリアだった。
マントを羽織り、小さな荷袋を胸に抱えている。
「行くんですよね」
問いではなかった。
「ああ」
アルトは短く答えた。
「俺がここにいれば、
王都も、黒翼も、また必ず来る」
「次は……村が無事じゃ済まない」
ミリアは少しだけ目を伏せ、
それから、はっきりと言った。
「……一緒に行きます」
アルトは振り返る。
「ミリア……?」
「光は……
あなたのそばにあるためにありますから」
その言葉は、誓いのように静かだった。
――その時。
「やっぱりな」
振り返ると、
小屋の方からステラとガルドが歩いてくる。
「黙って行く気だったでしょ?」
ステラが腕を組む。
「ここで別れたら、一生後悔する」
ガルドは短く言った。
アルトはしばらく黙り、
そして深く頭を下げた。
「……ありがとう」
出発前、アルトは村長のもとを訪れた。
「行かれるのですね」
「……はい」
「あなたは、この村を救ってくれた」
「それだけで十分です」
アルトは頷いた。
「必ず……
この村が守られる世界を作ります」
村長は、穏やかに微笑んだ。
朝日が昇る。
四人は村の外れで立ち止まり、
黄金色に染まる畑を振り返った。
(ここが、俺の始まりだった)
(でも――
ここが終わりじゃない)
アルトは一歩、前へ踏み出す。
村から離れる方向へ。
(逃げるためじゃない)
(選ぶために、進む)
ミリアが隣に並び、微笑んだ。
「アルトさま。
これから、どこへ?」
「……まだ分からない」
「でも――
答えのある場所へ」
四人の影が、朝日の中で長く伸びていく。
世界はまだ知らない。
この旅が、
やがて世界の在り方そのものを変えることを。
最後までお読みいただきありがとうございました。
この物語が、あなた自身の「選択」を考えるきっかけになったなら、これ以上の喜びはありません。
他にも小説を書いていきますので、どこかでお会いできるのを楽しみにしております。




